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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第五章 推しが幸せなら、まあいっか!

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エピローグ

「そういえば、今年も獣神部隊(ビースト)は縮小しませんでしたね」


「そうだな」


 私たちが結婚して一年とちょっと。

 今日は新兵が入隊したのだ。


 アドルフさん率いる第五部隊はもう誰からも『死神部隊』なんて呼ばれることはなく、むしろ平民出身の人たちが多いからだろうか、町中ではそこそこ人気だ。

 そういう意味では第四部隊も平民出身の人たちが多いので、今では第四と第五が交代で城下町の警備にあたっている。


 とはいっても第四は下級貴族も多いので、富裕層地区にウケが良いって感じ。

 逆に第五部隊は下町の民衆にウケがいい。

 一長一短だね!


 第一部隊はそのままゲオルグ様が率いる国王直轄の部隊となり、第二部隊は軍のトップ集団、第三部隊は城内警備担当というような形で今は収まったのだ。


 いずれは縮小を……なんて言っていたけど、やはり戦時中もその名を轟かせた部隊だけに名前を残して機能を変化させた方が他国に対しても抑止力になる、ということらしく……。


 まあ、今となっては獣化して戦わなくてもいいことを考えれば、倍率が高い就職先になってしまったわけで……そのせいなのか、私の記憶している『ゲームスタート』とは時期が異なった新兵の入隊式となったのである。


(ゲームスタート時に咲いてた花が完全に散っちゃってるもんねえ)


 まあそもそもが戦争も終わってまだその傷痕があるにしろ、概ね平和な世の中になったわけですから?

 ゲームとは全く異なる未来になったことは間違いないわけですけども。

 いやゲームもちゃんとトゥルーエンド迎えたら平和になるけどね!!


「随分希望者が多かったって聞きましたよ」


「……ああ、うちには聖女様もいるから大人気なんだと」


 僅かに低くなった声に私は苦笑する。

 すっかりラブラブ夫婦(多分合ってる)になった私たちだけど、アドルフさんはなんでもないことにまでやきもちを妬いてくれるのだ。可愛い。


 どうやら荒くれ者の集団と思われていた第五部隊が実はフレンドリーな人たちで、獣化の暴走に耐えていたり普段から過酷な任務のせいで疲れ切った顔をしていただけであるとみんなに理解してもらえた途端、大人気になったのだ。


 そして彼らの負担を減らし、隊長のアドルフさんを筆頭に部隊全体で大事にしている聖女である私がイコールですごい人、みたいな図式が成り立ってしまったんだとか。


(んなこたアないのにね!)


 とんでもない弊害が生まれてしまったもんだぜ……!!

 私は単純に、聖女の癒しを箱推しである第五部隊全体に届けたかっただけである。

 その結果でしかないんだが、まあ訂正できる話でもないのでほっといたらこれですよ。


「あそこでフランツが並ばせているのが今年入る新兵だ。……あいつらが、ただの殺し合いの場に行かなくて済むよう陛下には頑張ってもらわないとな」


「そうですね」


 王城で、部隊ごとに順番に新兵の入隊式が行われる。

 いっぺんに行わないのは、治安上のスケジュールとかまあ、いろいろな事情がね!


 私たち第五部隊は最後だ。


 眼下では新兵たちをどやすようにしながらフランツさんが楽しそうに笑っている。

 その横でカレンが退屈そうに欠伸をしている姿もあって、マヌエラがそれを窘めていた。


(あ……)


 そして緊張した面持ちを浮かべている新兵たちの中に、私は男主人公の姿を見つける。

 まだ初々しいその表情は、ゲームと違って悲壮感なんてこれっぽっちもない。


(未来は、変わったんだなあ)


「イリステラ?」


「いえ、なんでも。……戦争じゃなく、治安を維持していく目的なのだと思うと……ホッとしますね」


「ああ」


 私の言葉に、アドルフさんも目を細めて笑った。

 まだまだ問題は山積みだし、万が一の時は命を賭した戦いを求められるのが軍人の役割で、その中でも獣神部隊(ビースト)が求められることは多いんだと思う。


 それでも、今はずっとマシだ。


「あっ、あの!」


「え?」


「あの、第五部隊の式典準備、整いましたので、えっと……」


「……そう、ありがとう。新しく入った神官さん?」


「はい! え、ええと、見習いに入りました! よろしくお願いします!!」


 私たちを呼びに来てくれた可愛らしい少女に、私の胸が早鐘を打った。

 ああ、女主人公とも出会えた。


 彼女もまた、明るい表情だ。


「行こう、イリステラ」


「はい」


 差し出された手をとって、私たちはみんなが待つ階下へと進む。


 私はアドルフさんを助けたかった。

 この世界に来る前からの話だ。

 私は第五部隊の手助けがしたかった。

 この世界で救われてからの話だ。


 私が行った数々は、表に出ない話だ。

 でも別にそれはいい。

 だって、私のエゴだったから。


(あれ? でも待てよ?)


 戦争は終わった。平和になった。

 アドルフさんは生きているし、第五部隊のみんなも民衆に受け入れられて人気者になった。

 主人公たちも病んでいくことなんてないだろう。


 なのにどうして不安がチリッと私の胸に宿ったのか。


(そうだよ、このゲームって続編なかったっけ!?)


 完成度が高いだの不遇の物語だの何だの言われたこのゲーム、人気は実に高かった。

 だから続編が出たんだよね。

 というか、出るっていう宣伝を見たことは覚えているんだけど……あれ、どうだったっけ。


 確かあれって戦争終結後のストーリーで、敵国側の話じゃなかったっけ?

 あれあれ、もしかしてまだ物語は終わらないのかな!?


「どうかしたか、イリステラ」


「え、いえ」


「……よそ見をしてくれるなよ。明日の朝から早速新兵たちの前で、俺に抱かれて出仕する姿を見せつけることになるぞ」


「アドルフさん!!」


 別に新兵の中に気になる人がいるとそんなことないですから!

 まったくこの推しは、やきもちが過ぎるけどそんなところも可愛いぞう!!


(まあ、いっか)


 転生して苦労もたくさんしたけど、推しに出会えて、推しが笑ってくれたのだ。

 そしてこれからも推したちに笑ってもらうために、私は私のできることを頑張ろう。


「アドルフさん」


「うん?」


「……愛してます」


 そういえば、態度ではたくさん示したし妻になれて嬉しいと言ったことはあるけど、この気持ちをちゃんと伝えてなかったなって。

 私はアドルフさんの目を見て、しっかりとそう伝えた。


 そのことに彼が驚いて目を丸くして、それから蕩けるような笑みを見せてくれる。


「ああ、俺もだ」


 推しが幸せになってくれたなら、最高じゃないですか。

 私はこれからも推し活を続けていくよ!!

これにて『推し活聖女』一旦終幕です。

この二人の話はもう少しだけ書きたいなと思いますが、第二部開始までは今のところ時間がかかりそうなため、一旦完結マークをつけたいと思います。


それではまたお目にかかりましょう°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです、良い物語をありがとうございました。
[良い点] そこはかとなくすれ違ってる感じがいい! [一言] 久しぶりに焦れ焦れするストーリーで悶えましたwイリステラは最初は推しを救う!を合言葉にしていて例え1年でもそばにいられれば!を原動力にして…
[一言] だんだんとシリアスに、切なさを増してきたけどイリステラさんの内面が基本テンション高いのでww楽しく読めました。最初に愛せないと言ったものの、これだけ献身的に好意を寄せられたらアドルフさんも好…
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