表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

1.出会い


 5月28日


 僕は彼女に出会った。肉体のない魂だけの彼女に。


 その日、いやその前日から話そう。僕は数少ない友人二人と一緒に、浴びるように酒を飲んでいた。というのも友人の一人、トキが高校三年の夏から約二年間付き合っていた彼女と別れたので、彼を慰めるため久々に集まったのだ。


「まあそう気を落とすなよ、まだ大学生活は長いんだ。出会いなんていくらでもあるさ。」


 今トキのことを慰めているのは、絵が描けるオタク、ケイだ。


「そういえばこんな噂があるんだ。ネットで話題になっている幽霊の話なんだけどおゆ、知ってるか?」


 おゆは僕のあだ名だ。苗字と名前の頭文字を取っただけだが。


「あぁ、そういえば誰かが配信で話してたなそれ。落ち込んでる人に優しい言葉をかけて傀儡にするっていう性格の悪い幽霊だっけ?元ネタ何なのあれ。」


 僕はVTuberの配信を暇さえあれば見ているので、その手のトレンドネタは誰かしらが話しているのを聞いている。


「お、やっぱおゆは知ってたか。ちょうどこの近くがモデルになったネットロアだぜ。まあこれは創作なんだが、実際気持ちが落ち込んでると付け込まれるもんだ。切り替えていこうぜ。」


「あんがとさん。んじゃまあ今日のアルコールで全部忘れてやんよ!乾杯!」


 そうしてトキの部屋で開かれた飲み会は、全員が大半の記憶を吹っ飛ばし、いつ終わったかもわからないまま、目が覚めると僕は自宅の前で力尽きていた。


 僕は目を覚まし、重たい頭を持ち上げて何とかワンルームの部屋に入る。シャワーでも浴びようかと思っていると、鏡に映った【それ】がいた。僕の頭の横、肩の上に何かがある、ように見える。手で触ってみてもそこには何もない。でも鏡越しには、僕の頭の周りをうろついているような淡いピンク色の靄のようなものが見えた。すると耳元で【それ】は囁いた。


「しばらくあなたに憑かせてください。特になにm」

「うぇあ!」


 それが幻ではないと悟った瞬間、僕は間抜けな声で叫んだ。


「……と、特に何もしないので気にしないでいてください。」


 ふと【それ】は割とかわいい声をしているなと思った。いや恐怖が勝ったけど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ