11話:旧生徒会
生徒会記録帳。歴代の生徒会メンバーの写真と《古具》について記載された紙を束にしたものである。何故紙かと言うと、一般書類に紛らせやすく、また、データの流出を防ぐ、と言う面もある。しかし、一番大きいのは、パソコンが発達する前から紙でデータを残してきた伝統だろう。
「これが、旧生徒会のデータですね。どの辺を見てみます?」
紫苑の問いに、王司が適当に答える。
「そうだな。ここ最近は、生徒会が活動してなかったみたいだし、古すぎてもあれだから、十年くらい前でいいんじゃないか?」
王司の言葉に、ルラが反発する。
「それじゃあ、最近過ぎない?二十年くらい前でいいと思うわ。私たちの生まれる前くらい」
ルラの言葉に、真希が微妙な提案を出す。
「じゃあ、生まれる前で、十数年前ってことで、十七年前か、十八年前……、あれ、先生っていくつでしたっけ?」
「私の年齢はいいのよ!……それにしても十八年前、ね」
年齢について怒ってから秋世は、感慨深そうな顔をした。心なしか、懐かしそうな顔をしているように見える。
「では、十八年前、ですね」
紫苑が、付箋から、十八年前の生徒会のページを開いた。そこには、秋世によく似た黒髪黒目の女性を中心に、金髪碧眼の青年、茶髪を右耳の上で括ったサイドポニーテイルの女性、黒髪黒目の美青年の四人の写真があった。
「えっと、天龍寺カナタ会長、篠宮真琴書記、立原美園副会長、青葉清二会計……と書いてあるんですが、天龍寺と言うと、秋世先生のご家族ですか?篠宮さんも、青葉君も」
天龍寺カナタ。三鷹丘学園にて最高の生徒会長と謳われる女性。次期、天龍寺家当主でもある。現在は、家を離れている。秋世の姉である。
篠宮真琴。女性のような名前であるが、男性である。金髪碧眼のハーフだが、現在は、茶髪に黒目をしている。現在、仕事により、ほとんど家に帰れていない。真希の父親。
青葉清二。高校三年のときに、相手の女性が身籠り、王司を出産している。黒髪黒目で、王司によく似た顔をしている。王司の聡明さや思考は、清二譲りである。現在、あちらこちらで活動を行っており、家に帰っていない。王司の父親。
「ええ、私の姉です」
「たぶん、パパ……だと思うんだけど、髪の色が……」
「ああ、俺の親父だ」
三人の回答に、ルラと紫苑が驚いていた。
「そうですか……。運命的ですね。それで、《古具》が……、なんでしょう、この書き換えは……」
紫苑が疑問の声を上げた。そこにはこう書かれている。
《緋色の衣》→《緋色の天女》
《刀工の剣製》→《刀工の龍滅刀》
《魔王の力》→《魔王の襲来》→《魔王の審判》
《殺戮の劔》※《切断の劔》
「それは、《古具》が進化したってことよ。その世代は、一番、《古具》の進化が激しかったと言われているわ」
秋世の解説に、王司が口を挟む。
「じゃあ、最後の《切断の劔》と言うのは、なんだ?」
王司の疑問に、秋世は、言う。
「この世界には、《聖剱》と呼ばれるものがあります。その中の一つが《切断の劔》。現在、清二さん……貴方の父親が持っているものです。時に、青葉君。《聖剱》と言われて思い浮かぶものはなんですか?」
王司は、急に聞かれて、自分が知りうる限りの《聖剱》を羅列する。
「エクスカリバーもしくはコールブランドとかカリバーン、アスカロン、オートクレール、ディランダル、フラガラッハ、カーテナ、ガラティーン、カラドボルグ、ミストルティン、干将・莫耶、倶利伽羅、天之尾羽張、布都御霊剱、天羽々斬、天叢雲剱もしくは草薙の劔、七支刀、七聖剱、神度剱、あとは……」
あまりにも数が出てきて、秋世は、目を丸くした。
「もういいわよ。もう、歩く図書館は、これだからっ」
そして、不満そうで、それでいて、懐かしそうに、そう言った。
「この世界には、《聖剱》があるんだけれど、伝説のものが全てあるわけじゃないの。《C.E.X.》、《切断の劔》、《太陽の剱》、《慈悲の剱》、《龍滅の剱》の五本だけ。そのうち、《太陽の剱》は折れて、《切断の劔》は言ったように清二さんが、《C.E.X.》……《Collbrande. Excalibur.》は聖騎士王が、《龍滅の剱》は、そこの写真に写っているサイドポニーテイルの立原美園さんが、それぞれ持っているの。《聖王教会》には、《慈悲の剱》と壊れた《太陽の剱》が保管されているわね。他の《聖剱》は未確認だけれど、おそらく全部で七本しかなかったはずだから、《魔剱》に堕ちた《堕ちた烙印の剱》と現在は無い《選定の劔》で合計七本。他には無いはずよ」
《聖剱》と《魔剱》、《古具》。そして――。
「まあ、話が逸れたので戻すけれど、この世代もそうだったけれど、生徒会には攻撃系の《古具》が集まることが多いのよ。でも、一人か二人は、回復か補助がいてもおかしくないんだけれどね」




