表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第七章 かわいそうな せいじょさま

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/196

第69話

「そちらに関してですが、将軍の母君に関して聖女であったかどうかまず確認したいところです」


「なに?」


「大変失礼なことを申し上げるようですが、我が国で聖女になれる人材は先も申し上げたとおり厳しい試験があるので本当に一握りの人間です。特に戦時下に置いてはその貴重な人材については記録がきちんとされているのです」


「……」


「少なくともその五十年に関しては聖女を保護する法案が通っており、私が知る限り結婚を強要される以外は衣食住を保証され、強要されることはなく、まっとうな任務にございました」


「……」


「これは私が、私の神に対して誓わせていただきます」


 まああくまで私の神ってのは〝推し〟……すなわちアドルフさんだけどな!


 そこは言わないけれど、聖女が神に誓うって言えば聞こえもいいし相手も納得するだろう。

 実際、スリコフ将軍は考え込んでいるようだ。


 その様子を見て、アドルフさんが腕を組み直して口を開いた。


「将軍として物申すならば、俺も妻を大事にしているし、部隊の連中も大事にしている。聖女として裕福な暮らしができていたかと問われると難しいが、少なくとも戦時下であっても嗜好品の一つや二つ、優先的に手に入れられる程度には優遇されていた」


 あああ、コーヒーですか。コーヒーですね!

 そうですね、我が家は常に良いコーヒー豆があったわあ……。


 実はアレ、聖女だから優遇されていたっていうか、あれは陛下とアニスさまが善意でくれていた豆っていうか、いや任務のこともあったから賄賂か? あれは賄賂だったのか?


 多分支給されたあの一軒家とか家具に関しては他の聖女たちとそう大差ないって言うか、当時私と同じくらいの時期で聖女だった人たちの大半が貴族家出身のお飾り聖女だったからなあ!

 対比ができないんだよなあ!!


 さすがに今更聞けない……。


(アドルフさんはどこまで知ってるのかなあ)


 お飾り聖女とホンモノの聖女、その話はしてあるとはいえ支給品についてまでは正直把握していなかったっていうか。

 そもそも私はアドルフさんと一年で離婚するっていうかされるつもりだったし、そうじゃないってだけでめっちゃハッピーだったからあの暮らしで十分っていうか。


 アドルフさんも私も元々庶民だし、一軒家でも贅沢だなあっていう感覚が抜けないからあの程度の家でも十分なのだ。

 使用人なんていなくていい。


 だって私が推しのためにあれもこれもできるチャンスじゃないか。

 推しに肉体労働で貢げるチャンスだぞう……!

 課金という方法がとれない中で日々推しの健康を守るチャンスがあるのにどうして使用人なんて他人の手を挟まなくちゃならないのさ!!


(……なーんて。もうちょっと国力が上がって将軍なんだからってゲオルグ陛下に言われたら今の生活も諦めなきゃならないんだろうけどね)


 不満はあっても口と表情には出しませんとも。なんたって聖女ですから。


 ゲオルグ陛下と個人的に面談した際にはちょっとくらい愚痴は言ってしまうかもしれませんけどね!


「……他の神官たちもそうなのか?」


「さあ、それは正直なところわかりません。ただ」


「ただ?」


「私は先も申し上げましたが、下級神官からでした。ですので前線に出たことは幾度もございますが、乱暴を働いてくる兵士はおりませんでした。時には怒鳴られたことも、殴られたこともございますが……庇ってくれる方が大半でした」


 ぐっと腕を組んでいるアドルフさんに力が入ったのが見える。

 うーん、この話題はあまり良くないんだろうなあ。


 私のことを妻と呼び、大切にしてくれるアドルフさん。

 しかも軍の人間として仲間にも、特に自分にも厳しく規律を守って他者を守っていくストイックな性格だけに前線で私が虐げられていた事実なんて知って怒ってくれているに違いない。


 だけどまあ、前線という命の危機にさらされている人々のストレスを考えると暴動が起きていないだけ凄く規律が守られていたと思うべきなんじゃないかと今なら思うのだ。


 これが〝勝って〟いる側だったなら、心に余裕があったのかもしれないけれど。

 もうあの当時の段階で、敗戦色が濃かった我が国では自棄っぱちになってとんでもない行動を起こす人たちが、兵士だけじゃなくて一般人にもちらほらいたのだ。


 ただまあ、それにもエネルギーは必要で、それが足りなかったから大きな爆発に繋がらなかったのだろうと思う。


(……あの時、私も第五部隊が来てくれなかったら)


 限界だったもん、正直。

 眠ったら明日が来ないんじゃないかって、日々思ってたのが懐かしい。思い出したくもないけど。


「ですから、一度お目にかかりたいです。誠に聖女であったなら、彼女の身の上に何があり、そして正しく我が国でもその件について調査し、正すべきでしょうから」


 その訴えに、耳を傾けるという姿勢を崩さず。

 本当なら、虐げられた聖女はそこにいる。


 消された事実を掘り起こすことが正しいとは思わないが、未来の憂いになるならそれを正しく知り、どうするかを考えるべきだ。


 一方の要望だけを聞いて、ただお金を渡すようなまねをしても良くないだろうと私が言外にそう告げればスリコフ将軍は大きな大きな溜め息を吐き出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ