第21話
私とアドルフさんが結婚して、そろそろ半年が過ぎました。
ええ、ええ、推しとの生活がもう日常になっている……なんと素晴らしいことでしょう!!
おはようからおやすみまで私と共にあることになれたアドルフさんは、段々と素の表情を晒してくれるようになり……元々紳士でカッコイイ人だったのが更に好感度アップっていうかね!!
(……落ちるなっていう方が無理だよね)
そう、私はもう現実から目を逸らすことを止めた。
前々からうっすら気づいちゃいたんだよ。
私はアドルフさんが、好きだ。
推しだし尊敬もしているし、そういう意味の好きは当然のことながら……異性に対する恋心としての、好きだ。
彼が町中ですれ違う子供たちのはしゃぐ姿を見て、どこかほっとしたような顔をするところとか(見た感じわかりづらいけど!)、結婚して結構経つのに重い荷物は気づいたら持ってくれているところとか!
お風呂上がりに裸を見られても照れなくなったけど、私が食後の洗い物をしている間にコーヒーを淹れてくれるところとか!
あと私がお風呂に行って出てきてもしばらくは部屋から出てこない。絶対に。
ラッキースケベ的展開にはならないのだ。
そのくらい私に気を遣ってくれているところも好き……!
とまあ、引力でリンゴが落ちるのが自然の摂理であるように、私もまた最愛の推しであるアドルフさんの傍にいて推し活しながら恋に落ちてしまったわけで。
そうなると乙女心ってのは厄介である。
彼を幸せにするために離婚も辞さないと決めていたし、実際その気持ちは変わらない。
だけど、他の女性と今のところそういう雰囲気になっている感じはないし、私にもミリ単位での、いやもうナノレベルでいいからそのくらい可能性は残されていないだろうか? って思っちゃうわけですよ。
……結婚初日にして『愛せない』宣言されちゃってるんですけどね!?
「どうしたらいいのやら……」
「大丈夫ですよ! 隊長は絶対イリステラさんのことを好ましく思っておいでですから!」
「そうそう。あの朴念仁の塊でしかない隊長が、あんたのためにちゃんと毎日自宅に帰ったり手土産買うところを見ているあたしたちの言葉を信じなさいって」
「……でも『愛せない』って言われちゃってるんですよ。やっぱり見た目がちんちくりんだからかなあ」
実を言うと、最近は第五部隊の方々ともすっかり仲良くなりまして。
日中訓練の時間なんかに私もお呼ばれして救護を手伝わせてもらうついでに、カレンとマヌエラと仲良くおしゃべりもするようになったのだ!!
ふええ、美少女と美女に囲まれて眼福なのよお……。
とか言っている場合ではない。
彼女たちは早々に私の気持ちの変化に気がついて、何かとアドルフさんと私の恋愛成就に力を貸してくれているのだ!!
しかし今のところその結果は芳しくない。
見知らぬ同居人……からそれなりに親しい同居人にレベルアップしたところで止まったままなのだ。
そう、推しに尽くせる幸せを噛みしめ日々家事に勤しみ笑顔で接し、時にはボディタッチ(という施術)もしているけどそういう雰囲気になったことは一切! ない!!
清々しいほどにないのだ!!
むしろ最近は施術の際に寝ちゃうくらいアドルフさんが私に気を許してくれる、それがすっごく嬉しくて思い出すだけで顔がにやけちゃうんですけどね。
ただちょっとだけ、うん。
一回だけ魔が差したっていうか、寝ているアドルフさんの手にキスをしてしまいました。
好きだと自覚したら我慢できんかった。
さすがに頬とか額、唇なんてとんでもないのでしてないよ!!
(あのゴツゴツした、傷だらけの手がこれまで多くの人を救ってくれたんだもんな……)
感謝と敬愛の念、そして愛しさが溢れて止まらんかったのだ。
反省はしているが後悔はしていない!!
この件については隠し通している。
墓場まで持っていくつもりだ。
「……見た目も、可愛らしいと思いますよ?」
「ありがとうものすごく一生懸命フォロー考えてくれようとして」
「話を聞いている限り、アンタは成長期も戦場まっただ中で過ごしちまったみたいだし……栄養不良のせいで小柄なんだと思うよ。でも普通だしそんな心配しなくたって……」
「……いやあ、カレンさんたちみたいにナイスバディだったり美人だったらなあ……」
はははと思わず遠い目をしながら乾いた笑いを浮かべてしまったよ!
そう、カレンさんの仰る通り私は成長期も戦場で過ごして、その後は寝る間も惜しんで勉強、戦場、勉強とまあ……あまり良い成長はしていない。
それもこれも推しを救うためだし、神官なんてそんな扱いなので仕方ない話なのだ。
その結果、栄養不足で私は平均身長よりやや低め、胃が小さいのか小食、スレンダー体型だ。
決してツルペタではない。
ス レ ン ダ ー 体 型 だ。いいね?




