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8.大事な話


「まずどこから話そうか。」


「なぜおゆが倒れるに至ったかを説明したい。」


「じゃあそこから頼む。」


「私はおゆに取り憑いてから、おゆの生命力、つまり体力とかを消費することで活動していた。おゆとの会話も、私の気持ちも、全ておゆの生命力が消費されていた。」


 やはり、そうだったのか。


「一応過去に取り憑いた人も同じようにしてたけど、その人達には影響無かったの。だから大丈夫だと思ってた。」


「じゃあ何で僕は倒れるまで生命力を吸われたんだ?」


「花火大会で……いや、私が常に活動し過ぎたのが原因だと思う。おゆみたいに毎日のように会話する人なんて初めてだったから。」


「それだったらリスクについて先に言ってくれても良かったんじゃないか?」


「言ったら……おゆはきっと私と関わる事を避けてしまうと、そう思ったの。」


「それは……完全に否定することは出来ない。ただ、今の僕はそう思わない。僕は君ともっと話したいと思ったし、何か解決策があると信じてる。」


「えっと……一応、今この状態ではおゆから何も吸ってないの。物に憑くのは人に憑くよりコストが低いって感じかな。でも私のできることは明らかに減っちゃう。おゆとも常に話せる訳じゃ無くなる。そしてもうひとつ、大事な話があるの。」


 大事な話。僕はしっかり心を身構えて次の言葉を待つ。


「私がこのお面から移動して次の憑代に移ったら、たぶんもう移動する事は出来ない。これは私が移動する度に少しずつ力が散ってしまうから。もしも最後の移動先が壊れたら、私はきっとこの世に残れなくなる。」


 つまり彼女に残された転居はあと1回。物に憑くということは壊れたら終わりというリスクも同時に抱えることとなる。人や他の生き物の場合でもその体の寿命が来たら共倒れということだ。


「そうか……わかった。しばらく考えさせてくれないか。とりあえずはそのお面に憑いていて欲しい。僕は君ともっと一緒に居たいし、解決策を考えてみようと思うよ。」


「ねえ、私、おゆが嫌ってもおかしくないようなことをしたのに、なんでそんなに優しくしてくれるの?」


「それが僕のしたいことだからだよ。僕は自分のしたいことの為なら、ある程度許容しようと思っている。君との会話はそれだけの価値がある事だと僕は思っているんだ。」


 そう言うと彼女は黙ってしまった。我ながらちょっと恥ずかしい事を言ったとも思うが、本心なので仕方がない。

 僕はお面を外し、机の上に丁寧に置いた。


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