第三話 学園編
校門をくぐった瞬間、
どこかで聞いたようなざわめきが耳に刺さった。
「遅刻ギリギリって、なんで毎日こうなるんだ俺……」
「ねぇ聞いた?今日“転校生”来るんだって」
その日は“何も起きなかった”。
校門をくぐった瞬間、
どこかで聞いたようなざわめきが耳に刺さった。
「遅刻ギリギリって、なんで毎日こうなるんだ俺……」
「ねぇ聞いた?今日“転校生”来るんだって」
誰も気づかないほどの“ズレ”。
デジャヴじゃない。
“完全に同じ言葉”が、同じ順番で落ちてきた。
「話、あるの。逃げないでね?」
「ねぇ聞いた?今日“転校生”来るんだって」
視線が合ったのは偶然か?
……いや、あれは明らかに“狙っていた”。
と書いてあった。
──彼はまだ知らない。
今日が“二度目”だということを。
校門をくぐった瞬間、彼の足が同じ場所で止まる。
言葉も、表情も、呼吸のタイミングまで――
前周と寸分違わない。
「遅刻ギリギリって、なんで毎日こうなるんだ俺……」
あぁ、まただ。
彼は本当に覚えていない。
「ねぇ聞いた?今日“転校生”来るんだって」
そのセリフも、もう三十回は聞いた。
私は深く息を吸った。
これ以上“巻き戻る”と困る。
だから声をかけた。
「話、あるの。逃げないでね?」
彼の動きが止まった。
少しだけ、予定より“早い”。
……よかった。
今回は、間に合った。
今回こそは。
完 第三話 学園編




