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第十二話 いじめたくなる時もある

「まるでいじめられた側みたいだね、一ノ瀬」

「……何しに来たの?」

校舎裏に制服のまま座り込んでいた仁美の顔は明らかに憔悴していた。

特に仁美にあこがれていた人が特に多いわけではなかったクラス内でも腫物のような扱いを受けていたのだ。

あこがれていた人が多かったであろう陸上部なんて昨日から最悪の居心地だったのだろう。

だましていた本人が悪い事には変わりないが。


「一応今後のご予定でも聞いておこうかなと思いましてね」

「今後の予定?こんな状況の私に向かって?」

「だからこそだね。メンタルぐちゃぐちゃになってとんでもない事をやらかしちゃったら一応関係している俺たちも気分が悪いでしょ?」

いくら関係ないとはいえきっかけになった自覚ぐらいはある。


「別になにも考えてないわよ。これから私がどうするかなんて私にもわかんないもの」

「自暴自棄みたいな言い方ですね。先輩これいろいろやらかすタイプの病み方してますよこれ」

「これはやるね。普通に深夜フラフラと街に出るタイプの病み方だね」

「あんたら勝手なことぐちゃぐちゃと言ってんじゃないわよ!」

「まぁ夜遊びがえぐくなるぐらいならべつにどうでもいいから俺たちは普通に帰るか」

「叫ぶぐらいは元気そうですし、そもそも仁美先輩的にはなかったことですもんね」

明らかに疲れた顔はしているが死ぬようなタイプの疲れ方はしていない。

今のところは最悪の状況にはならないだろう。

樹と奏は仁美に背を向け図書室に向けて歩き出した。


「いやーメンタル強くて良かったわ。俺たちが何もしなくてもよさそうだったな」

「化け物メンタルじゃないと嘘ばっかの人生送れませんからね。でも変に杞憂して損しました」

「ちょ、ちょっと待って!」

後ろから仁美の声が聞こえるがとりあえず無視して歩いてみる。

樹たちは別に望んで人助けをするわけではないからだ。


「ほんとにな。危なそうだったら頑張る気だったけど大丈夫そうだったね」

「ちょっと待って!……くだ、さい……」

樹がチラッと仁美の方を振り返ると苦虫を嚙み潰したような顔で仁美が樹たちを見つめていた。

別に弱ってる人をいじめて楽しむ趣味はないが、昨日までの態度を考えるともう少しいじめてみたくなる


「おやおや、藤崎なんか待って欲しがってるぞ。あれだけ叫んでたやつがか細い声で」

「私たちには敬語なんて使わないから外面がいいモードなんで嘘かもしれないですよ」

「確かに嘘かもしれないからスルーでいいか」

「ちょっと待って!嘘かどうかはわかるはずでしょ。私嘘ついてないわよ!」

仁美の周りはまだ一度も赤く光っていない。


「でも信用されてないっぽいし、本当に嘘をついてるか分かる能力かもわからないよね。自分の能力を長い間偽ってた人もいるみたいだしね」

「これまでの奴がたまたまあってただけかもしれないですからね」

だんだんと仁美が泣きそうな目になってきた。

これ以上は別の理由で仁美が病むかもしれない。


「はぁ……とりあえず話だけは聞いてあげるよ。何か話があるならな」

「私は先輩次第なので、全部先輩にゆだねてますので」

「なんかずいぶんと変ななつかれ方をした気がしなくはないがこの際スルーしておくね。別に俺たちは善意で動くタイプじゃないことは覚えておいてほしいな」

「わかったわ。とりあえずこの動画をアップした人間を突き止めたいの。もういろいろ広まったものはしょうがないわ。なんでこんなことをしたのかだけは知りたいのよ」

「なるほど。じゃがんばって」

どうやら特に仕事はないみたいだ。

正直ネットに強いわけではないし、学校の人間にも強くはない樹は人探しなどは全くと言っていいほど向いていない。


「まって!違うの!別にそこを手伝ってほしいわけじゃないわ。ただ最終チェックとして嘘で言い逃れが出来ない様にしてほしいだけなの。私の時みたいに」

「だから手伝うメリットがないんだよね。犯人探す元気があるなら俺らも変に引っかかりなく楽しく暮らせる」

「……そうね」

再び樹たちは図書室に向かおうとした。


「私だけの問題だもの一人でやるわ」

仁美の周りが赤く光るまでは。


「ちょっと待て。一ノ瀬、なに隠してる?」

「ん?先輩どうしました?」

「いや先に帰っててくれ、ちょっと一ノ瀬に話がある」

なんとなく樹は奏がいない方がいい気がした。

奏を先に帰らせて、樹は仁美に詰め寄った。


「どっちが嘘だった?一ノ瀬だけのほうか?それとも一人のほうか?」

「別にあんたたちには関係ない話よ」

仁美の周りが赤く光った。


「はぁ……そっちか。今隠してることをさっさと話してくれ。場合によっては協力する」

また面倒なことに首を突っ込むことになってしまった。

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