第10話
「とりあえず能力は体感していただいたとおりです。ですが聖女の術というのは普通の治癒と違って疲労が強く、連続ではできません」
「だろうな」
「とりあえずはこの新婚休暇である一週間、アドルフさんを毎日治癒させていただけたらと思うんですけど……相当お疲れですよ?」
「そうか」
「はい」
新婚なんだよなあ。
全然新婚って感じはしませんけども。
でも一応書類上は夫婦ですしね。
「一緒に暮らす上で、アドルフさんが私に気をつけてほしいところなどあったら教えていただけますか?」
「……気をつけてほしい、ところ?」
「はい! アドルフさんは普段隊長職ということもあり責任もありますし、きっとお疲れのことと思います。だから私が家事全般をやろうと思うんですが、部屋を掃除されたくないとか食べ物でこれは食べられないとかがあったら先に教えておいていただけたらと……!」
私は握りこぶしを作ってここぞとばかりにアピールしてみた。
だって推しぞ?
推しに家事やらせるなんて一緒に暮らせる上で、ないわ。
尽くしたいタイプの私からしてみたら推しのために家事をやらせていただけるなんてこれ以上ない喜びだわ。
だからといって押し付けたいわけでもないので、自分でやりたいってところは極力ノータッチの姿勢だよ!
いずれは隊長職のアドルフさんを補佐する秘書官的なことも行いたいけど、そこは信頼をもらわないとね……もちろん、隊のみなさんとも仲良くなりたい。
あの時声を優しくかけてくれた女の子たちと仲良くなれたら嬉しいなあ、聖女同士って何気に仲良くはないのよね。
多少は話すけど……ほら、私の場合は身分差もあるし。
下級神官だった頃の知り合いもそんなにいないんだ。
すぐ戦地に飛ばされちゃうからさ……お互い仲良くなる前にあちこち行かされるから……。
「いや、家事は互いにすればいいだろう。お前こそ、食べられないものとかはないのか」
「特にありません!」
好き嫌い?
この世界に来て生き抜いてきた私はそんなこと言ってられなかったので、腐った食材以外ならなんでも食べるよ!
まあできたら美味しい料理がいいけど……。
推しが作ってくれるなら丸焦げでも食べます。
思わずニコニコしてしまえば、怪訝そうな顔をされてしまった。
まあしょうがないよね……実質顔合わせ初日ですもんね。
不審者な妻ですみません! でも推してます!
(推しの生活を現実に、お金の力じゃなくて自分の手で支えられるなんて……最高じゃん……!!)
前世、推しがいたから苦しい生活も耐えられた。
今世も、推しがいたから私は生きている。比喩表現ではなく。
推しは、私を救うのだ。
でも、もし――少しだけ、我が儘を言っていいのなら。
「そのうちで良いですからおまえじゃなくて、名前で呼んでくださいね。アドルフさん!」




