残された者と……
朝日がギルドの窓からテーブルに突っ伏して寝ている私に差し込む。
眩しくて目を開ける……顔を上げ周りを見渡しても昨晩飲みすぎて泥酔してる人や依頼を探してる人しかいなくて彼の姿は何処にもない。
昨晩……私はその日出会ったセッカにパーティにならないかと誘った。
彼がシンゴブリンに対して放った魔力の強さとあの状況で動ける勇気……そして私の夢を応援してくれるって言ってくれたことが嬉しくて誘ったのだ。
彼は夜風に当たり少し気を落ち着かせてから答えてくれると言ってくれた……しかし彼がその日のうちに帰ってくることはなかった。
何度か様子を見に行こうかと迷ったが「リティアは待ってて」という彼の言葉を裏切りたくはなかった……
けれども朝になってまで帰ってこないのは異常だ……
そう思いながら私は席から立ち上がって外へと出て彼を探しに行った。
ギルド周辺を探すも彼の姿はなく、もう少し遠くまで探そうかとした時……人が集まって何か騒いでいるのが見えて不安を胸に人混みへ近づいて行った。
多くの人がざわついており、その人混みをかき分けるように前に進み人混みを作っている原因に行き着いた。
そこで私が見たものは……
辺り一面に散らばる見るも無惨な人間だった肉片達だった。
犠牲になった人はどうやら2人……1人はバラバラに切り裂かれ、もう1人は生きたまま焼かれていた。
昨晩の大雨で血が洗い流されていたはずなのに現場には血生臭さがたちこめていた。
「うぇっ……」
凄惨な現場を見てその場で吐き気を催すが、なんとか堪えその肉片を恐る恐る見た。
もしかしたら……もしかしたらこの肉片がセッカの物の可能性を考えてしまったからだ。
しかしぐちゃぐちゃになった肉片は誰のものかは判別出来なかった……
それでもこの2つの遺体を見て胸のどこかで引っ掛かる感覚に襲われた。
「どうやら使われたのは風魔法と炎魔法らしいわよ……」
「えぇ!?2属性使い??珍しいわね……」
人混みの中で誰かがそう話すのが聞こえた。
……私はその2つの魔法を使える人物を知っている、けれどそんな事は……
私はそのまま逃げるようにその場を離れる。
──違う、彼じゃない。
彼がこんなことをするわけがない……
頭の中で1番最初に思ってしまった事を否定する。
──じゃあなんでどこかに消えたの?
自分の今宿泊している部屋へと駆け込みそのままベッドに頭から突っ込む。
そのままさっきの人殺しの事件の犯人についてを考えを巡らせる。
確かに属性魔法を2種類使える魔法使いは珍しい……でも珍しいだけでそれだけでその2属性が使えたセッカがやったなんて言い切れない。
帰って来れないのもきっと道に迷ってるからなんだ……彼はここには初めて来たって言ってた。
だから……だから……
コンコンコンッ
しばらく考えていた時、部屋の扉をノックされる。
まさかセッカ!?そんな淡い期待を抱きながら扉を開ける。
しかし部屋の外にいたのはセッカではなく見知らぬ男性だった。
その男性、見た感じは30代くらいで私より一回りくらいしっかりとした大きな体で真っ直ぐな目が私を見つめていた。
「君が……リティア?」
出会ってすぐに彼は私の名前を読んだ。
誰?なんで私の名前を??
「そう……だけど……貴方は?」
「俺を君のパーティに加えてくれ」
男はいきなりそんな事を言ってきたのだった。
──ポチャンッ……ポチャンッ……
──パチパチッ
水が滴り落ちる音と……これは焚き火の音?
俺はいったい何を……?リティアにパーティに入る事を伝えなきゃ……
そう思いながら目を開ける。
あたりは薄暗く、ゴツゴツとした岩肌が目に入る。
灯はどうやら隣にで焚かれていたこの焚き火しかない、どうやらここは洞窟のような場所だった。
俺は気を失うまでの間を思い出そうとしながら体を起こす。
「おぉ、起きたか」
いきなり掠れた声がしてビクッとなりながらもその声の方を向いた。
そこにいたのは白髪の老人。
顔はシワシワなのに体全体ががっしりとしていて見ただけで相当鍛えられていることが窺える。
「あっはい。えっと……あなたは?」
とりあえず現状把握をしておかないとと思い老人の事を聞く。
「ワシか?ワシはな……お前達が魔王と呼んでいる者じゃよ」
老人の口から出たのは驚きの言葉だった。