3.祭
こうして幽霊と僕の生活は続いていく。僕は、大学やらバイトやらサークルやらの日常を淡々と過ごし、家では幽霊と喋る非日常のスパイスが待っている。
7月7日
「そういえば今日は七夕だね。七夕祭りとか行ってみたいんだよな。」
「行けばよかったのに。どうせおゆは暇だったんだし。」
「最近暑くて疲れてんだ。わざわざそんな時に出かけようなんて思わんのよ。」
「でも私お祭り好きよ。賑やかで楽しいし。」
一般的な幽霊は静かな所が好きなイメージだったが、だいぶ違ったみたいだ。8月には沢山祭りがあるだろうから行ってみることにする。僕も祭りは好きなんだ。
「8月になったらこの近くでも結構祭りがあるんだ。何回か行くことにするよ。」
「いいね。雰囲気だけでも楽しませてよ。」
そうだった。彼女には肉体が無いからお祭りと言っても特にする事は無いのか。ちょっと可哀想な気もしてきたな。
「じゃあ花火大会に行こう。花火を見る事なら一緒に出来るだろ?」
「あ、ありがと。」
今年の夏は例年よりお金がかかりそうだ。労働に励まねば。
8月3日
僕は母方の実家に帰省していた。祖父母へ挨拶をして、早速祭りへ行くことにする。
流石に家族の前で幽霊と話す訳にも行かないので、僕はしれっと別行動をした。
「そろそろ大丈夫かな。」
イヤホンのマイクで通話している風を装って僕は幽霊に話しかける。
「いやーだいぶ田舎だね。私は都会から離れたことないから、結構新鮮だよ。」
「そうだったのか。ところでなんか欲しいものあるか?」
「えっと……あ、お面欲しい。おゆ、お面つけてよ。」
嘘だろ?この歳になってキャラもののお面は罰ゲームだぞ。
「勘弁してくれよ。流石に恥ずかしいわ。……あーでもあの店のお面なら大人向けだしちょっといいかもな。」
珍しくキャラものではないお面を売っている店があった。狐の物が多かったが、その中で一際目立つのが目の穴が空いていない電源マークのお面だった。
「「これ、欲しいな。」」
二人の意見が一致したので購入は即決定した。地味に1000円もした。