第67話
「いくつか質問をする。答えられるものにだけ答えてもらいたい。いろいろとそちらも聞きたいことがあるだろうが、最後まで待ってくれ」
そう前置きしたスリコフ将軍は、軽く片手を挙げた。
するとどこからともなく軍服を着た人物が現れて、封筒をスリコフ将軍に渡したかと思うとさっと下がる。
よく訓練されているなあ……!
「さて、聖女と神官は従軍するが所属は教会にあり、その決定に従う。これは正しい話か?」
「それは……」
ちらりとアドルフさんを見る。
彼は私を見て、無言で頷いた。
私に判断を委ねるということなのだろう。
まあ事実問題、アドルフさんは教会の力関係そのほかとかわからないことも多いしね……興味もないっていうか。
そんなクールなところがたまんないのよ……!!
「はい、そうです。ですが現在は終戦を迎え、神官たちも軍属から元の教会勤めに戻りつつあります。一部の神官と聖女はもうしばらく軍属となりますが……」
「なるほど。では次に、聖女は国家によって結婚することが定められているというが」
「その通りです。聖女という立場にある神官は数少ない貴重な高位者ですので、戦争時には混乱に乗じ拉致されるなどの問題が多発したために獣神部隊の所属者と婚姻関係を持つことによって守られることになります」
「……貴女と、ミュラー将軍のように?」
「ええ」
なるほど、聖女の立場が脆弱だとでも?
いやむしろ侍女さんたちが言っていたように〝哀れな〟聖女様とスリコフ将軍も思っているのかもしれない。
実際問題、国によって結婚させられた聖女ってのはいるわけですし……いやでもそれを言い出したら高位貴族たちなんて物心つく前から婚約者がいるんだからそういう人たちもいるんだよなって私としては思うんですけどね。
まあ? 私は?
最推しと結婚できちゃいましたけどね!?
「それは双方の意思を無視したものか?」
「いいえ、基本的には結婚をすること前提とはいえ、本人たちの相性もあるため確認がされます」
あれっ? という顔をアドルフさんがしたけどここはスルーだ。
いやいやあの時はですね、一応これからくりがあってですね……。
後ほどそれについては言い訳を本人にさせていただくので、ここでは待ってほしい!
「……ご存じかと思いますが、聖女はその地位に就くまでに幾多の試験を必要とします。そのため、教養その他長じている裕福な家庭、及び貴族のご令嬢がその地位に就くことが多くなります」
「ふむ、素養だけではなく、教養そのほかも必要としているとは聞き及んでいる」
「はい。下級神官の多くは貧困層や一般層の平民。そのため、教養を学ぶ時間分、どうしても彼女たちには及びません」
だからこそ最初から中級って彼女たちはしてもらえるんだけどね。
優遇されていると言えるわけで……まあこれからは戦争もないし、その制度は廃止されていくことだろうけど、それをあえてここで言う必要もないので私はただにこりと微笑んでみせるだけだ。
「そして聖女となりやすいのはその貴族令嬢たちです。そのため、そこには貴族家としての問題……つまり、最初から婚約者がいる可能性が出てきます。また、獣神部隊にもそれは言えることでしょう」
「……なるほど?」
ちらりとスリコフ将軍がアドルフさんを見た。
彼は、彼や第五部隊は平民ばかり。
それについてはどうなのだと言わんばかりだ。
「聖女たちの婚約者が獣神部隊にいることもありますので、そちらはそのまま関係を結ぶに至るだけです。私のような稀に下級神官や、中級から聖女にまで上り詰めた場合はそういったこともありませんので……ただお相手はそうもいかないでしょう?」
「まあ、そうなるか。なるほど? では、聖女殿はミュラー将軍を望み、また彼もそれを受け入れたと」
「はい、そうです」
アドルフさんからなんか言いたげな視線をビシバシ! 感じるけど!!
あとでちゃんと話しますから待ってね!!
スリコフ将軍が私たちを見ながら薄く笑う。
だけど、ふっとその笑みが消えた。
「……では、かつて聖女たちがその関係を強いられ、病んだという事実は?」




