女王との対峙
「ここからは、1人で行く」
「そんな! ジェイル卿、危険です!」
「行かせてくれ!
……行かせてほしいんだ」
「行かせてやれよ。だって、乳兄弟だもんな?」
「……あぁ」
「あら、遅かったのね。もう少し早いかと思ったわ」
「これで、満足ですか」
「えぇ。これ以上ないくらい。ちゃんとやった甲斐あったわ~」
「こんなことしなくたって……」
「ダメよ。今のままでは、帝国に協力を願うことすら不可能なんだもの。国を変えて、歴史を変えないと」
「貴女が、死んでもですか」
「どうしたのよ、怖じ気づいちゃったの?」
「……えぇ、そうかもしれません」
「……ジェイル卿」
「ハッ」
「貴方は何のためにその剣を取ったのかしら」
「……民のためです」
「答えるのが遅いわ。もう1度」
「民のためです」
「感情を込めなさい」
「民の、ためです!」
「もう1度。」
「民のためです!!」
「そうよ。貴方は、民のために、国庫を横領し、増税を繰り返し、民を疲弊させた私を討つのよ」
「でも、貴女は、そのお金を自分のために全く使っていなかったのに……!」
「何を言っているの? 使っていようがいなかろうが、横領したことには変わりなく、悪政を敷いたことには変わりないわ。」
「民は、知っています……」
「へぇ、何を?」
「増税なんて、されていなかったことを」
「……は? 何を言っているの? 確かに命じたはずよ」
「はい、命じられました。国庫から給付するように、と」
「……言った言わないは不毛だから言いたくないけれど、絶対に言ってないわ」
「これが指示書です。」
「……本当だわ。え、どうして?」
「なぜって、貴女が言ったじゃないですか」
「だから、言ってないんだって! 嘘でしょ、なんでこんなことに……」
「諦めてください。今回も避難訓練ですし」
「何ですって!? あの火の手は?」
「あれは、魚の塩焼きです」
「確かに香ばしい臭いが、じゃなくて! あの大砲みたいな音は?」
「夜なら花火ですし、昼なら猟銃ですね」
「嘘でしょ!? 貴方、何てことしてくれてるの!?」
「あー、ジェイル卿、やっぱり揺さぶられてるー! だから危険だって言ったのにー」
「ちょっと、マークス卿、これは何よ!」
「避難訓練ですよー。女王が言ったんじゃないですかー」
「絶対に言ってない。え、私だけ記憶喪失とかなの、これ」
「言ってたんですよー、そろそろ国民の避難が必要ねって。皆に話したら、訓練大切だよねって話になってー、今に至ります!」
「マークス卿、そういえば、私、貴方に増税しろって言ったわよね?」
「そうですよー、でも、他の方法でも良いって言ったじゃないですかー。それと、女王が国庫からちょっと分けてたお金あったなって思ってー、それを元手に儲けさせました!」
「ジェイル卿、あれが理由よ」
「そう、ですね」
「どうしてくれるのよ、軍事的に帝国に協力してもらわなきゃ、やってけないっていうのに!」
「でも、帝国解体ですよー?」
「え?」
「ほらー、今日の新聞ですー」
「ほ、本当だわ……」
「良かったですねー、もっと追い詰められていて、帝国と同盟結んでいなくて!」
「そ、そうね……」
「じゃあ、俺、訓練終わらせてきますね!」
「お願い……」
「貴女、本当に知らなかったんですか?」
「知るわけないでしょ、訓練だなんて! 今回、ここにいてくださいしかないし! やるだけやってるし、イケると思ったのに、訓練だし、帝国解体だし、何が起きてるのよ……」
「まあ、良かったですね、マークス卿のお陰で……」
「本当ね、帝国がこんなにヤバかったなんて知らなかったわ。マークス卿、何を褒美にしようかしら……」
「休み、ですかね……」
「そうね……」
「かくして、王国では平和に暮らしましたとさ。チャンチャン。……これで帝国の1人負けですね」
「そうだな。良くやった。大変だったんじゃないか、あのじゃじゃ馬は」
「まあ、あれくらいの方が御しやすいですよ。何て言ったって、善人ですからね」
「そうか? ……まぁ、そうだな。次はどうする?」
「そうですね、うーん、良いんじゃないですか? 少しぐらいゆっくりしても」
「そうか。お前もゆっくりすると良い」
「はっ、ありがたき幸せでございます!」
「それがなけりゃな……」
「でも、俺らしいでしょ?」
「……そうだな」
「では、しつれいしまーす!」
最後どうしようか良くわからなくて終わりました……
ところで、乳兄弟で良いのでしょうか……