第十六話 犯人と意図
樹と仁美は部室の扉の前に立ち、由美の退路を封鎖することに成功した。
これでもう由美は言い逃れは出来なくなった。
ただ、関係なかった場合に樹はロッカーに入っていた変態の汚名を全身で受けることになるが。
「で?何について嘘をついたの?」
あんなに堂々と確保と叫んでいた割にはよくわかっていなかったみたいだ。
仁美は人を一人閉じ込めておいてキョトンとした顔をしている。
「手伝って目を覚まさせるってのが嘘だったかな。手伝うが嘘なのか目を覚まさせるが嘘なのかわからないけど、どっちだったとしても信者の発言じゃないよね」
「まぁ犯人確定ってわけじゃないけど、何か知ってそうではあるわね」
信者なら手伝うべきだし、奏が犯人だと思ってるなら目を覚まさせるべきだ。
どっちが嘘でもこれまでの発言から矛盾が生じている。
「そもそも仁美様。そいつ誰なんですか?まさか……彼氏とか?」
口調は冷静ではあるが思いっきり樹を睨みつけている。
しっかりと信者であることは間違いないみたいだ。
「いや、こいつは噓発見器として名をはせた変態よ」
「おい!お前に無理やりロッカーに詰め込まれたんだよね!?いや本当にそこだけは勘違いしないでください。お願いします」
更衣室ならともかく掃除ロッカーに入る変態はレベルが高すぎる。
「噓発見器?そういえば嘘がどうとか動画で言ってましたが……もしかしてそういう能力ってことですか!?」
どうやら俺の能力は一年生にはそこまで広められていないみたいだ。
おそらく悪さとかもあまりしていないから知る機会もないのだろう。
「うん。ご察しの通り嘘が分かる感じだね。高宮樹、よろしくね」
「あっ、なんかよく呼び出されてる……」
「それも能力のせいで仕事してるだけだから!素行が悪いとかそっちじゃないからね!」
名前だけが知られてるのは複雑な気分だ。
しかも悪評の方で。
「それで?もうわかったでしょ?なんか嘘をついたから今の状況になったってことよ!」
「もともと私を疑っていたということですか……?仁美様」
「何言ってるのよ。これまで関わった人全員疑ってるわよ。じゃなきゃわざわざ嘘がつけない様にしているわけないでしょ?」
あっけらかんと仁美は言ったが崇拝レベルで慕っていた由美も信用していないと明言したようなものだ。
由美はこの部室に来てからずっと心に傷を負わされている。
「ちなみに嘘や冗談で言っているわけじゃないぞ?心の底からそう思ってる。動画を見たなら知ってるだろ?こっちがこいつの本性だ」
「で?なんで嘘をついたのかしら?」
「手伝う気がなかったのかな?」
「いえ!そんなことは……」
由美が赤く光った。
「手伝う気がないのか。やっぱりなんか動画に関係しているのか?」
由美が驚いたように周りをキョロキョロしている。
嘘が見抜けることを信じ切ってはいなかったようだ。
「いや別にマジックみたいにタネがあるわけじゃないよ。ただ俺が分かるだけ」
「そんなの高宮さんがうそをついていたらそれで終わりじゃない!」
「まぁそれはそう。それはほら、今は協力関係にあるからそんなことする意味ないんだよね」
おそらく協力関係じゃなければ仁美も信じてはくれないだろう。
「今は一応この高宮樹を信頼することにしてるから諦めなさい。なんで手伝う気がないのかしら?」
「それは……」
「言いにくいなら質問に全部ハイっていえば噓発見器が判定してくれるわよ」
「……なら自分で言います」
由美は苦虫を嚙み潰したような顔で決断した。
嘘ついてもバレるならまだ自分から自白した方が傷は浅いだろう。
「声が聞こえたんです。いつも通り部室にいるので会いに行ったら中から奏と仁美様と男の人、高宮さんですよね。聞こえてきて……」
「もともと聞こうとしてたわけじゃないのね?」
「もちろんです。そしたら奏が仁美様に目をつけていたのは知っていたので、なにか脅迫でもされてるのかと思いすぐに録音し始めたんです。するといつもの仁美様ではなくすごい声が……」
「本性を知ってしまったわけか」
仁美のことを崇拝していればしているほどショックだったのだろう。
ただだとしたら投稿をした理由が謎のままだ。
「じゃあなんで投稿してみんなに晒したりしたんだ?裏切られた感が強くて復讐したかったのか?」
「いえいえいえいえそんなわけないじゃないですか!」
否定する由美にも嘘はない。
「はい?じゃあどんな気持ちであんなことを?」
「もちろん最初は騙されたと思いましたよ。でも新たな仁美様の魅力を広めたかったんですよ!」
「「は?」」
嘘はない。しかも話している由美の目がキラキラと輝いている。
「いつもはあんなに可愛らしく、清い仁美様の新たな一面ですよ!?みんなも知ってた方が、あ、今取り繕ってしゃべっててかわいいなぁと感じられるじゃないですか!!」
「……じゃあなんで嘘を?」
「やっぱり広めたいけど盗聴のようなことはよくないですし、私が仁美様のこと好きで好きでしょうがないみたいじゃないですか?恥ずかしいですよぉ」
まるで当然かのように由美は話した。
「一ノ瀬、残念だけど嘘はない!」
「……」
気まずい空気が部室内に流れた。




