62話:統括管理局
彩陽とともに、世界に戻ったことで、全員の記憶も元に戻って一安心する紫苑たち。王司は特に心配していなかった。いろいろあった翌日のこと、王司は、脳内でサルディアに問うていた。前日に、無限が言っていた言葉の意味について。
「シンフォリア天使団……だっけか?」
王司の疑問に、サルディアは、「ハァ」と溜息の様に息を吐き出す。それは溜息では?そして、サルディアは言う。
「前に、細波雷璃や闇羽黒霞の話をした時に、統括管理局と言う言葉を覚えていらっしゃいますの?」
その言葉に、王司は「日に日に言葉遣いがおかしくなっている気がするな……」と思いながらも、答える。
「ああ、覚えているが、それがなんだ?」
しかし、その覚えているというのは、サルディアに取って、説明を省く事ができる重要な部分だった。
「なら話は、楽、でも有りませんわね。少し長くなりますわよ、この話は」
そう言うサルディアに対して、構わないという意味を込めて「ああ」と王司は言った。それを聞いたサルディアは話を始める。長い長い、全ての時間で言えば、王司の人生なんてあっと言うまの出来事である長い出来事を話すこととなる(話がそんな長く続くのではなく、話の内容で流れる時間が長いのである)。
「遥か昔、とてつもない昔の話ですわ。ある所に一人の青年がいましたの。その青年は、特殊な力を持っておりましたの。因果の狭間、次元断層、時空間、全て同じものですのよ。それらの間を渡り歩く力ですわ。後の【輪廻】と呼ばれる力のことですわね……。かの龍神や三縞などに繋がるその青年は、逆月。ケリュシュネイト・逆月・リューラッハと言うのですわ。そして、様々な世界を見て、渡り歩き、悟る。どの世界でも『戦争』は起こり続けている、と。それは、彼にとって絶望的な出来事でしたわ。だから、だからこそ、造ったんですの。自分の理想を完遂させるための組織『時空間統括管理局』……通称『統括管理局』を。簡単に言えば、あの龍神の住む因果の狭間と同じような空間に精鋭を集めて、世界を統治し、戦争をなくそうとしたのですわ。例えば、不死鳥でしたり烈火隊でしたり天宮塔騎士団でしたり、と言う風に、様々な組織が乱立しておりますわ」
その長い長い話に王司が口を挟んだ。
「じゃあ、その組織の中の一つが、シンフォリア天使団なのか?」
王司の言葉に、サルディアは、首を横に振った。
「今の『統括管理局』の話は、極一部の話ですわ。まあ、先の細波雷璃や闇羽黒霞は、烈火隊の所属ですわ。後は、かつて貴方が助けられた霧羽未来も昔は所属していましたのよ?」
未来の名前が出て驚く王司。されどサルディアは気にした様子はなく続ける。
「まあ、そんな『統括管理局』と同じく、因果の狭間……時空間にある組織は無数にありますわ。有名なものだと、『神代・大日本護国組織』や『MS独立保守機構』、『ファルシアル連合国家』、『アルハザード』などですわ。そして、それに並んで『シンフォリア天使団』がありますの。私もそこに所属していますわ」
シンフォリア天使団。その内部組織は、「超高域」、「七天」、「天界」に分かれている。その「超高域」にサルディアは分類されている。
「超高域」は、サルディアの義姉である【黄金の炎柱】、【神翼】、二つの《聖具》を持つ天使メルティア・ゾーラタが率いる集団である。
「七天」は、昔は、シンフォリア天使団の組織だったが、現在は【不可侵神域】の方に入っているため、シンフォリア天使団を抜けた扱いになっている。
「天界」に関しては、サルディアでもメンバーを知らない、極秘組織であるため、詳細を語ることはできない。
「元々、シンフォリアは、とある因果の中、俗称で言うならば『七界』と呼ばれる因果の中にあった小世界の一つでしたわ。ですが、【■・■■■■■■】を持つ七峰静菜により、全てが大きな因果に開放されたことで、私たちは、外世界……時空間へと解き放たれたのですの。そして、因果の狭間にて『シンフォリア天使団』を結成したのですわ」
【開けてはならぬ扉】……【■・■■■■■■】。彼の世界にて七界の何れの力……【聖力】、【魔力】、【霊力】、【竜力】、【科力】、【神力】、そのどれでもない力。七界における例外。七峰静菜が持つ力。
「なるほど、シンフォリア天使団、か。中々に面白いが、まあ、今後俺の【正義】にはあまり関係なさそうだからいいか」
王司は、一連の話を聞いて、そう言った。
「ええ、そうですわね。むしろ、今の貴方に関わるとしたら、『白王会』か、『神代・大日本護国組織』の方ですわね。特に【八咫鴉】や【紫鳳桜】」
白王会の名前に、王司が動揺する。かつて、霧羽未来を刺した相手が名乗っていた、「【白王会】の……白城王城の名に懸けて」と。
神代・大日本護国組織の内部組織、【八咫鴉】や【紫鳳桜】。かつて無限が相対した【八咫鴉】も神代・大日本護国組織の内部組織である。
「まあ、この話はそろそろ終わりにするか。もう授業が始まるし」
そう言って、王司は、寝たふりをしていたのを止め、授業に戻る。




