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《勝利》の古具使い  作者: 桃姫
白城編
101/103

101話:王城VS王司

 王城(おうか)王司(そうてん)の……、その血に流れる、かつての再戦となる二人の戦いが始まる。王司の身体を眩い【蒼】が包んだ。まさしく、【蒼】。髪も瞳も蒼色へと染めあがる。それに対して、王城は、《宝物の英霊ギルガメッシュ・トレジャー》で武具を呼び出そうとする。しかし、それよりも先に、王司の右耳の耳飾りが銀色の輝きを放つ。それと同時に、《古具》の力が封じられる。


「何?」


 王城が一瞬動揺する。その瞬間に、王司は、【力場】を使ったショートワープで、王城の眼前へと移動する。


「くっ……」


 王城が、慌てて一歩、後退しようとするが、間に合わない。咄嗟に、《古具》とは別の力で、長い……王城の身長よりも長い日本刀を呼び出した。妖刀「藍那」。白城王花(おうか)が使った篠宮無双を殺した刀。それを王司と自分の前に出すことによって、王司の攻撃を阻む。


「くそっ」


 王司は、攻撃をやめて、刀の鞘に蹴りを入れて、その反動を利用して後ろに数歩分下がる。


「まさか、『藍那』を出す破目になるとはね……。さすがは、あの蒼刃の馬鹿の子孫ってことよね」


 またも馬鹿呼ばわりされる先祖に王司は、「だからやっぱり俺の先祖は馬鹿だったのか?!」と思ったが、声には出さなかった。


「でも、蒼刃は強力(ごうりき)の一族。あたらなければどうと言うことはないのよ」


 そう不敵に微笑む王城。確かに、どんな力も当たらなければ意味をなさない。それは事実だろう。だが、王司の力はただの強い力だけではない。


「そうだな……。お前の言葉にも一理ある。あたらなければどうと言うことはないだろうな」


 そう不敵に微笑む王司。【正義】と【悪】。まるで真逆の存在である二人なのに、どこか似通った雰囲気がある。


「貴方は、……本当に、あの馬鹿の子孫?」


 その言葉は、ようするに、王司は馬鹿っぽく見えない、と言う意味であるのではなかろうか。そんな風に捉えることもできるが、王城としては、見た目こそ王司と蒼天は似ているが、雰囲気、風貌が違うように感じられた。尤も、王城が蒼天に会ったのは一回きりで、その後、王花が復讐を果たす前にダリオスに殺されているので、王城としては、王花から聞かされた話の上での蒼天しか知らないのだが。


「心外だな……。似てるや子孫だとは散々言われてきたんだがな」


 王司の発言に、王城は、くふふと笑む。そして、ついでだから、と王司に向かって語りかける。


「貴方もそうだけど、貴方の父親も、本当にあの馬鹿の子孫かどうか、疑いたくなるわ」


 そう、王司も清二も、蒼天と言うより、別の誰かに似ていた。王城の最も嫌いなあの人物に似ていた。


「藍那流《斬刺花(さざんか)》」


 超高速の連続突き。それが、【力場】を通して乱れ飛ぶ斬撃。会話の流れを断ち切って、初動無しで、いつの間にか、鞘に付いていた蝶番が外れ、刀身があらわになっていたのだ。輝く刀身。その輝きは、発光しているのではなく光を反射するほどに磨かれた妖しくも美しい刀だからだろう。


「チッ」


 王司は、斬撃の雨を縫うように躱していく。だが、一発。たったの一発だが、王司の肩を貫いた。その隙を逃さず、王城は、一歩踏み込んで、長い刀の切っ先で王司を切るように薙ぐ。


「当たるかよっ!」


 王司は、かろうじて避ける。だが、服の一部、胸元の部分が一直線に切られてしまった。寸でのところで躱した攻撃だが、かなり鋭かった。もし、あれに斬撃と【力場】が加算されていたら一溜まりもなかっただろう、と王司は、寒気がした。


「やはり、剣無しだときついな」


 王司は、そんなことを言いながら、【力場】から【力場】へとショートワープをする。しかし、その【力場】を王城が断ち切った。


「藍那流《崩閃花(ほうせんか)》」


 空間をも崩しながら斬る一閃。それにより【力場】が消え去り、ショートワープに失敗する王司。その隙を見て、再び、王城が刀を振るう。いつの間にか、王城は、右手から左手に刀を持ち替えている。それも、逆手に。


「藍那流《躑躅切(つつじぎり)》」


 そして、屈みながらも足にスピンをかける。下から上へと回転しながら刀が振るわれる。さらに【力場】で斬撃を飛ばす。回転のかかった竜巻のような斬撃が王司へと襲い掛かる。


「ぐっ!」


 王司は、その竜巻の様な斬撃をもろに喰らってしまう。身体の全体に鋭い切り傷が走る。だが、致命傷ではない。王司は、慌てて転がるように、斬撃を抜ける。だが、そこにあったのは、刀の切っ先。


「トドメよ」


 その切っ先は、王司の胸を突き刺した。血が刀を伝い刀身を汚していく。そして、鍔まで垂れ、滴り落ちる。返り血を浴びた王城は、とても満足げに妖しく微笑んでいた。そして、王司の突き刺さった刀を引き抜き、血で汚れた刀を振って、血を落とす。しかし、落ちきらない。その残った血を舐め取る王城は、どこか、狂っているように見えた。ドクドクと血を流す王司。サルディアは必死に呼びかける。


(主……?!主!しっかりしてくださいですわ!)


 しかし、王司の意識は、混濁していく。急速に冷える体。血の気が失せ赤みを失っていく。


――あら、もう終わり?


 そんな時、王司の脳裏に、そんな声が響いた。どこか、懐かしい、そんな声が……。

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