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死神憑きの希望論  作者: 霞野 虚
1章-永久を告げられた世界-
3/3

彼女たちの"日常"-1

「あの男は無事だったか?」

「うん、腰が抜けて動けなかったみたいだけど外傷は無さそうだったよ」


 アリスとノアがパスタを食べながら話している。


「それにしても今回のバックドアは警報が無かったが…観測器に異常でもあったのか?」

「えっとね、対策局が言うには一切の予兆なく発生したらしいよ」

「予兆無く…か。今までそんな事例は…」

「データベースには一切なし、前代未聞のことだってニュース記事にもなってる」


 そう言ってアリスがノアにタブレット端末を見せる。

 そこに書かれていた内容は、魔物対策局が会見で発表したことを書きつつ、本筋は観測機の異常や政府の陰謀を疑うものだった。


「いつでも話題の最先端を行くのは噂話ということか」

「もう少~し信憑性のあることを書いてくれると嬉しいんだけどね~」

「なに、こういった妄想の類はすぐに事実によって淘汰されるさ」

「だけどワクワクするな~!、あの魔物の研究!」

「何をワクワクする必要がある?」

「だって今までに無かったタイプのバックドアから出てきた魔物だよ?絶対何かあるって!」

「ふむ、警報がなかったこと以外はいつも通りだったと思うが…。もしかしなくても、君はゴシップに毒されやすいタイプだろ」

「あの記事は全っ然、関係ない。ただ、もしも、もしもだよ?世紀の大発見なんて出来たら歴史に残る!すごいロマンがあると思わない?」

「私にはどうでも良い話だ。ロマンがあろうと無かろうと、いつも通り研究することに変わりはない」


 楽しそうに話すアリスに対して、ノアはいつも表情を変えずに話す。

 ノアの表情や性格はよく言えばクールビューティー、悪く言えば無愛想。それに対し、アリスは天真爛漫。

 一見相性の悪そうな2人だが、その凹凸が互いの弱点を補っているようにも見える。


「いやー、評判通りのおいしさだったね!このお店のパスタ」

 と、ノアよりも早く食べ終わったアリスが口を開く。


「私はまだ食べ終わっていないが、まぁ悪くない味ではあるな」


 ノアはそう言いながら、先ほどまでよりも少し巻きでパスタを食べる。

 研究にロマンなど関係ないとは言いつつ、アリスも内心あの魔物について気になっていることがあった。

 それは魔物の首を刈る瞬間、その一瞬の事だった。

 ―――魔物が、アリスを()()()()のだ。

 まるで、それは獲物を初めて見つけたように、または獲物をじっくりと観察するように。

 死ぬ直前の獣が、目の前の狩人を無視したのだ。

 ただ、当の本人であるアリスは気にしていないように見える。

 きっと、気のせいだろう。それが現状から考えうる最も現実的な結論だった。


「ノアちゃんも食べ終わったし、研究所に帰ろう!」

「あぁ、そうしようか」


 そう話しているとアリスのタブレットから通知音が聞こえてきた。


「あ、対策局からだ」

「何かあったのか?」


 ノアが興味深そうにアリスのタブレットを横から覗く。


「これは、バックドアの発生警報か」

「そう…みたい。まだ閉鎖申請出されてないけど、どうする?」

「十分歩いて行ける距離だ、さっさと終わらせよう」

「おっけー、それじゃあ所長に連絡っと」


 アリスは慣れた手つきでタブレットを操作する。

 まずは、閉鎖申請を提出。次に、メールを所長宛てに送る。


「これで連絡はヨシ!」

「それでは、多少急いで行こうか」

「警報通りならあと10分もしないで開くみたいだから、少し早歩きで行かないとね!」


 2人の少女は席を立つと支払いを済ませ、『ご来店ありがとうございました』というよくある接客文句を背後に店を出る。

 時間は午後2時、季節は春。少しずつ日が落ち始め、夜に向けてだんだん寒くなっていく頃合いだった。

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