第十三話 協力関係
「そんな協力するっていいのかしら?」
「変に隠してることに気づいちゃったんだからしょうがないだろ?」
しかも俺たちに関係している何かだと確定してしまった。
これは実害といってもいいはずだ。
「あんたの能力も難儀なものね。自分からわざわざ首を突っ込むなんて。この場合はあんたの性格の問題かしら?」
「いいから早く説明してくれ」
「……あの動画を投稿したのが藤崎奏だって言い張る子たちがいるのよ。それこそ昨日の私みたいに置き土産でやっていったってね」
「それで?」
「あの動画を見ても私についてくれてる子が変な行動に出そうなのよ」
「で?それをなんで一ノ瀬が何とかしようとするんだ?」
正直この前の扱いを聞いた限りだと別にスルーしていてもおかしくない。
まだ何か実害が起きたわけでもないからだ。
「まだこの程度なら何とかなるわ。でもここからさらに私関連の問題が起きたら本格的に復帰できなくなる」
「あくまで自分のためか」
仁美は小さく付け加えた
「それに人に罪をきせて裏でぬくぬくと動いてる奴はどうもむかつくのよ」
「我関せずだった奴が良く言うね。でもまぁ奏に実害が出そうならそれこそ最終チェックぐらいは手伝おうか
「あら藤崎奏のためならすぐ動くのね?もしかして惚れてる?」
「うるさい。数少ない話し相手なんだ少しぐらい肩入れしたっていいだろう」
「ふぅん。そうね」
仁美が含みのある笑みを浮かべている。
「なぁ、手伝わないよ?」
「ごめんごめん、じゃあ改めて。一ノ瀬仁美、能力は若干の身体強化。人に好かれるために嘘をついてるわ。よろしく」
今回の仁美の自己紹介は一切赤く光らなかった。
「ずいぶん最悪な自己紹介だね。俺の能力は一ノ瀬の知ってる通り嘘がわかるだけ。利便性は本当に悪いからよろしく」
「そっちの自己紹介も十分話しかける気がなくなる言い方ね。お互い嫌な奴同士仲良くいきましょう」
「とりあえず今回の犯人を見つけるまでね。本性がばれて一人ぼっちになった奴とあんまり仲良くなりたくないよ」
「今のうちにいろいろ言ってなさい。絶対元通りの人脈を取り戻して見せるわ」
さっきまでの焦燥しきった顔からうって変わって生気を取り戻していた。
やる気が急に出てきたようで樹は胸をなでおろした。
さっきまでの暗い雰囲気のまま一緒に犯人捜しは気まずくて行きたいとは思わない。
「じゃあどうする?心当たりはあるのか?」
「まったくないけど土曜日に学校に来てる人なんて相当限られんじゃない?」
「日常的に女子の陸上部を盗撮してるやばいやつか、土曜日に部室の周りにいた誰かになるだろうね」
仁美の人面が良く、人気があった以上日常的に盗撮が行われていた可能性が捨てきれない。
どこから撮られていたかが確認できればある程度どっちかは絞れるが画面が真っ暗な以上どうすることも出来ない。
「でもいくら盗撮犯でも堂々と動画上げたりなんてしないはず。多分あの日に陸上部に来て私たちが部室で話してるのを知っている人よ」
「となると怪しいのは……」
『仁美さん!今日もお昼ごはん一緒にどうですか?』『仁美さん!この後も一緒に走りましょうね!』『仁美さん!』『仁美さん!』
あの時に俺たちの姿をしっかり見ていて、中で何かがあったことを知っている連中。
「やっぱり一ノ瀬の取り巻きの陸上部の奴らが中で話してる内容を外から録音してた説が濃厚か」
「あの子たちがわざわざ私を貶めるようなことをしたとは思いたくないんだけど」
「変に期待させてたんだ、ある程度報復されるのはしょうがないだろ」
「そう?自分で信じたものが間違ってたら悪いのは自分でしょ?」
「まぁそんな強い人間ばっかりだったら良かったんだけどね。とりあえず俺はその人たちの顔を一切覚えてないから案内してくれ」
「私もそんなの覚えてないわよ。毎日いろんな子から同じようなこと言われるもの。とりあえず部に行って片っ端から声かければ嘘ついてる子が犯人よ」
「おいおい、まじかよそんな地道なやり方なのかよ」
これならなんの情報もなしで始まるのとあまり変わらない。
せっかくの当事者なのに利点が全くない。
「別に嘘が暴ける回数が決まってるわけじゃないんでしょ?こつこつ行きましょ」
「……そうだな」
「それに女子部員だとわかってるだけ得よ。私に関係ある大勢からそれだけで十数人程度には絞れるもの」
「絞ってもそれだけいるのかよ……わかったよ。いこう」
協力すると決めた以上は今できる方法を全力でやるのがいいだろう。
仁美と樹は二人で陸上部が練習している方に向かった。
「先輩全く帰ってこないんだけど!?」
図書室に先に帰らせて置き去りにしている奏を忘れて。




