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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第七章 かわいそうな せいじょさま

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幕間 どこまでが真実で、どこまでが偽りか

スリコフ将軍視点。

(……あの聖女の言葉は、どこまで信じられる?)


 やや足早に自分の部屋へと急ぐ。

 聞いた内容があまりにも、理解できなくて。


 いや、理解はできている。

 むしろ納得すらした。

 だが受け入れることができない。


(聖女と騎士が、ただ契約により結ばれる関係……それは無理強いではない……)


 しかも指名するのは聖女の側だという。

 では、俺の母親は、何故乱暴されて俺を身ごもったのか。


 聖女イリステラの話を信じるならば、彼女たち聖女は夫を自身の守護騎士として選んでいるということに他ならない。

 実際、アドルフ・ミュラーは彼女に常に目を配っているというし、他の騎士たちもおそらく隊長である彼の指示を受けて聖女イリステラの周りには必ず誰かがついている。


(……もうこれ以上、侍女たちを使って彼らを遠ざけるのは無意味だな)


 夫婦を離してその関係性を探る……それは上層部の指示だ。

 俺自身、聖女と騎士の間に絆なんて生まれるのかと懐疑的であったから確かめたかったこともあって引き受けたが……。


(くそ)


 母に会わせろとそう言った聖女イリステラの目は真っ直ぐだった。

 少なくとも俺が知る欺瞞(ぎまん)に満ちた連中とは違う、戦場で言いように利用されてしまう――真っ直ぐで、純粋な目を持った人間だ。


 まあ、下級神官として戦場に出ていたこともあると言っていたからただのいい人間でないということはわかっているが。

 それが真実ならば、だ。


(くそ……)


 冷静になれと理性は言うが、落ち着かない。


 俺の母親は聖女だったという。

 今は心を壊し、ろくに何も語らない。


 ただ、聖女は酷い扱いを受けるのだと、そう父に零していたと言う。

 哀れな女を世話するうちに情が芽生えたという義父が俺ごとスリコフ家に迎え入れてくれたが、母の心は壊れていく一方で……次第に、俺を見て怯えるようになった。


『おまえも、けものになるのよ』


 母の口癖はそれだった。

 おそらくは隣国で言うところの獣化という現象のことだろう。


 母も、そして俺の父親であろう男もあの国の人間ならおそらくいつそう(・・)なってもおかしくはなかったし、実際俺は一度だけ獣化した。


(あの夜、あの苦しみが目覚めるきっかけだったなら)


 己の手のひらに視線を落とす。

 自分が獣化したということは理解できているが、いつ戻ったのか……そしていくら願おうとできないことに疑問は尽きない。


 ただきっかけは、母が俺を拒絶し続ける中での一言だった、と、思う。


(だがそれが何かも思い出せない)


 義父も聞くなと言うし、母とはそれ以来疎遠だ。


 聖女、獣化、彼女たちを守る……癒しの能力。

 神官と聖女の違い、そこには明確な何かがあるはずだが亡命してきた神官たちからは何も得ることができなかった。


 ただ『獣化した人間には聖女が必要だということを聞いたことがある』と亡命してきた神官が言っていたが……それもどこまで真実か。


(正直に話して力を借りるのが手っ取り早いが、上の連中はあくまでうちの国が手綱を握る形で動きたいんだろう)


 近年、獣化する人間が我々の国でもチラホラと出てきている。

 ここ数十年の間に、人道的に我らの方が正しいと示すために亡命者を受け入れ続けた結果交わりが生じたのだからそうなるのも仕方のない話だったのだろう。


 ただそのせいで、獣化する人間の被害が増大したのだ。

 初めの頃は獣化する人間……すなわち隣国の強みであるそれを得られたことに喜んだ上層部も、コントロールができない(・・・・)事態に焦りを覚えた。


 そして、そこには〝聖女〟が関係していることまでは突き止めたがそれ以上がわからない。

 今回の講和から、具体的なことを引き出したい上層部の思惑は果たして聖女イリステラを通じて上手くいくのだろうか。


(……母が正気を保てていたら、その役割は母が担っていたのだろうか)


 俺を産むまでは正気だったはずだ。

 様々な情報を渡していたという母を、貴族である父が手元で守っていたというが……ならば何故、国内の人々は今も不安に怯えているのか。


「くそ」


 何度目かの悪態はひどく弱々しくて、自分でもらしくないと疲れた笑いがこぼれるのだった。


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