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03.火

※ご注意:残酷描写多

ある日、またも牛男ミノタへの伝令を受けてしまった。


ちなみに、ミノタに関わらず、他者への訪問は不意打ちに限る。でないと、大概が態勢を整え、攻撃してくるからだ。

しかし、精神攻撃の方が得意なメドューには、単純な力の押し合いは分が悪い。疲れる。たぶん相手もそれを承知だからこそ力押しし、少しでも知力寄りのメドューの力を取り込もうとするのだろう。


というわけで、急に扉を開けたメドューに、火の玉がボゥっと突っ込んできた。

「!」

メドューの周りの薄い水壁と、急襲してきた火の玉とが相殺し、パシィ、と弾け飛んだ。前回の事もあり、守りを強化しておいて正解だった。

「ご挨拶だな、ミノタ、何の真似だ」

「ハ」

牽制に魔方陣を浮かび上がらせたメドューに対し、ミノタも本気の臨戦態勢に入っている。

見ればミノタのツノが折れて無理に接着剤か何かでつけた痕がある。

「そういえば王に半殺しにされたそうだなぁ、オイ」

メドューが薄く笑うと、ミノタは簡単に逆上した。

「くたばれ、蛇女!」


ミノタは大斧をメドューに向けて振り切った。

ミノタの魔力を得た大斧が炎を噴き出す。

メドューは牽制用の魔法陣を守備展開に切り替えてその炎を抑えた。だが、熱い。ミノタは知恵が足りない分パワーで押し切るタイプなのだ。真面目に戦うとメドューに勝ち目はない。そもそも、相性が悪い。

じりじりと、またメドューの髪の蛇たちが焦がされる音と臭いがする。自分の皮膚だってパリパリだ。

しわになったらどうしてくれよう。


ミノタは不敵にニヤニヤと笑った。調子づいたらしく、涎まで垂れだしている。

「何、心配いらねぇ、全部俺が食べてやる。おとなしく、エサになれ」

「ハ。牛は大人しく草でも喰ってろ」


魔物は魔物を食う。食った魔物が強いほど、その力を自分のものにできる。

だからメドューも、魔力の強いイキモノ…魔物を日常的に食べている。

ただし。


「領地内での食い合いは、王が許さない。それさえ忘れたか、この牛頭」

ハッとメドューは笑ってやる。


そう、魔王が、領地に住む者たちが殺し合い食い合うのを禁止している。

領地のそこかしこで本気の食い合いが始まるとうるさくて安眠できん、止めろ、と王は言った。

王は突出した強者で、皆は王の言葉に従うのみだ。


ただ、その話を聞いたニィは、『もし領地内に住む者同士で食い合ったら、魔王に匹敵する者が現れてしまう、魔王が自分の優位を保つための禁止令では』とか言っていた。あくまでニィの推測だが。

人間と言うのは、物事を分析したがる生き物らしい。きっと暇なのに違いない。


「ハ。バレなきゃいいのさ」

ミノタが涎を垂らしながら笑う。

「今日の俺は本気だ。その首を折って、食べてやるよ」


「あぁ、なるほど、本気の馬鹿なのか、お前」

メドューは眼光鋭くしながら、歪んだ笑みを浮かべる。

ミノタは筋肉馬鹿、パワー馬鹿だ。メドューの眼光による石化効果も中々効かない。相性が悪くて、メドューの魔法陣も、ミノタの前では威力半分だ。

つまり、結構本気でヤバい。

伝令の言葉をなんとか口にして、さっさとこの場を去らなければ。

だが万が一、本気でここで殺されるなら、絶対伝令の言葉を口にしてやらない。王からの言葉を伝えに来たのに、言葉を口にする暇を与えず、禁を冒してメドューを殺したと、王が判断してくれるから。


HAHAHA、とミノタが高笑いを始めた。

周辺の温度が上昇する。

熱い、焼ける、困る、辛い。


「ッハ!」

ミノタが大斧を振り上げて、メドューに飛び込んできた。

どごぉん、という爆音と共に、メドューはミノタに吹っ飛ばされた。

壁に激突する。ダメージを受けて床に崩れ落ちたメドューに馬乗りになったミノタが、メドューの髪を掴み上げる。

髪の蛇たちが悲鳴を上げながら、口々にミノタを罵った。

ミノタは、髪の蛇たちをブチブチっとねじ切った。

『ギャア』

『おのれおのれおのれ』

「っぅ!」


ミノタが高笑いしながら、子蛇たちを大きな口に放り込む。グニャっと一噛みして、飲み込まれた。

子蛇たちがミノタに吸収されていく。

「おのれ、おのれ、おのれおのれおのれ!!!」

メドューは激高した。

が、馬乗りになって首元を大きな手で押えつけられて、動きが取れない。


ミノタは空いた手でまた髪を掴み上げて、メドューから子蛇をブチ切っていく。そうして口に放り込んでクッチャクッチャと咀嚼してみせた。

おのれおのれおのれおのれ、許すものか

「ハ、全く持って旨くもない。魔力の乏しい蛇女が」

ミノタは優位を確信する目でメドューを愉快そうにのぞき込む。

喉を抑える手に力を込められて、メドューの息が詰まった。

視界が霞み始める。

苦しい、苦しい、ここで死ぬのか、こんなやつに食われるとは、なんて愚かだ、


バリィ、と音がして、自分にかかっていたミノタの重みが、急に消えた。

「コハツ! 大丈夫!?」

シャー!!


呼吸と視界を取り戻すと、ニィとヘビーがメドューの前に立っていた。

ミノタがゆらりと炎をまとって立ち上がるところだった。ニィたちが吹っ飛ばしてくれたらしい。

「ヘヘヘ」

とミノタが愉快そうに笑った。プっと唾を吐く。

「グヘヘヘヘヘ」

頭の悪い笑い方だ、とメドューは思う。けれど何か違和感があった。

ミノタは、ニィとヘビーを前にして、喜んでいるのだ。メドューには目もくれず。

なんだ。どうしてだ。


「ノコノコ来やがった、ざまぁねぇな、メドュー」

ミノタの言葉に、嫌な予感が胸に溜まる。

なんだ、ミノタが何かを、考えている。


「人間殺したって、何のお咎めも無いからなぁああああ」


まさか、と、メドューはハっとした。震えが来た。

筋肉バカのくせに。初めから、ニィたちを狙っていた。おびき寄せた。

メドューを殺せば咎められる、それぐらいミノタにでも分かる。

だから、代わりにニィたちを、と。


「待て、ミノタ!」

精一杯の防御をニィたちに与える、同時にミノタが最大火力の火の玉を生みだした、建物の天井が見事に吹っ飛ぶ、けれどミノタは気にもしない、気にもしないで笑っている。

ニィがメドューを庇う体制で繊細な魔方陣を組み立てている、ダメだ、そんなもの、あの力馬鹿に対して効くはずが無い!


メドューは呪文を口にした。

オウ、オゥ、オゥ、オゥ…!


ゴゥっと爆音がした。バチバチっと、ニィの張った魔方陣が破られる。

目の前のニィが、燃えた。

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