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死神憑きの希望論  作者: 霞野 虚
プロローグ
1/3

2人の主人公

 街中を2人の少女が歩いている。


「アリス、君が食事に誘うとは…珍しいこともあるな」

「だってノアちゃん、今日は暇そうにしてたから。いつも暇そうなら毎日でも誘うんだけどな~」

「暇…か。ドアがもう現れなくなれば、そんな日々も来るだろうな」

「だから私たちが頑張って研究しないと!」

「あぁ、そうだな」


 ノアと呼ばれた少女からほんの少しだけ笑みがこぼれる。

 彼女たちにとって数少ない"平和な"日常と言えるものだ。

 だが、そんな平和な日常は一つの悲鳴によってすぐに終わりを迎える。


「ま、魔物だ!魔物が出たぞ!」


 叫び声をあげた男のすぐ目の前には、大きな角を持った黒い怪物がいた。

 怪物は少しずつ男に近づきつつ、獲物を品定めするような目で周りを見渡す。

 それを見ていた周りの人間が、何もしないでたたずんでいるわけがない。

 然るべき機関に通報する者、早くその場を離れようとする者、茫然とたたずんで呆気にとられるもの。

 腰の抜けた男をよそに民衆たちの逃げ出す足音、そして悲鳴がこだまする。


 ―――2人の少女を除いて。


 そう、これが彼女たちにとって本来の"日常"だ。


「どうやら、私の出番のようだな」


 ノアは怪物ではなく怪物の先にある、空間に開いた"穴"を見てそう言った。

 それに対してアリスは薄い電子端末を操作しながら答える。


「そう言うと思って、魔物対策局とうちの所長に連絡済み!」

「状況から考えて小規模なバックドアか、すぐに対処する」

「ノアちゃんの予想通り、死神憑き1人で閉鎖できるサイズのバックドア。閉鎖許可も出たよ!」

「いつも通り仕事が早いな。それでは始めよう」


 そう口にしたノアの手には"鍵"が握られている。

 ドアや自転車、金庫などに使われる鍵とは異なる、歪な形をした鍵。

 それをノアが構えるとノアの目の前、何もない…強いて言うのであれば空気のある場所に黒い鍵穴が現れた。


「開け、死神の扉」


 その言葉と共にノアは鍵穴に鍵を差し込み、回す。

 そうすると鍵穴はまるで虚空への門を開けるように、黒い穴として広がる。急速に広がる黒い穴は、大体半径20cm程度の大きさで、ピタリと拡大を止めた。

 そして、ノアは黒い穴から勢いよく手を引き抜く。

 その手に鍵は無く、代わりに大きな鎌が握られていたのだった。


 -----------------------------------------------


 2110年、人類の7割が不老不死へと至った。

 しかし、絶対に死なないというわけではない。

 魔物と呼ばれる地球外生命体だけは現人類を殺すことができる。

 その魔物を対処、研究することが彼女たちの仕事だ。


 ―――これは永久を告げられた世界で終末を乗り越える、2人の主人公の物語だ。

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