第16話
そして翌日、私は早めに第五部隊の人たちと合流して、今日の合同練習に関する作戦会議に参加していた。
といっても、聖女である私は戦闘能力がからっきしなので(聖女としてもからっきしだけども)、後方支援っていうか……さすがに合同訓練で獣化しないし、怪我などを負った場合試合終了後に治療するってことになっていた。
ちなみに下級神官時代に私に声をかけてくれた隊員さんたちにお礼を言えたよ!
アドルフさんは彼らが聖女っていう存在を『お高くとまっていて嫌いな人種』って見ていたから、もうちょっとお互い安全に接触できるタイミングを見計らってくれていたらしい。
うん、先住猫と新入りの顔合わせかな?
まあ似たようなもんだね!
ちなみに訓練が終わるまでは自由にしてていいって言われちゃったよ……えっ、私なんでここに来たんだろうね?
(まあ、アドルフさん的にはちょっとずつ部隊の人と私を会わせて慣らしていくつもりだったんだろうけど……)
すみませんね、私からグイグイいっちゃって!!
ちなみにあの時私は泥まみれでまぶたももう開かないくらいだったんだよね。
パリパリだったんですよ、いろんなもので。
ええ、いろんなもので(意味深)。
「それじゃあお言葉に甘えて私は聖女長様にご挨拶だけしてこようかと思います」
「わかった。……そうだな、早くてもこの訓練は一時間はかかるだろう」
「わかりました、それよりは早く戻ると思います」
「誰かをつけるか?」
「城内ですから大丈夫ですよ!」
まったくもう、アドルフさんったら心配性だなあ。
ここは乙女として『もしかしてアドルフさん、私のことを……?』とか胸キュンしておくべきなんだろうけど、私は弁えたファンなのでね!
ただ単純に聖女をボッチでそこらへんフラフラさせとくと警護の問題とか、第五部隊の品位とかその辺を心配しているんだろうなってわかってますよ!!
とはいえ、私も以前は聖女になる前、上級神官だった時には王城勤務でもあったのでその辺は大丈夫ですって。
警備はしっかりしているし、中身はともかく、外側はちゃーんと『聖女です!』って感じでおすましして歩けるんだから。
とりあえず、聖女長様に会うために王城内にある聖堂に向かう。
すると前からゲオルグ王子が歩いてくるではないか。
「……貴様か」
「これはゲオルグ殿下。ごきげんうるわしゅう」
「結婚して随分と平和ぼけした生活をしているようだな。役目を忘れてはいないだろうな?」
出会い頭にずいぶんな発言じゃない!?
いやまあ確かに結婚したのが推しですから?
そりゃもう毎日が幸せっていうか供給過多っていうか、よく鼻血出さずにここまで来てるなって自画自賛する日々ですよ。
ほら、さすがにアドルフさんを見て鼻血出してたらドン引くどころじゃ済まない気がするので……欠片だけでも残っている乙女心が砕け散っちゃうから……。
それはともかくとして、私はゲオルグ王子に向かって聖女らしく微笑を浮かべてみせる。
「それはもちろん。私はこの王国の聖女。神鳥の願いを聞く者の一人として役目を忘れたことはございません」
「……なら、いい」
言いたいことだけ言って去って行く王子。
彼もまた、ゲームではこの王国を憂う人……という立ち位置でストーリーに関与しているんだよね。
私はゲーム知識があるけど、現実世界はゲームよりも複雑で、そして何よりやり直しが利かない。
私自身、いくら自己鍛錬に励んでみたって限界は限界だし、パラメータが見えるとかそういう便利なものもない。
ゲーム世界に転生したからって、現実は過酷だ。
(ま、そんなこと言ってられないよね)
アドルフさんを、みんなを幸せにしたいんだもの。
私はやれることを片っ端からやっていくだけだ。
そのためにも聖女長様とはもうちょっと綿密に連絡をとりたいところだけど……急いては事をし損じると言いますし。
あれ? それって誰の格言だったんだっけ。
どうでもいいな!




