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死神憑きの希望論  作者: 霞野 虚
プロローグ
2/3

或る日

 2030年、突如としてその"穴"は開いた。

 "穴"は出現と同時に、怪物を放出。出現地点であるアリト市を一夜にして壊滅状態にした。


 それから80年、怪物の研究が進み、怪物の細胞を利用することで人類は、不老不死の力を得た。

 いや、正確には不老不死になれる"可能性"を得たといったほうが適切か。

 現在の人類は大まかに3つの種類のようなものがある。

 1つは旧人類。不老不死手術を受けていない人間、つまり不老不死になることを拒んだ人間だ。

 1つは新人類。不老不死手術を受けた人間の大半であり、半永久的な不老不死となっている。

 1つは死神憑き。一部の人間が不老不死手術を受けた際になる、不老だが"不死ではない"人間。

 新人類、旧人類ではありえないほどの異常な身体能力と"鍵"を有している。そして、効果的に魔物に対抗できる。


 惨劇から80年経った今もなお、"穴"の正体を解明できていない。

 "穴"は 『ドア』と、怪物は『魔物』と名付けられた。しかし、いくら調べてもドアがなぜ発生するのか、魔物とは何なのかなんてわからない。

 巷では神の裁きだとか、宇宙人の侵略だとか言われているが、正直否定できない。

 科学的根拠が云々なんて言えた時代はどれだけよかったかと、今になって考えたりもする。


 ただ、ドアについてわかっていることもある。

 まず、ドアが発生する場所は新人類が多く住んでいる場所に偏っていること。ドアが発生する地点は比較的ランダム性が高いが、明らかに不老不死となった人間を狙って出現している。

 そのため、新人類と死神憑きの多くは、アリト市跡地に作られた新たな都市『トピア』で生活を送っている。魔物に対抗できる人間とできない人間、そしてドアの研究機関を一か所に集めることで、安全保障と研究を両立できるというわけだ。

 次に、ドアは閉じる方法があること。とはいえ、やり方は単純で、放出された魔物をすべて無力化するだけだ。まぁ例のごとくどうやってそんな仕組みが成立しているかなんてわからないが。

 最後に、ドアの出現地点周辺には『バックドア』が発生すること。バックドアはいわばドアの小さいバージョン。規模はドアよりも圧倒的に小さく、対処も楽だ。その代わり、いつでも何度でも発生する。


「たまには、こんな風に考えるのも悪くないな」


 私は先ほどまで考えていた、小説チックで抽象的な言葉をノートに書き記す。

 多分、この少し壊れた日常がずっと、ずっと続いて行くのだろう。

 いくつもの犠牲の上に、この世界が成り立っていることを噛みしめながら。


「所長、何やってるんですか?」


 彼女の質問によって集中の糸がプツリと切れ、私は現実に引き戻された。


「ちょっとした考察だよ。それより僕に何か用かな?」

「あ、そうそう。第6区にドアの出現予想が発布されたんですけど、何も指示がなかったので気になって聞きに来たんです!」


 その言葉にハッとしつつ、メールボックスを急いで確認する。新着が一件。

 恐る恐るそれを確認すると予想通り、ドア閉鎖の参加要請だった。

 少し自分の世界に入り込みすぎたか…。だが、幸いにもまだ時間に余裕はある。


「今、確認した。君とノアにはいつも通り、現場で仕事をしてもらう。集合地点は第6区の区役所だ」

「了解しました!それじゃあ行ってきます!」


 彼女が離れたことを確認し、オペレーティングの準備を始める。

 機材チェック、状況把握、外に出ている研究員にはメールで伝達。


 ―――そして、号令。

 小さい研究所だからこそ、言葉一つで統率が取れる。人員が少ないことの唯一の利点だ。


「ドア閉鎖の参加要請を受領した。みんな、仕事の時間だ」

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