第十一話 無関係ではなくはない
次の日、あまりクラスに馴染んでいるとはいえない樹でさえも違和感を感じるほど、クラスの雰囲気はガラッと変わっていた。
いつもいろいろな机に移動し、周りに人が集まっていた仁美が明らかに孤立していた。
ただ直接仁美になにかをしているというわけではなく、とりあえず様子見で離れているといった感じだ。
やはり学校のコミュニティというものは狭い。
おそらく昨日のうちに仁美も対策を取ったはずだがこの結果だ。
仁美もこれまでクラスいたときのような笑顔ではなく、もちろん図書室に樹たちに文句を言いに来た時のような元気もない。
ひたすらどうすれば解決するのかを思案しているような顔だ。
今日一日困った顔をしている仁美を横目に樹は相変わらず図書室にむかった。
「いやーうちのクラスでも仁美先輩の話題で持ち切りよ」
「まあどうせ図書室にいるだろうなと思ってたよ」
奏はなぜか昨日に引き続き、樹が来るよりも早く図書室で待機していた。
「こっちはクラスメイトだから直接話題にしづらいっていうのもあったけど、明らかにみんな一ノ瀬のことを意識してたね」
「あら、普段ボッチの先輩がいつもとの違いがわかるものなのね」
「あのねぇ、そんな俺でもわかるぐらいクラスの雰囲気終わってたっての。クラスに入った瞬間から気まずい空気が止まんないって。妙に静かだったし」
「急にクラスメイトが犯罪者になった感じがして騒ぎにくいわよね」
「そんな経験ないよ!今の状況よりも悪化した想像をさせないで!?しかも俺ら特殊能力持ちのクラスはクラス替えもないんだぞ?卒業までぎっしり気まずいよ」
正直クラスで一人の存在とはいえ雰囲気は共にしている。
登校から授業終了まで気まずい一年半近くはあまりにもキツイ。
「ただ身から出た錆すぎて第三者がどうすることも出来ないんだよね。でっち上げられた動画なら俺の能力でいろいろと証明できるんだけど」
「やっぱり先輩やさしいわね」
「いや俺にしっかり実害が出てるからなぁ。害がなければ特に何も感じないんだけどね」
まさか樹も気軽に受けた相談がこんなに普段の生活に関わってくるとは思っていなかった。
やはり特殊能力を使うときはろくなことが起きない。
「私はもう関係ないといえばないから手伝う義務はないけど、先輩が何かするっていうなら手伝ってもいいわよ」
「いろいろあったのに手伝おうと思える藤崎のやさしさにはびっくりだよ。でも本当に出来ることはないんでよ部外者だから。一ノ瀬がこれからクラスの中でどうなるかは知らないけどあと一、二か月でもしたら雰囲気は元に戻ってるでしょ」
「あんな外面気にしてる人がこんな状況になってまともに一、二か月後に過ごせてるとはあんまり思わないけどね」
「正直学校辞める、最悪この世からいなくなるまである。あまりにも面の皮が厚すぎて平然と過ごしてる可能性もあるけどね」
後者なら問題はない。前者だった場合に樹は今後もなにも感じずに学校生活を暮らしていけるかというと、怪しい。
間接的な原因は樹にもあるのだから。
「本当にそれでいいのね?」
奏が樹をじっと見つめる。
こんな状況でまぁ別にいいっしょ~なんていえる人いるのだろうか。
「……わかった。とりあえず本人に話を聞きに行こう。それで向こうが何も求めてないならもう何も関与しない。これで納得するか?」
「納得も何も別に私は何とも思ってないわよ!?」
奏が赤く光った。
なんだかんだ言いながら奏も少しは救いたい気持ちがあるのだろう。
「話を聞きに行くといっても、俺は一ノ瀬の居場所なんて心当たりないぞ?」
「そんなの私だってないわよ。別に他の子たちと違って部活以外での関わりはないもの」
「一ノ瀬はこんな状況でまともに部活に出るようなタイプだと思うか?」
「わかんないわ。それこそ今日のクラスでの様子を見てくると思った?」
クラスでの仁美は苦しそうな顔をしながら、いつもしてるように自分から話に行くこともしなかった。
そんな精神状況で部活に行くかといわれると……
「普段通りの行動はしなさそうだよなぁ」
「じゃあ地道に探すしかないわね。もうすでに帰ってる可能性もあるけど」
「よし、とりあえず没落した人気者を探しに行くか。手分けする?」
「一緒に行けばいいんじゃない?別に急ぎの用事じゃないし、探してる間も話し相手ほしいでしょ?」
「いや俺は最初からずっとそういうのを求めてない!一人で静かに能力が消えるまで過ごすんだよ」
「はいはい、そんなおじいちゃんみたいなこと言ってないで探しに行きますよ」
図書室をでて仁美探しを開始した二人はしばらく校内を歩き回った後、校舎裏で頭を抱えてうずくまっている仁美を見つけた。




