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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第三章 引力には逆らえない

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第29話

 翌日、思いの外ぐっすりと寝てしまった私は『これがアドルフさん効果……』とわけのわからないことを呟きながら起きましたオハヨウゴザイマス。

 

 寝ぼけててもこれだから自分でもびっくりだわ、ほんと。


 とりあえず考え事しながら寝ちゃうとかかなり気を抜きすぎだなと反省しつつ、私は例の手紙を念のため焼却炉にぶち込んでいつも通りに過ごした。


(出撃かあ)


 聖女になってから、初めての出陣ってやつである。


 昼過ぎに戻ったアドルフさんによって告げられたそれは、来週に出発して神聖なる山周辺に敵影ありとのことで退けるよう命令が下ったのだ。


 といってもそれがゲオルグ王子の作戦なんだけどね!!


 計画はこうだ。

 本来なら王族しか入れない山なので、王子とアニータ様が行くのがベストである。

 だが、言い伝えを軽視する国王と王族を危険に晒したくない重臣によってそれは阻まれている。


 そこで神鳥の願いを聞き届けたい勢力にいる聖女である私である。


 婚姻をした相手がいる獣神部隊(ビースト)を、敵影が迫っているとかなんとかいって山まで行かせる。

 で、神聖なる山なので伴侶を護衛に聖女は山に登って確認をするように指示を出しておく。

 本来王族が立ち入る場所ではあるものの、神鳥の意思を聞く者である聖女であれば文句も出ようがない。

 万が一山が荒らされて神鳥の望むものが失われていたら困るのは国なのだ。


 そしてこっそり儀式を行う。


 ちなみに敵影については嘘ではあるけど、いつ攻めてきてもおかしくはないのだ。

 ゲームストーリー的には敵国の将軍がこの国に恨みがあるっていう部分もあるので……。


(まさかその将軍の母親が聖女で、かつて自国の兵士たちに乱暴された結果の望まぬ妊娠っていうキツい展開とは思わないでしょ)


 敵国の兵士に助けられて将軍を命がけで産んだけど、心を病んでそのまま……。

 神鳥の祝福である聖女になってしまったがために母親は傷つけられたのだ、それを利用したあの国が憎い……っていう感情でのし上がった将軍がいるとかそんなサイドストーリー重たすぎていらないからア!!


 本当に製作者、病んでない? 大丈夫? 案件である。


 まあそういう経緯と、聖女と獣化する国民という人的資源を求めてあちらの攻勢はなかなか弱まらないのだ。

 ただそちらに関しても王子が裏で手を回し、なんとか講和をする方向で持っていっているそうだ。

 勿論、表では出せない話である。


「……どうした?」


「いえ、なんでもありません」


「またエミリアが来ていたと聞いた」


「ああ、食料を納品する際に来ていましたよ」


「……すまない」


 出撃は来週以降と聞いてみんなが準備のために、解散した。

 アドルフさんと私も、自宅へ戻る。


「……エミリアさんのことが好きですか?」


 我ながらもっと言い方ってもんがあるだろうと言ってから思ったね!

 だけど私の問いに、アドルフさんは首を横に振った。


「ダンの……友人の妻で、同じ孤児院出身だというだけだな。……俺は、嫌われている」


「……」


「孤児院に入る子供たちの多くは、大体が戦禍を逃れてだ。だが、他の状況も、ある」


 ぽつりぽつりと、歩きながらアドルフさんは教えてくれた。


 エミリアさんは戦で家が焼けたけれど、家族みんなで避難所に行って助かったこと。

 だけれど戦禍に怯えた人が一人、獣化して暴走。

 彼女の目の前で、家族が殺されてしまったのだ。


 そして孤児院に行ったが……当たり前だけれど、その心の傷は大きかった。

 当時、同じ年齢層の中でもリーダー格だったそのダンという人が励ましてくれたおかげでエミリアさんも少しずつ明るさを取り戻していったんだとか。


 ところがある日、彼ら子供たちが孤児院の手伝いで食糧を買い出しに行った際に、その食糧を奪われかけたことがあったんだそうだ。


「そして俺は初めて、自分の意思で獣化した。エミリアの目の前で」


 強盗を殺さなかった。

 暴走も勿論しなかった。


 だけれど、エミリアさんはアドルフさんが獣化したことで、彼を嫌った。

 獣化するやつが近くにいるなんて許せないと罵った。

 自分がどれほど獣化した人間を恐れているか知っているクセにと泣かれて、アドルフさんは約束したんだそうだ。


 エミリアさんの望みを、できる限り叶えていくと。


(……ああ、だからか)


 罪悪感だけで、アドルフさんは行動している。

 家族を失っているのはアドルフさんも同じだ。

 

 空っぽの中にエミリアさんへの罪悪感があるのだ。

 何もないアドルフさんだから、それがものすごく……際立っているからこそ、ゲームにもあった彼女への献身に繋がっていたのかもしれない。

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