第14話
「ってだめでしょ!!」
危うく!
なんか流されるところだったけど!!
危ない危ない。
推しにガチ恋する一歩手前じゃないか、私。
(……だめでしょ、そんなの)
推しを幸せにしたい。
その行動原理は変わらない。
ただそこに、小さな日々の積み重ねで、私がアドルフさんのことを……うん、まあ、そういう……つまるところあれだ、異性として意識しているのだということは自覚している。
だってそりゃしょうがないでしょ!?
そもそも『推せる!』って思ってる段階で好意を抱いている相手で、それが毎日おはようからおやすみまで同じ屋根の下で暮らしてご飯作ったら『美味しい』とか『ありがとう』とか言ってくれて寝ぼけた姿見せてくれるようになったり気の抜けた笑顔をたまに見せてくれたりふとした時にこう力強さとか逞しい腕の筋肉とか風呂上がりに上半身裸で出てきちゃったりしてそれを目撃したら何故かアドルフさんの方が照れちゃうとかンンン可愛いったらないのよ。
恋するなって方が無理な魅力を持っているどころか、日々更新していくんですよ。
推し、恐るべし。
とはいえ、私の目標は『アドルフさんの幸せ』である。
うん。間違ってない。
そして私は結婚当初から宣言されているのだ。
愛するつもりはない……って。
(そもそもが愛を得られないって、わかってて結婚したんだもん)
大丈夫、まだこれは子供が憧れの人に抱く、淡い初恋みたいなものだ。
はしかと同じで、いつか思い出にできるところだ。
思いとどまれて良かった良かった。
「……馬鹿なこと言ってないでご飯作ろ」
私がやるべきことは明快だ。
本来【ゲーム】ではアドルフさんが死んだり、主人公たちがボロボロの状態の第五部隊に配属されて苦しい目に遭ったりするが、それを防ぐこと。
アドルフさんが好きな人と結ばれるように、たとえば……【ゲーム】上の奥さんが好きだった場合はどうしたらいいんだ?
そもそも浮気とかそういうのって防いだところでじゃあ別の……ってなりかねないし。
なんせ獣神部隊は激務だから、そのせいでって可能性もあったわけでしょ。
(うーん、その辺のバックボーンはボカされてたからなあ)
なんにせよ、まずはアドルフさん自身が幸せになってくれて余裕を持てたらいろいろと変化が起こるような気がするんですよ、うん!
私はそのお手伝いを続けて、あとはやるべきことをやるだけ。
「よっしゃ! プリン作ろ」
結婚生活は長くない。
だけどそれは逆を言えば、短い間だけでも推しの一番近くにいられるってことである。
ある意味これって最高のファンサービスでしょ。
むしろお風呂上がりの推しとか公式に載ってない部分を余すところ見られるのってファンサが過ぎると五体投地したっていいはずなのだ。
高望み、ダメ、絶対。
私は固く心にそう誓って、自分の中で芽生え始めた気持ちを自戒するのだった。




