12.わかれ
「コハツ! コハツ!」
メドューは薄ら目を開けた。
おや、なんだかやけに老けた…いや、ニィか。ニィがメドューを覗き込んでいる。
おや?
メドューの頬を、ニィが手袋をした手で包むように触れる。
おや?
「・・・ニィ、か? 王は?」
「お前が馬鹿なことするから、手こずったじゃないか!」
と、ニィは怒った。涙をボロボロ零すが、メドューの上に落ちないように慌てて何度も手袋の手で拭っている。
「・・・倒してしまったのか・・・?」
「こんなになって、なんでそこまでしたんだよコハツ!」
こんなになってとは、どういう状況だろう。まぁ良い。眠いなぁ。
「コハツ! コハツ!」
何度もニィが名前を呼ぶ。
ぐちゃぐちゃの顔をして名前を呼ぶ。
あの時と違うのは、ニィが随分老けていること・・・あの時?
メドューは、これが二度目だなと思い出した。
コハツが死にかけた時のコハツの記憶だ。
あの日。イノシシに襲われたとかで頭を強打した。
自分の視界にニィがいっぱいで、ニィはやはりボロボロ泣いていた。
『コハツ! コハツ! コハツ! 死ぬな、死ぬなよ、神様、神様、誰でもいいから、コハツを助けてよ!』
大好きなニィがそんなに泣くのが心配で、心配で。
誰でも良いと呼んだので。
ならば食うぞと言ったのだ。
それで良いよと、コハツの意識が応えたから。
そうか。ニィは自分が招いたと分かっていたか。
だから変わらず、傍にいたか。人間のくせに。魔界にまで移り住んで。
「ニィは、コハツの事が好きだよなぁ」
嬉しくて微笑んだら、ニィが涙をボトボトっと零した。間に合わずに顔に落ちて皮膚が焼けたが、まぁ、良い。
もう、そんな事は些細な事だ。
ああ、さようならだ、ニィ。
コハツも私も、ニィの事が大好きだよ。
二度目だから、もうそんなに泣かなくてもいいよ。




