第十七話 全員参戦
一ノ瀬仁美の本性晒し問題は信者の歪んだ愛によるものだった。
「ん?ちょっと待て。一ノ瀬に対して悪意があったわけじゃないのは十分わかった。だいぶドン引きではあるけど」
「じゃあもう終わりじゃない。悪意なくやったならもうしょうがないわ。私の魅力が表裏含めて多すぎただけでしょう?」
さっきまで一人で考え込んでいたりしていた仁美は思いがけない理由で自信を取り戻したようだ。
由美は新たな魅力として解釈していたが、実際他の人は悪く思っていたにもかかわらず。
「いや、なんでそんなに藤崎にすべてを擦り付けようとしてたんだ?最初に藤崎に突っかかっていったのも由美?さんだよね」
「それは……」
「私関係なさそうなら帰っていいかしら?」
「おいまて一応全部一ノ瀬が発端となってるんだ。勝手に帰ろうとするな腹黒女」
この自由奔放すぎるところがよくバレずにいれたもんだと感心してしまう。
定期的に自分は関係ないような素振りを見せているがここ最近仁美が関係なかったことは一度もない。
「女同士のいざこざよ?よくあるわよ。自分より人気だからーとか調子乗ってるとかどうでもいい事で一生ぐちぐち言ってるんだから」
「だからといって一ノ瀬とそれのせいで部活やめた挙句に今度は盗撮して動画上げたことにされてるのは流石に行き過ぎだよ」
由美の行動には明確に奏への悪意が存在しているように感じられる。
「藤崎とここ何日か話してるけど、敵を作ってもおかしくない感性と目つきと言い方はしてる」
「それ確実に自業自得じゃないかしら」
「でも流石にここまでガッツリ恨まれるような行動はしない気がするんだよね」
実際樹相手にはため口で話しているが仁美には敬語を使っているなどある程度は立場や相手を考えているはずだ。
「で?ずっと黙ってるけど?こっちは本当に悪意だけでやったの?」
「……」
由美は口を開かずうつむいたままだ。
プルルルル
樹の携帯がなった。
「先輩?あまりにも遅すぎるんだけど!?私いつもの先輩みたいに図書室に住まう妖怪みたいになっちゃう!」
しばらく待ってたくせに元気すぎる奏からの連絡だった。
そういえば図書室に返したまますっかり存在を忘れていた。
ロッカーに詰め込まれたり忙しかったからしょうがないといえばしょうがない。
「というかこれまで俺のことを妖怪だと思ってたのかよ」
「そりゃ毎日毎日図書室の端っこで本を読むわけでもなく居座ってるなんて妖怪の類でしょ。七不思議されてないのが不思議なぐらいよ」
「日頃どんな思いで話に来てるか分かってよかったわ。ふざけるなよマジで」
「あっははは!それでも話に来てるんだから私っていい女でしょ?」
電話越しなのにむかつく笑みが目に浮かぶ。
どうして樹と最近絡んでいる奴はいやな笑みを浮かべる人が多いのだろうか。
「あ、そうだ、どうせ暇なんだろ?一回女子の陸上部まで来てくれないか?」
「えぇ……一度入ったからって潜入したりとかはよくないよ?」
「違う!いろいろ用事があるんだよ。だから早く来てくれ」
「もうしょうがないなぁ。貸し一ね」
そう言い捨てて通話が切れた。
「もしかして来る?」
「えっ!?」
今の会話を目の前でやっていたからか名前を出さなくてもこれから誰がここに来るか察しがついたようだ。
明らかに由美の顔に不安が浮かぶ。
「どうせなら関係者を全員呼んだ方が早いだろ?どうせこの状況じゃ逃げられないし、言い逃れも出来ないからね」
「確かにさっさと全部に終止符打った方が楽ね。それでいいわよね?」
「……はい」
崇拝している仁美に言われたら断れないのだろう。
明らかに話すことを嫌がっているが了承するしかなかったようだ。
「じゃあ藤崎来るまでゆっくり待とうか」
由美はまるで死刑宣告されたように暗い顔のまま奏が来るまで待機となった。
待つこと数分
部室の扉がノックされた。
「先輩?今から入るからね?なんか変なことしてないよね?」
「さっさと入れ!そんな想像してる状況じゃないぞ!」
「えぇーそんな……あ」
室内に入ってきた奏は由美とガッツリ目が合った。
「あ、どうも~……先輩これは?」
「いろいろの完結編だ。動画を盗撮して投稿してたのはこの由美ちゃんだけど悪意はなかった。でも明確に藤崎に対して擦り付けようとしてるよねってことでご本人登場」
「それで私が呼ばれたわけね。まぁでもそんなことよりいつの間に由美ちゃんなんて下の名前で呼ぶ中になったの?私はまだ藤崎なのに!?」
「だって苗字知らないもん。全員由美としか言わないんだよ」
「なるほど……稲見です!稲見由美!これからは稲見ね!」
「あの?いつまでふたりでくっちゃべってるのかしら?さっさと由美ちゃんに話を始めさせない?」
関係者全員での話し合いが始まった。




