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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第九章 聖者と愚者は紙一重

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第81話

「早速くそったれだわ」


「口が悪いですよ、イリステラ。気持ちはよくわかりますけども」


 気を失った後、何があったのか私にはわからない。

 とりあえず私の身柄をどうこう……っていうのはアドルフさんが守ってくれてなんとかなったようで、スリコフ将軍の家に戻されていた。


 マヌエラたちに守られるような形で目を覚ましたのできっとなんかあったんだろうなとは察していたけど、早速もって『聖女の能力』が本物であると理解したリンドーン王家はやはり正式に(・・・)聖女を派遣してほしい旨を打診してきたというのだ。


 まあ勿論いきなり国に連絡が行ったのではなく、ヘルマンに話を持って行っての上だ。

 事情を知る私と夫であるアドルフさん、そして今来ている第五部隊を外交師団としてこのまま残す形でどうかと。


 それが難しいのであればアドルフさんと離婚させて私をスリコフ将軍に嫁がせる気はないかと。

 それはもうご丁寧なまでのお言葉で言っていたけど要約するとそんな感じだってヘルマンから連絡もらったのよ。

 おそらくアドルフさんの方にも同じ手紙が行っていることだろう。


「なんでわざわざ離婚してスリコフ将軍と再婚せにゃいかんのよ!」


 思わずクッションに八つ当たりしたってマヌエラは何も言わない。

 私の言葉に同意するよう、うんうんと頷いてくれている。さすがだ友よ!


 ありえんでしょ、私の夫は最推しなんですけど!?

 なんであえて続編主人公に乗り換えなくちゃならんのだ、推しでもなんでもないのに。


 いや推しだったらいいのかっていうとそういう問題ではないのだが。


「まあわたくしたちからすると国から指令さえあればこの国に留まるくらいは構いませんが、こちらでの扱いについては少々警戒すべきでしょうね」


「きっと〝暴走〟状態の人たちの相手をしてくれって要請されるわよね。それで私には彼らを治せって言うんでしょ。知ってる」


 そして体よくそうして暴走する人たちを抑制する獣化を制御する第五部隊も、暴走した後に私の治癒を受けて元に戻った被害者に対しても、治療という名目で研究対象にするつもりなんだろう。


 再婚相手としてスリコフ将軍を指定してきたのも、彼が獣化した後に暴走した場合のことを考えて抑止力として聖女を求めているってことに違いないし、アドルフさんのように安定して能力を常時発揮できるようになるなら安い買い物(・・・・・)くらいに思って喜んで国からお見舞い金だの何だの名目を作って母国に融資するとでも言うに違いない。


 さすがにあれこれ事情を知るゲオルグ陛下が『はい喜んでエ!』ってそれをオッケーするとは思っちゃいないしそこは信頼しているけど、そんな話をされているのかと思うとムカムカするんだよォこっちは!!


(せっかくこの館で働く使用人のみなさんがアドルフさんと私が一緒にいるところを見て『あれっ、怖くない……?』くらいに雰囲気和らいできたってのに!)


 今度はスリコフ将軍と私をくっつけるよう周囲からあれこれ言われて下手なお節介焼かれたらなんて考えるとそれだけでめちゃくちゃストレス溜まるんですけど!?


(……そりゃあね、アドルフさんが本気で好きになった人ができたとか、そっちの方が国の為になるからそうしてくれって言ってくるなら私も受け入れると思う)


 推しの願いはなんだって叶えたい。できることなら。

 それが私にしかできないと言うならば、離婚だって受け入れよう。


 そもそもそのつもりだったのが、ここまで大事にしてもらえてきたのだ。


(でも、一生をかけてオオカミの愛情を教えてくれるって)


 だけどアドルフさんはみんな(・・・)を守る、隊長だから。

 ゲオルグ陛下だって、国民を守るためにはオーベルージュからの援助や周辺諸国との折り合いをつけていかなくちゃならない。


 そんな中で、アドルフさんと第五部隊を切り離されるくらいだったら私だけを差し出した方が国として有益だってことくらい私だってわかっている。

 この国に留まって、第五部隊が好奇や憎悪の目で見られることを考えたら、彼らのストレスが少しでも少ない国元に戻ってもらいたいと私だって思うのだ。


(だって、だって)


 アドルフさんも、第五部隊も、私の大事な推しだもの!

 周りに魅力を伝えることも推し活だけど、彼らを守るために行動するのだって推し活だ。


 いつかは消えていく獣と聖女の因子、だけどそれは今日明日の話じゃない以上……避けては通れないのが現実だ。


「……アドルフさんはまだお城?」


「そうですね、朝に出かけて夜には戻ると連絡が来ていました」


「そう……」


「イリステラ」


 マヌエラがそっと私の手を握る。

 

 どうしてだろう。

 あの頃は胸が痛くても、いつかは離れて当たり前って受け入れられていたのに。


 今だってそうすることが一番なんだろうなってわかっているのに、胸が痛いどころじゃない。


「私……みんなと離れたくないけど、みんなに嫌な思いをしてほしくないなあ」  

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