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第二話 人違いは5割ぐらい本人

この世界には特殊能力を持った人間が一定数いる。

どのような原理で特殊能力持ちが生まれるのかはいまだ解明されていない。


ただ特殊能力には二つ大きな特徴がある。

1つ目は20歳になるころには特殊能力が消えていること。

ある程度の個人差は存在するが大体20歳前後には自然と特殊能力がなくなっている。


2つ目は特殊能力が総じてショボいこと。

そのため特殊能力がなにかの犯罪や人に害を与えるために使われることがほとんどできないため、一つの個性程度にしか考えられていない。


ただ特殊能力持ちのみを集めたクラスというのも存在している。

この特殊クラスは何か特別なことを指導するわけでも、特殊能力持ちなら強制的に特殊クラスに入れられるわけではなく生徒または親が希望する場合に入ることになっている。

さらにすべての学校に存在しているわけではなく市に2,3校あるかどうかで、各学年に1クラスずつ特殊能力持ちが集められ、希望者のために寮も用意されている。

1クラスしかないためクラス替えもなく同じメンツで過ごすことになることから特殊能力持ちであっても普通のクラスで過ごす人も多い。


うそ発見器呼ばわりされている樹にも特殊能力がある。

それは話している相手がうそをついているときにその人の輪郭がうっすら赤く光るというものだ。

特殊能力のなかでは有用な部類らしく、美由紀に都合よくうそ発見器として利用されている。


樹からすると知らなくていい嘘を見抜けてしまったり、主に美由紀のせいでいろいろなヤンキーに目をつけられたり、主に美由紀のせいで能力が周りの人間に知られて距離を置かれるようになったり。

正直特殊能力がない方が楽しい生活を送れていたのではと考えてしまう。


ただの高校生ならうそ発見器として定期的に呼び出されるせいですぐに家に帰って休むことも出来ず、図書室で虚無の時間を過ごすこともなかったはずだ。


「別に嘘をあばきたいわけでもなんでもないんだけどなぁ……」

図書室に帰ってきた樹は誰にも聞こえない様にぼやいていた。

どんどんヤンキーに顔を覚えられている現状を振り返ると確実に高校生活は特殊能力のせいで失敗している。

寮で暮らしているおかげで家に直接襲いに来るということはないが帰り道に襲われる確率は上がり続けている。

美由紀に呼び出されたあとは毎回図書室でセンチメンタルになっている。


「こんなことならクラスの奴みたいにちょっと静電気が起こせる能力とかのほうが良かったなぁ」

能力は教師以外には自己申告のため嘘をついている人もいるが樹には能力で嘘をついていることも筒抜けになってしまう。

そんな嘘も見抜きたくないからいつの間にか人としゃべらず、スマホをみてだらだら過ごすようになってしまったために高校2年になっても特に友達も出来ずに過ごしている。


「ねぇ、先輩がうそ発見器?」

図書室の静寂を切り裂いたのは樹の全く知らない女の声だった。

スマホから顔を上げると樹がこれまで見たことのない女が立っていた。

人のことをうそ発見器なんて呼ぶ奴なんて絶対ロクなやつじゃない。しかもおそらく後輩だ。


「チガイマス」

樹はすぐさまスマホに顔を戻し関係ない人間のフリをする。

おそらくこの急にきたこの女は樹がよく図書室にいるという情報だけを手に入れていて、顔はよく知らないのだろう。

とにかく知らないふりをし続けて入ればいずれ勘違いだと思ってどこかへ行くはずだ。


「先輩の力を貸してほしいの」

「……チガイマス」

使いたくもない特殊能力を使わされるなんてまっぴらごめんだ。

さっさと人違いだと思ってくれれば……


「坂下先生に聞いた通りね」

「……ん?」

「『プライバシーに関わるから詳しくは言わないぞ?呼び出された後に図書室の端の方にいる奴がうそ発見器だ。声をかけるとうそ発見器って言われてることに一切の疑問を持たずに違うって即答するぞ。』ってね。ここまで坂下先生の言う通りの反応をするとは思わなかったけど」

プライバシーが本当に守られているのかはこの際置いておいて、あの先生に行動を読み切られてる方が気に入らない。

そしてそのせいで確実にこの女は樹をうそ発見器本人だと確証を得てしまったのだ。

無視し続けてもきっと能力目当てで付きまとってくるだろう。昔の美由紀のように。

あのときは毎時間教室に来るわ、電話をかけてくるわほとんどストーカーのような状態だった。

よく考えれば能力がバレるより先にその時からクラスメイトからの印象は悪くなっていたのかもしれない。


「わかったよ。俺がうそ発見器であってるけど別に君のために何かする気はないよ。別にボランティア精神にあふれてるわけでもないしね」

「別に無償でやってもらおうなんて思ってないわ。私に出来る範囲のことならなんでもするわ」

「……なんでも?」

「なんでも」

そう言い切った女の輪郭に赤い光は見えなかった。

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