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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第五章 推しが幸せなら、まあいっか!

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第47話

 これからの話。

 そう言った私に、アドルフさんの手が止まる。


 だけど、すぐに気を取り直したようでアドルフさんは二つのカップを持って私のところに戻ったが立ったままだ。


「……?」


「ここじゃなくて、上に行こう」


「上、ですか?」


 示されたのが寝室のことかと理解する。

 あの部屋には並んで座れるソファがあって、アドルフさんは割とそこで座ってお茶を飲みながら他愛ない話をするのが好きなのだと最近学んだ。

 

 結婚半年以上経ってから知る、好きな人の新たな一面にときめきが止まらなかったもんですよ!


 若干足取りがふわふわしているので、もしかして私は結構疲弊しているのかもしれない。

 回復したと言いつつこの調子だと、リハビリが上手く行っているのか心配だなあ。


(もしかしてそれもあってアドルフさんは……離婚についてとか、何も言わないのかな)


 そうだよね、基本的に今回のケースで考えたら私に対して離婚って言い出しづらい話だと思うんだよね、アドルフさんの立場で言うと。


 愛してはいない、だけど信頼はある。

 それを前提として……戦争を終えるための活動をしていて、聖女で、自己犠牲の精神で行動もして、リハビリが必要で王族の覚えも(一応)めでたい妻っていう立場だもんね、私!!

 こうして並べてみるととんでもなくめんどくさい立ち位置だな!?


「それで、どうした?」


「……二ヶ月後に、私たち結婚して一年経つじゃないですか」


「ああ」


「結婚当初の約束を、覚えていますか」


 声は、震えなかっただろうか。

 できるだけ平静に、世間話をする延長上みたいに……この結婚をどうしたいのか、それを聞きたいなって。


 できたら、まだ、私は傍にいたい。

 その言葉を口にするのが許されるのか、わからないけど。


「アドルフさんは、私のことを愛せないと仰った。そして、私はそれでもいいから……一年後に離縁しても構わないと言いました」


「……ああ」


「あと、二ヶ月です」


 もし、離婚しようって提案されたら私がこの家を出ていこうと思っている。

 そのためには、いろいろと準備も必要だろう。

 神殿に戻してもらえる可能性もそれなりだけど、正直聖女としての魔力はあの鉱石のせいで今もスッカスカなのだ。

 元から貧弱だった魔力回路が狂ったのか?

 まあそれでも技術でカバーできそうだとは思うので、聖女としては……引退も考えるべきかなあ……。


「イリステラ」


「はい?」


「体調は大分良くなったんだったな」


「? はい」


 あれ、私は離婚の話をしているのになあとちょっと首を傾げる。

 それとも私のリハビリが長引くかどうかで判断しようというのだろうか。


 アドルフさんはカップの中のお茶を一気に飲み干して、テーブルに置いた。

 そして私の手からカップを取って、置く。

 一連の動作は流れるようなもので、私は突然のことについていけない。


「え? アドルフさん?」


「なら、いいな」


「何がで――」


 当たり前のように後頭部が掴まれて、眼前にアドルフさんのご尊顔が広がった。

 その目はまるで敵を前にした時みたいに鋭くて、私はハッと息を呑んだ。


「悪いな、待て(・・)はできても逃がしてはやれないんだ」


「あどるふ、さん」


 アドルフさんの口が開いて、私は咄嗟に思った。

 あ、喰われる――と。


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