第73話
久しぶりに気合いを入れて儀礼用の聖女服に身を通し、紅をさす。
普段から推しの前に立つために綺麗でいたいとは心がけているので化粧そのものはチラッとしちゃいるけども、今日は王城で人前に出るからまた別の装いをね!!
ちなみに推しの前に出るときに綺麗な私を作るのは決して推しに好かれたいからというよりは推しに汚いモンは見せられないだろうっていう私なりの考えである。
いやアドルフさんは優しいし私に好意的だから、たとえすっぴんだろうと何も言わないしなんだったら可愛いって言ってくれるとはわかっちゃいるけどそこは乙女心なんだよオ!!
(これから厄介な駆け引きが始まるかもしれないんだもんね!)
とにかくアドルフさんの足を引っ張らないようにしなきゃ。
私のこの紅は聖女長様が祝福をかけてくださった特別な代物だ。
毒物を口にした時、それを和らげてくれるみたいなんだけど……すげえな。
(私は一度毒で死にかけているからってことですごく心配されているってことはわかるんだけどさー、まさか他国で使うことになるとは思わなかったよね……)
ははは、まるで見計らったかのようだ!
もしかして私がそれを持っているから安心して送り出せたとか言い出さないよな、ゲオルグ陛下……。
言いそうだな、あの腹黒国王。
「王城では第一部隊のメンバーもほとんど動けていないようだ」
「……でしょうね」
まあ私たちもそうだけど、行動は制限されていたに違いない。
しかも王城内ってことできっと窮屈だったんじゃないかなとは思う。
とはいえ第一部隊のメンツは貴族家出身の人たちで構成されているわけだから、なんてことないかもしれないけどね!!
「ヘルマンからの連絡によると、講和条件についてはほぼ予定通りと言ったところのようだ。今回は被害者たちとの問題について話をしたいとのことだが……まあさすがに俺たちを捕らえようとはしないだろう」
そう、王城に行くことになったのは私とアドルフさんの二人だけ。
他の第五部隊メンツは館で待機と言われているので、ある意味で人質のつもりなのかもしれない。
ちなみにヘルマンっていうのは第一部隊の副隊長……つまりゲオルグ陛下の腹心で、今回の使節団の団長を務めている。
我が国……オールベージュ王国の一番権力のある公爵家のご令息だけど次男坊だかで陛下の腹心として今後もお傍で仕えていくらしい。
彼には婚約者がいないので、私の相手にぴったりだったんじゃないかって言われたけどね……お互いに興味がないので!
まあ、アドルフさんにはそのことについて言ってないですけども。
言う必要もないと思いたい。
「あいつらには場に応じて臨機応変に動けとは言ってある。後方を憂う必要はない」
「はい」
絶対にこれはゲームシナリオにないよなあ。
そもそもが私が関与した段階でタイムパラドックスが云々……って難しいことはわかんないんだけども。
とにかく、いずれにしても続編がわからんし登場人物も誰がいるんだか……さすがに元主人公たちとスリコフ将軍以外にもキーパーソンがいるってことはわかるんだけど、それがだれなのかわかんないってのが痛いよね。
はあー、確かに推し活できる生活は最高ではあるんだけどさあ!
もっとこう、落ち着いた推し活させてくんないかなあ!!




