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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第一章 推しを幸せにしたい。いい目標じゃないですか。
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第3話

 新居ですよ、新居!

 いやあ、新婚家庭にうってつけの一軒家!


 ちなみに突然結婚することとなった私たちの私物に関しては、ここに運び込まれている。

 私は教会内にある部屋から、アドルフさんは多分軍の宿舎から。


 言うて私の私物なんて大きめの旅行鞄一つにまとまっていたので軽いもんである。

 叩き上げの職業聖女なんて着替えくらいしか私物はないのよね。

 それも数少ないからさ……。

 これが貴族出身の聖女となるとかなり変わるんだけど、それはまた別の話。

 

 とりあえず私の荷物を見たアドルフさんが目を丸くしちゃって、かーわいいのなんの!!


 んんん、私の推し、カッコイイのに可愛すぎない?

 よくもまあ、制作陣はこんな素晴らしい人を序盤の説明で死亡するキャラになんて配置できたもんだよ……。


「まさかと思うが……荷物は、それだけ、なのか……?」


「はい、そうです」


「馬鹿な」


 そんな呆然と私の持ってきた旅行鞄を睨み付けるように見なくても。


 ああーうん、誤解されてるなって私はこの時に理解した。

 いやね、その誤解は誤解じゃないっていうか、誤解は誤解なんだけど……って難しいんだよなあ!

 

「あの、この際だから、少しお話をしませんか。お互い、知らないことが多いでしょう?」


「……」


「アドルフさんは、聖女についてどの程度ご存じですか?」


「……癒やしの力を持つ最上位職」


「それ以外には?」


「それ以外?」


 アドルフさんが形のいい眉をひそめる姿、いろんな表情を見られるの、すっごく嬉しい。

 できたら笑顔も見たいけどね!


 まあほぼ初対面で結婚した相手にいきなり笑顔を向けるほどフレンドリーな性格ではなかったはずなので、そこはおいおい期待しよう。


「ええと……ちょっと待ってくださいね、書類を一応確認させてください」


 私がなった職業『聖女』。

 これはね、かなりの守秘義務を抱えているもんだからさ……前世のゲーム知識と合わせて話して良いこと悪いこと、ついつい忘れがちになっちゃうから気をつけないといけない。


(そもそも、ゲームが始まるちょっと前ってことで戦争も終局を迎えていて、今は落ち着いているんだよね……)


 ただその理由や、他国が攻めてくる理由、その他諸々上の人たちが隠している内容があれこれあるわけですよ。

 私がポロッとそれを口にしたらそれはもう大変なことになってしまうので、人一倍気をつけねばならないのだ!!


「ええとですね、守秘義務があるところは話せないのですが……聖女は、昇級試験を受けた最終の資格です。下級から中級、上級、特級を経て聖女となります。試験は全ての神官が必ず毎年受けないといけません」


「……それは知っている」


「そうですね、それは公にされていますしね。ただ、下級神官が聖女になる確率はほぼないに等しく、貴族位の女性神官は中級からのスタートとなることは?」


「……それも知っている」


「では話が早い」


 にこりと私は笑った。

 そして、荷物を指さして私はアドルフさんを見つめた。


「私は、前線経験のある下級神官から成り上がった聖女です」


「!?」


 そう――この世界は、決して優しくなんてない。

 いやもう、ゲームそのものがそういう世界線だったから仕方ないんだけどね!!


 つまり、『聖女』になるのはほぼ中流・上流階級の出身者なもんだから、アドルフさんも私がそう(・・)だと思っていたんだよね。

 だから荷物の少なさに驚いた。

 

 まあ軍部と教会でそこんとこを情報共有してないから、彼らが『聖女』をそういう立場の人たちで、特に平民の中でも下級層、命がけの仕事以外ないって立場の人が集まりやすい第五部隊なんざ選ばれない……って思ってるんだからしゃーない。


 しゃーないけど、私はその世界に生きている人たちに寄り添える、そんな『聖女』になりたくて努力した。


(……まあ、実力は聖女の中でも下の下だってことは、今は言わないでおこうかなー……)


 若干保身に走るけど、努力はするよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 似合うに値う、意見するに叶う地位に登り詰めた手腕と覚悟は凄いと思う
[一言] 「実力は下の下」と謙遜されていますけれどね、現場からの、しかも前線経験のある叩き上げ(加えて言うと生存者)って、ソレって凄いことですよね!!  下手すると後方で回復魔法しかしてこなかったお貴…
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