少女の始まり
セリアルイン王国の外れにある小さな村で私、リティア・フレーンは生まれました。
なんて事ない家庭。ただお父さんが昔、この国で最も栄誉ある称号勇者を目指していた冒険者で。
私が小さい時からお父さんが冒険者時代の時の話をしてくれました。
そんなお父さんの話を聞くのが大好きだったそうで他のみんなが読んでいるような絵本よりお父さんの話の方が好きでした。
大吹雪の山や水が一切ない砂漠での冒険、大木の幹くらいの太さの大蛇や巨大な魔族との戦闘。そんな話を私は目を輝かせて聞いていました。
そんな私は父に憧れ、父が目指そうとした勇者になる事を決心して日々鍛錬してきました。
でも勇者になる為の旅路は危険ですその事で両親から旅に出ることを反対されていました。
それもそうです。
私の勇者になりたいという夢なんて叶うなんて誰も思わない……だって今まで1人も女の人が勇者になったことがないのだから……
でも私の熱心な心で訴えてかけ続けたら両親にもわかってもらえたらしく旅に出る許可を貰えました。
そして私は16歳になり父から剣を譲り受け旅に出ました。
勇者になる夢を誰に馬鹿にされようとも決して諦めないと心に誓って。
そんな私はティルリンという街にいます。
村に1番近くの街(村から街まで50km以上はある)でしばらく勇者になるために冒険者として活動する事にした私は3ヶ月の間に様々な依頼をこなしました。
といっても迷子のペット探しや稲の収穫の手伝いなどどれも簡単な物ばかり。
でもこれら依頼も大切な事だってわかっています、けれどこのままこんな簡単な依頼ばっかりじゃいつまで経っても勇者にはなれない……
そんなある日、私は洞窟のゴブリン退治といういつもより大きな依頼を受けることが出来たのです。
いつもより大きいと言っても初心者用の依頼なのは変わらない……けれどこの依頼を達成出来たらもっと大きな依頼を受けれるかもしれない。
私は緊張とワクワク感を胸に街に依頼の準備をしに行きました。
「おうリティアの嬢ちゃん!!今日も畑の手伝いか?」
準備の為の買い出しをしてる最中、いつも声をかけてくれる八百屋のおじさんがいつものように話しかけてきた。
「今日は違うの、ちょっとゴブリン退治にね!」
からかい気味に言ってくるおじさんに対して私は今日の依頼を話してそのまま買い物を続けに行く。
「ほんとか!?気を付けて行きなさい!」
離れる直前におじさんが心配の言葉をかけてきてくれたので私は手を振って返した。
それから私は依頼に必要な品を調達して揃えた。
「あとは……教会に行ってお祈りをしてもらうだけっと……」
そんな時だった。
私が歩いている横にあった路地から1人の少女が走って出て来た。
その少女は私を一目見た後すぐさま走ってどこかに行ってしまった。
私は少女が出て来た路地を覗くように見た。
特に深い理由とかはなく、ちょっとした好奇心だった。
そしたら数人の男の人の声ととある音が聞こえてきた。
聞こえてくるのは男の悲鳴と何かを殴っているような鈍い音そして笑い声だった。
誰か暴力を振るわれている……しかし私には関係のない事だ。
それでも!ここで動けない人が勇者になんてなれる訳がない!!
私には正義感があった、昔から何か悪いことをしている人に対して黙ってはいられなかった。
だから今も私は音のする方に向かった。
この先で酷い目にあってる人を助けるために。
そして路地の先に進むと1人の少年に対して金髪と黒髪の男の人達が暴力を振るっている場面だった。
「あなた達!やめなさい!!」
私は大声で暴力を振るっている2人に対して暴力の静止を訴えかけた。
そして暴力を振るってる男2人がこっち向いた。
「なんだまた新しいやつが来たのか」
「まっ邪魔されんのも面倒だし、まずはお前からだ!」
そうして2人は私へと襲いかかってくる。
相手は2人、そして私よりの体の大きな男……側から見たらこっちが不利だと思うだろう。
でも私は勇者になるために毎日鍛錬を積んできた!こんなところで負けるわけにはいかない!!
まず最初に襲いかかって来た金髪の男の人に対して真正面から顔面を拳で強打、怯んだところで後ろへと投げ飛ばした。
次に黒髪の男の人は金髪の人が私にやられて動揺したところで今度はお腹の方を一回殴ってそのまま膝から崩れ落ちた。
結果的に私は2人の男の人に対して秒殺したのだった。
「クソ……行くぞ!」
「お、覚えていやがれ!!」
2人はすぐに立って路地から逃げるように走って出た。
特に追いかける理由もないから私はその2人が逃げていくのを見送って倒れてる人に近づいた。
さっきまで暴力を振るわれてたせいなのか身動きもせずに彼はただこっちを見つめていた。
少しばかり乱れた黒髪で歳は見た感じ私と同じくらいなのだろうか?
他に印象に残ったのは服装……見たことのない布地の少しダボっとした感じの黒い服を着ている。
とりあえず倒れてる彼を起こそうと私は手を差し伸べる。
「大丈夫?」
ここでの彼との出会い
その出会いの先に待つ結果
それを考えると私と彼は出会う運命だったのかもしれない。
しかしそんな事、今の私には知る由もなかった。