表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《勝利》の古具使い  作者: 桃姫
古具編
5/103

05話:生徒会

 三鷹丘学園生徒会。放課後、王司とルラは、そこに顔を出していた。現在、生徒会は、適応者不在のため、誰も任についていなかった。その適応者と言うのが、問題なのである。


「さて、概要だけで構わない、だったかしら王司君」


 秋世の挑発的な発言に、王司が頷く。


「ああ、大体の説明だけで構わない。先生とルラは一緒に暮らしているんだろ?だったらそちらでの確認はいつでも出来る」


 王司の発言に、ルラが問う。


「王司は、何で、私と先生の同居を知っているの?」


 ルラの至極当然の発言。秋世は、てっきりルラが話したから知っているのだとばかり思っていたから、その事実を知り、驚いている。


「そんなの、昨日の時点で、あの後、【南方院】に行って、それでルラが普通に学校に来ている上に、先生が先生として、クラスに来ることを知っていたから、推察がつくだろ?」


 王司の発言に唖然とするルラ。一方、秋世は、平静を装って、言葉を返す。


「やっぱり、君の本質はそっちなのね?」


 本質、と言う言葉。それは、「学園での王司」と「普通の王司」。「普通の王司」のことを指す。


「本質、か。そう言う表現も出来るな。まあ、俺は、素はこっちだ」


 王司の言葉に、ルラが衝撃を受ける。今まで、ルラが見てきたのは上辺の王司だったのだから。


「狡猾に、したたかに策を巡らせ、それを一人で実行できる。頭脳と武力を併せ持つ存在、と言えばいいのかしら」


「俺は、そんなに万能じゃない。俺の知識も上辺だけの物の方が多い。その辺のネットに転がっている知識や、趣味で呼んだ聖書やらの知識だけだからな」


 王司の言っていることは事実で、彼の記憶領域にある知識は、インターネットや読んだ書物に書かれているものだけである。


「だから、知らないことは知らないし、期待されても困る」


 その発言に対し、秋世が、呆れたような笑みを浮かべて言う。


「大丈夫よ。貴方のお父さんには『歩く図書館』と言う渾名があったのだから。貴方も同じくらいの知識は有りそうだし」


 王司は、呆れ顔で思う。


(あの親父、歩く図書館なんて呼ばれていたのか)


 呆れ半分、感心半分だ。


「知識の量なんてものは、幾らでも補えるし、今の時代、スマホ一つあれば、大抵のことは調べられる。どれだけ持っていても意味をなさない。むしろ大事なのは、秘匿情報や、信じられていない《古具》などに対する知識の方だ」


 王司は思ったことを口にした。確かに、それもまた、一つの事実である。


「そうね。そう言う方面もある。けれど、調べる手立ての無い状況や、それこそ、未開のジャングルに放り出されて、そんな状況で活かせるのは、自分の覚えてる知識だけ何てこともあるわよ」


 王司は、なるほどと頷いた。


「それで、生徒会についてだが、まあ、おおよその推測はついている。確か、学園から生徒会の役員がいないことについての説明は、適応者不在だったな。そして、俺らが《古具》に目覚めたら役員になった。と言うことは、《古具》に『開花』した者がいなかったから生徒会役員が居なく、そして、《古具》に『開花』した者が現れたから生徒会に入ることになった。生徒会は、《古具》使いの集まる場所、もしくはこの学園の《古具》使いの代表者が集まる場所ってところか?」


 王司の推測に、秋世は、驚いていた。


「驚いたわね。そこまで詳しく推測できるとは、恐ろしいですね」


「ふむ、そう考えると、この学園自体が《古具》を容認していると言う仮説が出来る。そう考えると、警察や報道なんかにも徹底している気がする。この街がグルで《古具》関係に当たっているって感じか?」


 王司は、さらに推測を重ねた。その推測が的中しているのだから、王司は凄い。


「大体の説明どころか、説明要らずじゃない」


 秋世の呆れた顔。ここで、黙っていたルラが口を開く。


「王司って、そんな真面目な口調も出来たのね」


 ルラの言葉に、王司は、笑う。


「まあな。だが、普段は、あまり表に出さないようにしているんだけどな」


 王司の返答に対し、ルラは、新たに出た疑問を返す。


「何で?」


 その質問は、当然だったと思う。


「理由、か。何故かと言われると困るんだが。この分析を表に出すといろいろと反感を買うことが多いから、と言うのが一番の理由だな。後は、油断を誘うため、か」


 王司の普通なら考慮しない「油断を誘う」などの発言に、秋世は、「やっぱり清二さんの子だ」とでも言いたげな目で王司を見ていた。


「油断って、誰の」


「そんなもの、『誰も彼も』だろ」


 王司の表情は、飄々としていた。いつも通り、平然とそうやって話した。


「《古具》に目覚めても無いのに、そんな風にして、何でそんなことをしてたのよ」


 ルラの呆れた声。王司は、普通に答える。


「そりゃ、周りに合わせる、なんて言うのは皆やっていることだろ?」


 周りに合わせて、そして、油断を誘う。


「油断を誘わないわよ」


 ルラの冷たい視線。


「まあ、そう言うなよ。お前は、俺が認めた中で、かなり素をさらけ出せる人間なんだから」


 最もさらけ出せるのは、「相棒」の彼女である。その次くらいでルラなのだ。その表現の曖昧さを残しつつも、ルラは、認められて嬉しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ