9.解決策
10月1日
あれから1ヶ月が経ったが、まともな解決策は出てこなかった。学校も始まり、忙しくもあった僕は、それでも毎日レイちゃんと話していた。
「おゆ、今日もお疲れ様。今日は何をしたの?」
「特に変わらずかな。ちょっと文化祭の話し合いをしてて遅くなったけど。」
「文化祭か。私も行ってみたいな。」
「文化祭ならお面を持っていってもさほど不自然ではないだろうし連れて行ってやるよ。」
「やった。でもそろそろこのお面ともおさらばしたいところだよ。あまりに暇で暇で。」
「ごめん。まだまともな案は出てないんだ。」
「ううん、仕方ないよ。考えてくれてるだけで嬉しい。」
レイちゃんはそう言うが、僕としてはもどかしさを感じているのも事実。
そういえば最近ケイと話してない。相談がてら電話でもしてみようと思った。
「もしもし、おゆか。」
「ケイ、久しぶり。今何やってる?」
「絵の練習だ。前にお前に会った時より格段に上手くなってるはずだぜ?」
「そりゃ良かった。今度見せてくれよ。ところで、ちょっと相談があってな。」
「何だ?そういえばレイちゃんとはどうなったんだ?」
「結局、生命力吸われてた。けどまあ話し合いで解決したんだ。それは。でも今レイちゃんが、あの時僕がつけてたお面に憑いてて、次の憑き先をどうしようかと思っててな。」
僕はレイちゃんの状況を全てケイに話した。
「だいぶ難しい問題だぜそりゃ。例えば……お前のスマホに憑かせたりは出来ないのか?」
なるほど。確かにスマホなら持ち歩くし、古くなっても機能が使えなくなるだけで本体は壊れにくい。
「ありがとう。それ、かなり良い案かもしれない。」
「参考になったんなら良かったぜ。じゃあな。」
ケイとの電話を切り、レイちゃんに早速スマホの件について話に行こうとした時、僕は閃いた。そしてもう一度ケイに電話をかける。
「もしもし、何だ?なんか言い忘れでもあったか?」
「いや、電話切ってすぐに閃いたんだが、ケイってVTuberの体作れないか?」
「VTuber?……あぁ、そういう事か。一応過去に作ったことはあるが、レイちゃんの憑き先にバーチャルアバターを使おうって事でいいんだよな?」
「話が早くて助かる。もしそれに取り憑くことが出来るなら、全て解決すると思うんだ。」
「いいぜ。レイちゃんに聞いてみて出来そうなら俺が描いてやる。流石に依頼として料金は貰いたい所だが後払いでいい。Live2Dアバター制作の相場がそれなりに高いのはおゆなら知ってるだろ?」
「ああ、もちろん。じゃあまた連絡する。」
これでレイちゃんの憑代問題の解決の糸口が見つかった。