第54話
ヒューゴー、ヒューゴー・アデルバード。
これが男主人公のデフォルトネームだ。
勿論この世界はゲームによく似ていて現実なので、彼の名前はヒューゴー・アデルバードで間違いないのだけれども。
第五部隊に所属するまだ少年と言っていい彼は、ゲームでは悪化した戦局を前に徴兵されたとされていた。
他に就ける職業があるわけでなし、大切な家族や友人を守るためにと意気揚々と……でもないな、状況的には。
とにかく、軍人となって〝精鋭〟と呼ばれる獣神部隊に入ったわけだ。
エリートっていう認識よりは、期待されているって最初はなんかこう、希望に満ちあふれていたっていうかね。
(それがゲームが進むにつれてどんどん鬱展開になって、目から光が消えていくっていうね……)
最初に尊敬する上司のアドルフさんが死んで、その後親しい友人の死、それが陰謀によるもので、手引きしていたのはストーリーの中で出会って親しくなった同年齢の兵士で、上の人たちは兵士なんて駒にしか見ていなくて、必死で生きる人たちは……みたいな!!
本当にどうした制作陣!
病みすぎじゃない!?
っていう展開がてんこ盛りだったんだよね。うん。
(まあ今やただの大きなワンコなんだけど……)
私が関与してアドルフさんが生きているだけじゃなく、ヒューゴーが入隊する前には終戦して、国は平和になったわけですし。
そうしたらただ希望に満ちあふれた少年兵が獣神部隊に憧れて入隊したってだけの話に変わったんだよね。
これがまたね、おめめキラキラさせて尻尾とお耳の幻が見える。
大型わんこか。可愛いな。推せるわ。
「でもなんでヒューゴーとヒルデを? ヒルデはまあ神官ですから、私の下で経験を積ませるっていうのはなんとなくわかりますが……」
そしてヒルデ。ヒルデ・モンステラ。
女主人公だ。
私と同じように治癒能力を認められ、神官になる以外道がなかった中で、ゲームだと悪化する情勢に試験も何もかも撤廃した上層部によって無理矢理〝聖女〟にされて治癒を強要されていくっていうストーリーだ。
その中で使い捨ての道具扱いされたり、隣国に亡命した仲間がいたりで心をすり減らしていくっていうシナリオね。
うん、だから制作陣(以下略)。
そんなヒルデだけじゃなくて、教会に所属する神官たちは今や前線に行かなくてよくなったけれど、治安維持のために軍部にこれからも協力していくことが決まっている。
獣神部隊もカバー範囲が広がったので、聖女だけじゃなくて神官たちも受け入れてあちこち奔走しているってわけ。
で、ヒルデは我が第五部隊所属となったわけなのだ。
勿論そうなると私が教える側になっているんだけど……あの子才能半端ないのよ。
さすが主人公だぜ……! 推せる!!
「ヒューゴーは立候補だな。まあ、あいつもそろそろ経験をある程度積ませる必要がある。だからお前の護衛として連れて行くつもりだ」
「なるほど」
しかしどんどん第五部隊が私の推し集団になっていくな……。
勿論最推しはアドルフさんですけどね!!
といっても、元とはいえ主人公二人に関しては続編でも登場するっていうのがカメオ出演みたいなものなのか、がっつりストーリーに関与しているのか……。
そもそも今度の隣国に行くのだって続編と関係あるのか? それすらわからん。
(とにかく、みんなが傷つかないように私も魔力を溜めておかなくちゃ)
なんせ最弱の聖女なのはかわらないからね!!
下手したらまだ新米神官なヒルデに治癒能力で負けそうな勢いだもん。とほほ。
技術力だけでどこまでみんなをカバーしていけるかわからないけど、とにかく推しは守る。それは変わらない!
「だが、あまりヒューゴーと距離を近くしてくれるなよ」
「えっ」
気合いも新たに可愛い主人公たちを愛でようと思っていると、アドルフさんからそんなことを言われてしまった。
そうだった、この人ったら案外やきもち焼きなんだよね!
もーそれがたまらない。
とはいえなんたることだ、推しに心配をさせてしまうだなんて……!!
「そんな、私の一番はアドルフさんですよ!」
「……ならいい」
私の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべるアドルフさん、あー尊いんだよ。
この尊さのために生きている、そう思うね!




