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第七話 鋼メンタルは強い

決戦の土曜日11時半

樹は校門前で奏を待っていた。


「これ、ここで待ってるのも割と目立つもんだなぁ」

さっきから学校の周りを歩いている人も休日だというのに学校に来ている部活の人も校門横で立ち尽くしている樹のことをチラチラ見ている。

ついさっき校門についたと奏にメッセージを送ったばかりで居心地が多少悪くてもここにいるしかない。

正午に話し合い開始なら30分前にはいた方がいいだろうと早めに来てみたはいいものの、一ノ瀬仁美が部活の練習なら当然奏も部活の練習があるわけで、結局ギリギリにならないと奏の迎えがこないことに気づいてしまっていてもだ。


「あーこの前学校着いたら連絡するとか言っちゃったせいで校門で待つとか考えてたけど、よくよく考えたら生徒なんだから適当に入ったらよかったなぁ……」

樹がいろいろなミスに気が付きうなだれているといつもと全く変わらないトーンの声が聞こえた。


「なーにぶつぶついってるのよ?もしかして緊張してる?」

「あれっ?思ったよりも早かったね藤崎」

「土曜日は自主練みたいなものなのよ。連絡来たからさっさと上がってこっち来た感じ」

樹の脳裏にいじめの延長で部活に参加できてないのかと浮かんだが別にそんなわけではなかったみたいだ。

赤く光ってないので強がりなわけでもない。


「まぁ俺は今日藤崎の後ろで正誤判定をするだけだから緊張なんてしないよ。そっちこそ大丈夫か?」

「超余裕よ!」

奏は笑顔でピースを作るが体は真っ赤に光っている。


「強がりでもそれだけ笑えてれば十分だね。じゃあさっさと部室に案内してくれない?ここだと意外と人の目が多くてね」

「じゃあ行きましょうか。人払いもしなきゃいけないし」

「え?まだその辺してないの?」

「だから言ったじゃない、早めに上がってこっちに来たって。練習してたんだから何もしてないわよ」

「よし、さっさとしてくれ!普通に女子の部の周りでうろうろとかもまずいから」

奏と合流してしまったから今から人払いしても十分遅い気もする。

もう奏がいろいろと残念な感じなのは受け入れていくしかないのかもしれない。


部室の前につくと中から黄色い声が聞こえた。


「仁美さん!今日もお昼ごはん一緒にどうですか?」

「仁美さん!この後も一緒に走りましょうね!」

「仁美さん!」「仁美さん!」

どうやら今日の相手が集団を連れて部室内を占拠しているようだった。

正直ものすごく気まずい。

奏は部の関係者だからまだマシかもしれない。

でも樹は仁美以外完全に初対面なのだ。さらに仁美とも一年以上同じクラスなのにも関わらずほとんど話していない。

今となって考えてみるとうそを見抜く能力と知ったから、わざと距離を取っていたのかもしれない。


「お、おいどうするんだよ。追い出すのか?あんなファンクラブみたいな会話してる連中を」

なかの人たちに聞かれない様に樹は図書室にいるときよりもボリュームを抑えて話しかける。

奏は樹の方を横目でチラッと見てから大きく息を吸い込んだ。


「え?いや嘘だよな?」

奏は樹の方をしっかりと見てうなずいた。

どうやら樹の想像するようなことにはならないみた……

奏が勢いよく部室のドアを開けた。


「すいませーん!これから私たち仁美先輩に用があるのでそれ以外の人間はどっか行ってくださーい!」

「こわいこわいこわいこわい!藤崎はそういう神経とかないの!?しかもなんか嫌がらせとか受けてる身だよね」

まるで道場破りのように堂々とした宣戦布告だった。

なかにいた女子部員が目を丸くして固まっていた。

嫌がらせをしてた人間がこんなにも堂々としてるのだ。やってるほうもさぞ手ごたえがなかっただろう。

初めにあって話を聞いたときにケロッとしていたのもわかるような気がする。

ただ当人である仁美は一切動じていなかった。


「奏ちゃん、もう少し言い方に気をつけましょうね?みなさんもごめんなさい。もともとあった約束なの席を外してもらえるかしら?」

「ま、まぁ仁美さんがそういうなら……」

その仁美の一言で女子部員があまり納得してなさそうに、かつ奏を少しにらみながら部室から去っていった。

この一瞬で仁美の人望が垣間見えた気がした。


「じゃあ少し早いですがお話を聞きましょうか。……そちらの男の方は?」

「あーまぁ立会人みたいなもんだ。気にしないでもらって大丈夫」

普通に顔を覚えられていなかった。

あまりうそを見たくないせいで顔を伏せがちだったからかもしれない。

ただ樹としては変な先入観を持たれずに接することが出来て、うそを見抜きやすいいい状況だ。


「あれ?面識ないんですね。仁美先輩のクラスメイトの高宮先輩ですよ」

「たか……みやくんね。すいません。クラスメイトなのにほとんど話したこともありませんでしたね」

一瞬仁美の顔が曇った気がしたが、すぐにいつも通りの笑顔にもどった。


「じゃあいろいろなお話を始めましょう!」

なぜか自信満々な奏によって嘘か真かの裁判が始まった。

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