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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第八章 うるわしの せいじょさま

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第74話

 そもそも論なのだけれど、ゲームのシナリオとは何かって話。

 いや、ゲームのシナリオってのは進行上必要な物語だよね、わかってますよ!


 そうじゃなくてさ、私は転生したんだよね。それもわかっている。

 で、当時は状況が状況だったし、戦時下で私も死にかけのタイミングでアドルフさんという最推しに出会えて救ってくれた第五部隊が箱推しになって『救わなきゃ!』って使命感に駆られたわけだけども。


 ただゲームには出てこない人々、プレイしていた私が知らない普通の暮らし、痛みや苦しみ……そういったものは当然ながら現実だ。

 そしてあのシナリオよりも過去があり、未来がある。


(……どこまでが〝ゲーム〟で、どこまでが〝現実〟なのか)


 って自問自答するとなると、ここは現実だよってオチなんですけども。

 シナリオも設定も、基本的にはゲームと同じだった。

 でも未来は大きく変えることができた。

 ということは、その先さらに未来が変わったってことでもある。


(ってことは、二作目を知っていてもきっとどうにもできないことがあったはず。いやでも二作目の味方キャラとかステータスやストーリー上捨て置けない設定とかを知っていたらもっとやりやすかったのは間違いない……!)


 くうっ、やっぱりゲーム情報ちゃんと見ておけばよかった……。

 あの時は『死亡した推しキャラが思い出ですら出ないゲームなんて!』って全スルーかましちゃったからさあ……!!


「久しぶりだな、アドルフ。そしてイリステラ」


「久しぶりだな、ヘルマン」


「お久しぶりにございます。お変わりはございませんか?」


「ああ、王宮ではよくしてもらっている」


 にこりと穏やかに微笑むオールバックの男性、ヘルマン。

 ヘルマン・ジルツェン。公爵家のご令息だけど自身でも爵位を持っている。

 確か、伯爵だったか何だったか……興味がないから忘れちゃった。


 見た感じは柔和な優男なんだけど、中身はさすがあのゲオルグ陛下の側近ってだけあって腹黒なんだよね。

 これまでゲオルグ陛下が即位するまでの間、秘密の計画を遂行していた仲間でもあったから彼の本性を目の当たりにしたことは何度もあった。

 勿論、その腹黒さを私に向けられたとかそんなんじゃないよ!!


 とりあえず王城にやってきた私たちは第一部隊と合流したわけだけども……室内には相変わらずあちらの国の侍女さんたちがずらーり。

 ええ、ええ、小さな会話も見逃さないぞってやつですね。

 それに対してヘルマンがにっこり笑いながら給仕のお礼を言ったりするんだけど、なんとなく彼の世話担当であろう侍女の頬が赤らんでいるような……。


「……ヘルマン」


「何かな、イリステラ」


「……腹黒」


「なんとでも。実際、たいしたことはしていない。それにこのくらいはこちらの方々も理解しているだろうさ」


 こいつ、任務のために躊躇わず口説いてんな……!?

 確か、リンドーン王国の王城で働く侍女というのは一定の爵位を持つ家柄が条件であるとされていて、それ以外はメイド、下働きとどんどんランクが下がる。

 ちなみに我が国オーベルージュでも基本はそうだったけど、戦時下で大分その辺は今のところ曖昧っていうか、ほら、神官に連れて行かれるケースも多かったからね?


 ある程度の資産があるイコール教養があるってことで、爵位とか貴族とか関係なく王城勤めができているらしいよ!

 

 まあそれはともかく、客人や貴人をもてなすのは侍女の仕事だったはずだ。

 だから情報収集にはもってこいなんだろうなあ、懐柔するのにヘルマンの顔の良さと口の上手さは若いお嬢さんには毒だろう。


(こいつが私の結婚相手になってたかもしれないと思うと世も末だわ~)


 表面上にっこり笑い合う私とヘルマンだが、決して仲良くはない。

 でもまあ何故だかアドルフさんがヘルマンとは仲良しだから付き合いはあるんだよね、でも仕方がなくだよ。


 仕方がないからだからね!!


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