絶対失恋しない世界!〜好きな子が僕のことを好きになる神みたいな祝福をもらえたと思ったらデメリットの好かれたら好きになるが思ったよりやばくなりそうな件
処女作です
僕、相澤翔太が目を覚ますと、あたりはまるで夢の中のような、ぼんやりとした景色が広がっていた。空気はどこか異次元のものを感じさせる不思議な重さがあり、ふわりとした浮遊感が全身を包み込んでいた。
「ここ…どこだ?」
目の前には、どこか見覚えのない、薄暗い空間が広がっていた。何かが漂っているけれど、特に特徴的なものは見当たらない。ただただ、無機質で静かな空間が広がっている。まるで何もない空間の中に放り込まれたかのようだった。
ふと、気配を感じた。振り返ると、そこには一人の胡散臭そうな光を放つ老人が立っていた。
「あ、貴方は…?」
驚いて声をあげると、その老人はにやりと笑った。
「おう、驚いたか? お主がここに来るのはちょっとした運命だ。」
「運命って…いったい何が…?」
目の前の老人は、いかにも神秘的な雰囲気を持っているものの、見た目は普通のじいさんだ。しかし、ただならぬ存在感が漂っていて、どこか他の人間とは違うことがわかる。
「わしはお主の…まぁ、力を授ける的存在じゃ。神様的な存在だと思ってくれ。」
「神様…?」
「まぁ、そんなところだ。お前にちょっとした力を授けようと思ってのぉ。」
その老人の言葉に、最初はピンとこなかった。だって、普通、こんなこと信じるわけがない。だけど、その後、どうにもならないような直感が湧いてきた。何かがおかしい。
「お前、最近気になってる子がいるだろ?」
「え?」
一瞬、ドキっとした。確かに、気になっている子がいる。美咲、僕がずっと好きなクラスメイト。思わず心臓が高鳴る。
「そんなお前さんに、わしが力をくれる。お前の好きな子も、きっと幸せにできるような力を。」
「僕の好きな子って…美咲のこと?」
「あぁ、そうだ。お主、普段、告白する勇気が出ないんだろ?」
「それは…」
確かに、そうだ。美咲に告白したくても、なかなか言葉が出てこない。いつも、ただ見ているだけで、気持ちを伝えることができない。
「安心しろ。この力を使えば、お主が好きな子も、お主の気持ちをしっかり受け止めてくれる。ただお主も答えないといけないがなぁ」
「どういうこと…?」
「簡単に言えば、お主が好きになった相手はお主を、好きになる。反対に、お主のことを好きになった相手はお主が好きになる、つまり必ず気持ちは反発しあうってことじゃ。」
「それ、デメリットも凄くないですか…?」
「でも、好きな相手は絶対に手に入るぞ。?
まあどうしてもいらないっていうならわしは止めんがのお」
「いや大丈夫です!受け取ります!」
一瞬で僕は返事を返す
どうせ僕のこと好きな奴なんていないだろうしデメリットなんて無いだろ!また、美咲ちゃんへの気持ちを伝えられないこのモヤモヤから解放されたい。だから、僕は一瞬で躊躇することなくその力を受け入れることにした。
「よし、じゃあ、お主の中にその力を与えよう。」
その瞬間、目の前の老人が一歩近づいてきて、僕の肩に手を置いた。その感触が、少し冷たくて、でも力強いものだった。
「これで、お主の恋愛がうまくいく。頑張れ。」
その言葉とともに、僕の意識はぼんやりと消えていった。
目を覚ますと、今日もいつも通りの朝だ。しかし、昨日あのジジイ的な神様からもらった力のことが頭から離れず、どうしても何かが変わったように感じる。
「…まぁ、いっか。今日は普通に学校行こう。」と、自分に言い聞かせながら、今日もいつも通りに歩き出す。
学校の門をくぐり、軽く深呼吸して、なんとか落ち着こうとする。だが、そこで不意に聞こえてきた声に、僕は思わず足を止めた。
「おーい、あんた!またウロウロして何してんの?」
その声を聞いた瞬間、僕はすぐに振り返った。そこにいたのは、赤い髪のツインテールを揺らしながら、腕を組んでいるのは高西エミリ。彼女はクラスでも人気な女の子だがなぜか僕にだけ毒舌家で面倒くさいことに定評がある。毒舌女王様ランキングでは一位が確定している〔僕調べ〕。
「うわ、エミリか…」と、つい心の中で呟く。いつも通りの彼女が目の前に立っている。
「うわってなによ、ジロジロ見て、こっち見ないで!」と、エミリはちょっと顔をしかめながら言ってきた。少し不機嫌そうな顔をしてるけど、なんだか気になった。
「いや、話しかけたの君でしょ…」と言って、僕はなるべく冷静に答えようとするけれど、胸の中でなんだか急にドキドキしてきている自分がいる。おかしいな、どうしてこんなに心臓がバクバクしてるんだ?
「ふーん、あれなんかいつもと違うわね、逆に何かありそうだわ。」とエミリがニヤリと笑った。
「何が…?」と、僕は思わず反応してしまう。
「いや、だってさ。」エミリはちらっと僕を見ながら言う。「今、翔太顔真っ赤よ?」
突然、そんなことを言われて、僕は更に顔をを赤くする
「へぇー、でも、もしかして…私が気づいてないと思ってるの?」と、少し意地悪そうな目をして言う。まるで意図的に僕をからかっているような感じだ。
「風邪でしょ!?ちゃんと休まないなんて体調管理がしっかりしてないんじゃない?全然だめだめね!」
エミリの手が僕の額の上に当たる
その行動に思わず僕はとんでもなく動揺してしまう
「あ、あの…違うんだってば!」と、僕は焦りながら答えたけれど、エミリはそれを見て一瞬だけ小さく笑った。
その笑顔を見た瞬間衝撃が走る、この普段なら憎たらしい毒舌女王様に、僕は何かおかしいことに気づいた。どうしてだろう。いつも通りのエミリのはずなのに急に抱きしめたい、頭を撫でたいそんなことを思ってしまう、そして何より彼女の態度に心がドキドキ仕方ない
「さ、先に行く!」
「あ、ちょ!?」
何か後ろから声が聞こえるが限界を迎えた僕は一目散に走り出す、僕はそっと背を向け、学校に向かって走り出した
走ってきた先で、ようやくエミリから逃げたことに安心したのも束の間、まだ心臓がバクバクしている。僕は思わず立ち止まり、大きく息を吸った。
「…まさか、エミリって…?」
そんな疑問を心の中で呟きながら、少しずつ心を落ち着けようとする。しかし、何かが引っかかっている。いつもならあんなにイライラさせられるはずのエミリの言葉や行動が、今は妙に気になって仕方ない。てか無理やり好きになるなんてあんなん呪いだろ…これが、もしあの爺さんから頂いた力のせいだとしたら、なんだか信じられない気がしてきた。
今日見た夢はあくまで夢で呪いなんてあるわけないと思っていた。けれど、今の僕の心臓のドキドキが、まさか呪いのせいだなんて――。
朝、学校に到着し、いつものように教室に入った。机に座り、鞄を開けて今日の課題を確認していると、不意に肩を叩かれた。振り返ると、そこにいたのは綺麗で長い黒髪、涼しげな目、いかにも完璧な美少女すぎる女の子鳴川美咲、通称、美咲ちゃんが目の前に立っている。
「おはよう、翔太くん。」と、彼女はにっこりと笑って言う。
「あ、おはよう、美咲ちゃん。」と、僕はつい慌てて返事をする。好きな子にいきなり挨拶をしてもらえてとても気分が上がる
同じクラス委員をしておりら男の中なら1番が仲がいい自信がある、いつも通り、気軽に話せる相手ではあるが、片思い中の相手のためとんでもなく緊張する。
「今日、放課後ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」と、美咲が少し言いづらそうに口を開く。
「え?何かあったの?」と、僕は首をかしげて聞く。
美咲は少し照れたように、「実は先生に頼まれて、放課後に資料整備をしないといけなくて…一人だとちょっと大変だから、翔太くん手伝ってくれないかな?」と頼んできた。
「資料整理か。もちろん手伝うよ。」と、僕は惚れた弱みもあって即答する。
「ありがとう!じゃあ、放課後また教室でね。」美咲は嬉しそうに笑った。
しかし、その姿を見て、どこか拍子抜けした気持ちになった。呪いが本当に効いているなら、少しは僕に気をもってくれているんじゃないかと思っていたのに、彼女は全くいつも通りだった。
「…あれ?呪いって本当だったんじゃ…」
少し腑に落ちない気持ちを抱えたまま、僕は席に座る。特に何も変わった様子はない。美咲がふと、隣で静かに本を読んでいる姿を見ると、あぁ、やっぱりいつも通りなんだな、という思いが強くなる。
あのクソジジイがぱち抜かしやがって次あったらボコボコのボコにしてる…!?
結局普段と美咲ちゃんは何も変わらず昼食の時間になり、僕は今日は一人で考えたかったので空き教室の隅で黙々と菓子パンを食べていた。何だか周囲が静かなせいか、今日は少しだけ孤独感が募る。美咲ちゃんと一緒に食べたら、少しは違うのかな…なんて考えながら、ついついため息が出そうになったその時。
突然、後ろから何かの気配がした。
「…え?」
その瞬間、誰かに手で目を覆われた。
「だーれだ♡」
その声に驚き、僕は思わず身を硬くした。背後から手で目を覆ったのは、まさかの後輩のエリカだった。
「お、お前かよ…!」
振り返ると、ニヤニヤしながら目の前に立つ金髪をボブにした明らかに悪戯好きそうな少女、芹沢エリカがいる。彼女は委員会の後輩でありしょっちゅう悪戯を仕掛けてくる今も悪戯っぽく笑っており、明らかにからかう気配が満載だ。
「何、びっくりした?だーれだって言ったら、反応してくれると思ってさ~」と、エリカは無邪気な顔で言う。
「冗談じゃない、急に手で目隠しとかあり得ないだろ…!てかなんでここに居るの知ってるんだよ!」
そして僕が少し焦りながら言った後に気づく何故がいつもと違ってクソガキ後輩と思ってた彼女にドキドキする明らかにいつもと違う、そんな僕の思惑を知らないのかエリカはますます楽しそうにニヤニヤしながら近づいてくる。
「たまたま見つけただけだよ!もしかして怒ってる?可愛いね、翔太せんぱい♪」と、エリカはわざとらしく手を顎に当て、僕を見上げる。
「や、やめろ変な扱いをするな」と、僕は顔を少しずつ赤くしながら言う。
すると、エリカはさらにニヤリと笑って、僕の肩をポンと叩く。
「もしかして、ちょっとドキドキしちゃった?やっぱり、翔太先輩って単純なんだね~」と、まるでからかうような口調で言う。
「どドキドキなんてしてねぇよ!」と、僕は慌てて否定するが顔が赤いせいで説得力がない、エリカはその反応に驚いてるようた。
「あ、あれ?せんぱいいつもより顔が赤いよ?もしかして、ほ本当にて照れてるの?翔太せんぱい??」と、エリカは僕をじっと見て、その目は明らかに楽しんでいる。
「う、うるさい…」と僕がつぶやくと、エリカは笑って、目を輝かせるた。
「いつもと反応違ってなんだか私すごく嬉しいですよせんぱい!」と、エリカはそつ言って、子供のように心底喜んで、楽しそうに笑う
その顔を見た瞬間、またドキドキが止まらなくなって仕方なく、この愛おしい少女にもっと揶揄われたい、ざぁこざぁこと言われたいと明らかに変な感情が押し寄せる
「ま、また後日話そう!」
「あ、せんぱい待って!」
朝の時と同じく、限界を迎えた僕はまた一目散に走り出す、僕はそっと背を向け、どこか他の場所に向かって向かって走り出した。
逃げた後、僕は廊下を歩いていた。さっきのエリカの言動が頭を離れず、なんだか変な気分だ。結局、呪いのせいなのかどうなのか、全然わからない。気分転換しようとふらふら歩いていたその時、目の前で誰かとばったり鉢合わせた。
「…翔太くん?」
驚いたような声で僕の名前を呼んだのは、篠宮玲華、生徒会長だった。生徒会の副会長である僕と仕事中よく話す間柄だ。
冷たい光を湛えた真紅の瞳と、銀の長髪が柔らかく揺れる。その凛とした姿は相変わらず周囲を圧倒する存在感を放っているけど――その瞳が、なぜか僕をじっと見つめて離さない。
「篠宮会長…どうも。」
僕はぎこちなく頭を下げた。篠宮会長は、微かに口元を緩めながら近づいてきた。いや、待て、近い近い!やっぱり何かおかしい!なぜかドキドキしてしまう!?この感じ、間違いなく呪いだ…
あんたもかよ!?
「こんな所で会うなんて奇遇ね、何をしていたの?」
会長の声は落ち着いているが、その視線はいつも以上に鋭い。まるで僕の心の奥まで見透かそうとしているみたいだ。
「い、いや、ちょっと歩いていただけで…」
「そう。…でも、ちょっと顔が赤いわね。」
会長は僅かに首を傾けて、僕をじっと見つめる。距離が近いせいで、その綺麗すぎる顔が目に入ってしまう。なんだ、この心臓の高鳴りは。こんな感覚、初めて――いや、呪いのせいだ。間違いない。
「そ、そんなことないです!」
慌てて否定したけど、会長はクスッと微笑む。普段なら何も思わないのに顔が紅潮する。その微笑みが僕に向けられているなんて――。
「ふふ。隠そうとしても無駄よ、翔太くん。」
会長が一歩、また一歩と近づいてくる。そのたびに僕の鼓動はどんどん速くなる。
「どうしたの?何か、緊張するようなことでもあったのかしら?」
会長の真紅の瞳が僕をじっと見据えたまま、言葉を重ねる。その視線から逃げたくても逃げられない。
「な、何もないです!」
そう言って逃げようとした瞬間、彼女の手がすっと僕の袖を掴んだ。
「あら本当に?…翔太くんって、嘘をつくのが苦手そうね。」
「うっ…」
「まあ、そういう所も好ましい所だけどね。」
会長の柔らかな声と掴まれた袖の感触に、頭が真っ白になる。なんなんだ、この状況は。篠宮会長に触られても普段ならなんとも思わないのに、今日はどうしようもなく頭がおかしくなる…。
「そ、そろそろ僕行きます!」
限界だ。これ以上ここにいたら、心臓が壊れるかもしれない。僕は玲華の手を振り払うわけにもいかず、そっと身を引いて踵を返した。
「待ちなさい、翔太くん。」
玲華の静かな声が背中から追いかけてくるが、僕は聞こえないフリをして走り出した。
――こんなの無理だ。絶対に無理だ!
心臓の音が鼓膜を打ち続ける中、僕は廊下を駆け抜け、ただひたすらにその場から逃げた。
放課後、僕は美咲ちゃんと資料整備の約束があり資料室の鍵を取ってくる間僕は待っていた。廊下の片隅で待っていた僕に美咲ちゃんは、鍵を片手にいつも通りの穏やかな笑顔を浮かべて僕に手を振る。
「翔太くん、お待たせ。今日はお願いね。」
「う、うん。全然大丈夫だよ。」
エミリやエリカや会長とのやり取りで気疲れしていた僕だけど、美咲の落ち着いた声を聞くと、少し心が軽くなる。さすがに美咲は、呪いの影響なんて受けていないだろう。そう思いながら彼女の隣に立った。
二人で資料整理の作業をしながら、いつも通りの何気ない会話が続く。
「それにしても、書類の量多すぎだよね。翔太くんも大変じゃない?」
「まあ、慣れてるから平気だよ。でも確かに、もう少し人数いれば楽になるかもな。」
「そうだね。じゃあ、次の会議で副会長さんに増員お願いしてみようかな?」
彼女は冗談っぽく微笑む。そんな彼女に僕もつい笑みを返してしまう。
作業を進めながら、僕はふと気づく。美咲の態度があまりにも“いつも通り”だということに。エリカや玲華との時のような特別な変化が全然見られない。
「……おかしいな。」
「え、何が?」
思わず呟いた言葉に、美咲が不思議そうに首を傾げる。その仕草すらも普段と同じで、僕はますます混乱した。
いや、普通に考えれば呪いが効いていないだけかもしれない。けど――どうしてだ?あれだけ効果を実感している呪いなのに、美咲ちゃんには変化がないなんて。
「翔太くん、大丈夫?顔がちょっと赤いみたいだけど……。」
「え、ああ、なんでもない!なんでもないよ!」
僕は慌ててごまかす。美咲ちゃんは気にする様子もなく、再び作業に集中し始めた。なんだろう、この違和感。いや、それ以上に、この落ち着いた美咲とのやり取りが心地よく感じるのは、どうしてなんだ?
そして、作業が終わり、片付けを済ませた頃。彼女はふっと僕に向き直り、柔らかい笑顔を浮かべた。
「翔太くん、今日はありがとう。やっぱり翔太くんって優しいね。いろんな人に気を配れるところ、私、結構好きだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が跳ね上がった。ドキドキが止まらない。でも、美咲は特に気にした様子もなく、いつもの調子で続ける。
「じゃあ、今日はこれで終わりだね。またあったらよろしくね!」
「う、うん。お疲れ様……!」
美咲が教室を出ていく背中を見送った後、僕はその場に立ち尽くした。
放課後の作業を終え、美咲と別れた僕は、一人で帰り道を歩いていた。西の空が赤く染まり、柔らかな夕焼けが校舎を包み込む中、僕の心は妙なざわめきに支配されていた。
胸の中に、ある違和感がじわじわと広がる。
「……やっぱり、変だよな。」
呟きながら歩を進める。エリカや玲華の態度があれだけ変わったのに、美咲だけはいつも通りのままだった。それは、それで不自然なはずなのに……。
胸の中で、じわじわと広がる違和感。
呪いの効果は確かに実感している。エリカも玲華、あの力に影響されて、明らかに僕の態度や心持ちが変わったのが分かった。なのに、美咲は――。
「あの子だけ、何も変わらなかった……。」
呪いが効いていないのか?いや、それも考えにくい。そもそも、効くか効かないかを判断する術なんてない。それなら、もしかして……。
頭の中で思考がぐるぐると巡る。彼女の穏やかな笑顔、柔らかい声、そして「結構好きだよ」なんてさらっと言ってのけた、あの一言。
「……まさか、元から僕のこと好きだった……?」
その考えが浮かんだ瞬間、足が止まった。
通り過ぎる春風に髪が揺れる。夕焼けに照らされた景色が、妙にぼやけて見えた。
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