4.花火大会
8月15日
天気がいい。今日は外に出たくない日なのだが、昼ご飯の買い物ついでに今晩開催される花火大会のポスターを見にきていた。
「今日の花火大会に行こうと思う。前に約束してたしな。」
「やったー!実はそろそろかなって思ってたんだよね。」
なんだかんだ僕も楽しみにしていた。花火大会って夏のイベントの中で一番好きかもしれない。
夜になって会場に向かった。気分が高まりすぎて、甚平を着たうえに、祭りで買ったお面までつけてきてしまった。
浮かれた気分で会場に着いた僕は、人の多さに圧倒されながらも屋台で焼きそばを買い、場所取りに行った。
「この辺ならそれなりに見えそうだな。そういえば今更だけど幽霊の視点は僕と同じと考えていいのか?」
「同じにもできるし、ちょっと俯瞰視点でも見れるよ。」
じゃあ幽霊もちゃんと花火が見れそうだな。というかちょっと面白いな。視点操作とかゲームみたいだ。
「そろそろ始まるかな。」
「いやまだ30分くらいあるよ。」
「そ、そっかあ。」
ウキウキな幽霊はちょっと面白い。普段クールっぽい癖に今はまるで子供だ。そういえば僕は幽霊の過去についてあまり知らないなと思った。
しばらくして、開始時刻になった。
ヒューという音とともに天高く打ち上がった花火は、夜空を覆い尽くすように広がり、直後にドンッという雅な開花音が響く。僕らは声も出ないほど花火に夢中になっていた。
花火はクライマックスになると、ヤケクソのようにドカドカ打ち上がる。だんだん気分がノってきた。
「たまや〜」
僕は少し恥ずかしいので小声で呟いた。
「たまや〜!」
幽霊は他の人には聞こえないので大声で叫んでいた。
花火が終わって、家に帰ろうと思い、人混みに流されて会場を後にする。人気が減ってきたあたりで、僕はやけに疲労を感じる。
「おかしいな。ちょっと休ませてくれ。」
近くの自動販売機にもたれかかるようにして僕は少し深呼吸した。しかし、目はかすみ、視界が狭くなっていくのを感じる。これはまずい。そう直感で思った。そして、そのまま僕は電源が切れたように気を失った。