32話:死を呼ぶ者
漆黒、或いは、極黒。それは、酷く黒い。全てが黒。しかし、その中で一点、金色に輝くモノがあった。それは、瞳。左の瞳だけが黄金の光を放つ。それが、「何か」と問われれば、――バロール――としか答えようがない。
さて、と、――バロール――と言う存在について、一般に当たり障りなく知られていることと言えば、「バロールの邪眼」、もしくは「邪眼のバロール」だろう。前者はバロールが持つ眼のことを指しており、後者は、バロールの二つ名を指している。それらどちらにも共通する「邪眼」。「邪眼」とは一般的に、何等かの特殊な力を持った「眼」だとされている。色が決まっていると言う説もあれば、色は能力によって様々異なると言う説もある。しかし、正確なところは、誰にも分かっていない。
そして、バロールの「邪眼」は、人に「死」を齎すとされている。
他にも、ケルト神話にて神々を惨殺した龍、クロウ・クルワッハを生み出した、ともされている。その他、死に関する記述が多い魔神である。
諸説あるが、そのどれもが、孫の「ルー」が何等かの方法で、「邪眼」を貫き殺したとされている。
また、――バロール――に関するもので言えば、《古具》の中にもバロールに関する物がある。《悪神の邪眼》。その名前が示す通り「バロール」の「邪眼」である。ただし、能力は、多少なりとも変質していて、齎すのは死ではなく「破壊」であるのだが。
その他にも、とある教会の地下深くに、本物の「バロールの邪眼」が封じられている。金色の宝石のように輝く金色の眼球が、安置されているのだ。無論、本当の意味での本物であると言う確証はないのだが。
【残響】
黒き亡者。或いは、悪神。或いは、邪神。或いは、魔神。
悪しき龍。或いは、死を呼ぶ龍。或いは、絶望を呼ぶ龍。或いは、「神殺し」の龍。
魔神は、人へと姿を変えた。
悪しき龍は、「白き」一族へと宿る。




