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《勝利》の古具使い  作者: 桃姫
白城編
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100話:第六階層

 第六階層、そこに、佇んでいたのは、真っ黒な髪の少女。己の名前とは真逆であるその髪を風に靡かせて、少女は不気味に笑む。まるで悪人のような笑み。根っからの悪人であるような笑み。少女らしくない笑み。かつて、王司が見たときから、全く変わっていないその少女の姿。その名前こそ、王司が忘れたくても忘れられない名前。


――白城(しらき)王城(おうじょう)


 それが彼女の名前だ。かつて、王司が相対したときに、目の前で霧羽未来を刺した女である。


「白城王城っ?!」


 王城を見た瞬間に王司が発したのは、そんな小さな叫び声だった。まさに喰ってかかるように王司は、王城へと飛びかかろうとした。しかし、それよりも先に前に出たのは、ルラと真希だった。


「《必貫の大鑓(ブリューナク)》!」


 ルラの手元に現れる漆黒の長槍。少し長い所為で、ルラはバランスを崩しそうになるが、きちんと持って、王城へと向ける。


「《翼蛇の炎砲ケリュケイオン・フレア》!」


 そして、ルラが《翼蛇の炎砲ケリュケイオン・フレア》を呼んだ。そのとき、その銃にも変化が訪れる。二匹の蛇は龍へとなる。翼を生やした龍が二匹巻きついた長銃へと進化を、いや、戻ったというべきか。


「ううん!《翼龍の焔砲(カドゥケウス)》!!」


 ようやく本来の姿を取り戻した、その《古具(アーティファクト)》。真希は、その力を放つために引きがねを引いた。


――ギュルゥン!


 まるで全てを巻き込むかのように螺旋を描きながらビームのようなその一撃は王城へ飛んでいく。さらにそこに、ルラが《必貫の大鑓(ブリューナク)》を投擲する。当たれば一溜まりも無い。だが、王城は避ける様子を全く見せない。


「《アイアス》」


 王城の短い言葉とともに、概念化された薄透明の緋色の盾が構築される。今、王城は、確かに《アイアス》と言った。


「アイアス……?!《防全の盾(アイアス)》か?」


 そう呟く王司だが、違うと言うことは分かっていた。まず形状からして違う。しかし、だとしたら、《アイアス》とは一体何なのか。


「《ゲイ・ボルグ》」


 王城の手元に現れる黒い槍。それは、相手の心臓を射抜くと言われる伝説の槍。ケルト神話の槍で、クー・フーリンが持っていたとされるものだ。


「ゲイ・ボルグ……?!まさかっ、あいつは、自在に伝説の武具を呼び出せるのか?!」


 王司の言葉に王城は「くふふっ」と不気味に笑う。そして、不敵に微笑む。それは、まさに、王者の余裕。


「《宝物の英霊ギルガメッシュ・トレジャー》」


 そう微笑む王城。ギルガメッシュの名前に、「どこの運命だよ!」と思う王司だったが、それのおかげで王城のしたことが分かった。


「《古具》か?」


 王司の問いに、王城は、「ええ」とあっさりとばらす。ばらしたのは、おそらく、ばれても問題がないと思っているからだ。それほどまでの絶対の自信。


「さあ、終わりよ。貫きなさい」


 《ゲイ・ボルグ》を投擲する王城。そう、投げれば、終わる。それが《ゲイ・ボルグ》の誓約。しかし、秋世が《銀朱の時ヴァーミリオン・タイム》を発動させて、《ゲイ・ボルグ》を消した。一時的に、塔の外へと出された《ゲイ・ボルグ》は目標を失い、誓約も働かない。


「あら、意外ね。こんな無効化もできるなんて」


 そう言ったものの、王城は、全く態度を変える気配はない。そして、たった一言告げる。ボソリと、ただ。


「《アルカンダリア》」


 その言葉で、全員が吹き飛ぶ。……いや、全員ではない。王司と王城だけは、その場に残っていた。吹き飛ばされたルラと真希と秋世はノビていた。


「ヤバイな……」


(主。あれを封ずる方法が一つだけ残っていますわ。《古具》を封じる事が、私にはできるのですわ)


 全ての武具を使えると言うのは、流石にチートすぎる。王司は、サルディアにその方法を問う。


「どうすればいい」


 その王司の問いに、サルディアは、静かに、真剣な語調で言うのだった。


(あれが《古具》ならば、神の力ですわ。それを越える神の力で【力場】を固定させれば、小さな神の力は使えなくなりますわ)


 ようするに、相手が火を使うなら、当たり一帯を炎で包んでしまえと言うことだ。水で包むと言う反対するものを使う例もあるが、いや、むしろその方が多いが、こう言った技の封じ方もあるのだ。


(しかし、それを使うと、私の力は全て【力場】の干渉力制御へと回して使えなくなりますわ。それと、《古具》を封ずると言うことは、己が《古具》も封ずることになるのですわよ。つまりは、あれと素手で戦わなくてはならないのですわ。それが主にできますの?)


 サルディアの問いに、王司は、悪人のような笑みを浮かべる。そして、王司は、言う


「上等じゃねぇか」


 自身に満ちたその声に、サルディアは、呆れながらも安心した。

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