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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第四章 高難易度ミッションをクリアせよ!

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第35話

 アドルフさんの記憶能力高すぎないかなと惚れ直しつつ、私たちは無事に坑道の奥にある神殿に辿り着くことができた。

 その神殿の奥に小さな泉と、そして目的の鉱石があるのだ。


「それじゃあ私は着替えますので、あの……周囲の見張りをお願いしてもいいですか?」


「……わかった。何かあったら呼んでくれ」


「はい」


 本当は離れるのも良くないんだろう。

 一応、私の護衛って形でアドルフさんここに来てますからね!


 だけどほら、そこは乙女心があるからさあ。

 着替えを見られたくないでしょ。


(……儀式についてどう誤魔化すか、だな)


 今回に限って言えば、自分に回復魔法をかけることを前提にやらなくちゃいけないってことだ。

 鉱石を手に入れるためにはかなりの労力を払わねばならなくて、アドルフさんは勿論そんなことをするって知らないわけで。


 だから私がゲオルグ王子から課せられたミッションは『鉱石を手に入れること』『アドルフさんを利用して(・・・・)でも王子に鉱石を届けること』である。


(まあ利用っていうか、正しく聖女とその伴侶で力の交換っていうか、とにかくそういうことして戻ってこいってことよねえ)


 アドルフさんと私が肉体関係がない以上、その回復方法は使えない。

 ということは私は儀式を行いつつ余力を残しておかないと三途の川が見えてしまうかもしれない。


 前世で大好きだったおばあちゃんが迎えに来るのか、それとも今世で親切にしてくれた誰か(・・)が来てくれるのかはわからない。

 あ、いや、そもそもこの世界に三途の川って存在するのか?


 そんな馬鹿なことを考えながら、私は聖女の衣装に身を包んでアドルフさんが戻るのを待った。


「……周囲に異常はなさそうだ。それで、どうする?」


 程なくして戻ってきたアドルフさんがそう言うので私は頷いた。

 まあ入り口の結界に綻びがなかった段階で誰も侵入してはいないのだろうと思ったけど、念には念を入れて確認しておくことって大事だものね。


「神殿の奥に行きます。そこで神鳥様への捧げ物が今も無事に採掘できるのかを、儀式に則り確認します。……アドルフさんはここで待機していただいてよろしいですか」


「わかった」


 私の言葉に間髪入れずに承諾するアドルフさん。

 本当は奥までついてきてもらっても構わないんだけど、心配かけちゃうってわかってるからなあ。


 端的に言うと鉱石と泉は、毒の塊なのだ。

 ここだけの話、王族にはこの毒が効かない。そういう体質なのだ。

 それこそが神鳥が与えた加護というか、王族の特権? 選ばれし者?

 ということになっているけど……実際は〝そういう体質だから〟選ばれたらしい。


 鉱石を取り出せる体質の者だから、神鳥は協力を惜しまない。

 ギブアンドテイクの精神である。

 まあ、王家はそれを忘れている……忘れさせようとする人たちがいるっていうのが悲しい現実。


 ついでに言うと、ゲオルグ王子が調べた範囲ではその体質も段々と変化していって、毒素に負けるようになってきているのではないか、ということだった。

 だからこそ聖女を傍らに侍らせて王族は鉱石を採掘すると同時に回復させていたと。

 おそらくどの世代かは不明だけれど、その事実があったからこそ王族の中では毒を恐れて神鳥への供物を鉱夫たちを身代わりにすることで手に入れていたのだろうと彼は考えているようだ。


 そうでなければ、教会の人間が口出しする余地などなかったはずだと。


(まあなんにせよ私は毒に冒されながら解毒と回復を同時に行いつつ採掘をしなくちゃならないってかなり酷いな)


 もしも。

 もしも、だけど。


 アドルフさんが私と肉体関係を持ってもいいって思ってくれているなら。

 彼に獣化してもらって、代謝アップしている状態で採掘を担当してもらい、回復と解毒を私がかけながら行えば――楽なんだろうなって、頭では理解しているのだ。


 鉱石の話をアドルフさんに話せば、きっと彼は了承してくれるのだろう。

 毒に手を突っ込む私のことを心配して、私が回復してくれるって信頼して。


(だめだ、できない)


 信頼と優しさにつけいるような真似をしちゃいけない。

 ちらっと、思い出として一度でいいから抱かれてみたかったなあとか思ってはいけない。


(推しを守るんだろう私!)


 気合いを入れるために頬を張った。

 パァンといい音がして、痛い。


「……イリステラ?」


「いえ! 気合いを入れました!!」


 驚くアドルフさんに、私はグッと拳を握ってみせる。

 きっと頬が真っ赤になっているのでかっこつかないことこの上ないが……それでもなんとか笑顔を浮かべられたと思う。


「行ってきますね、アドルフさん!」

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