拗れる会話
放課後。
帰り支度を済ませ、教室を出ると廊下で伊奈沢が待ち構えており、腕を絡ませながら、「帰ろっ」と誘われ、逃げることも出来なかった。
高校の敷地内から出て、通学路を歩み続け、商店街の方向に向かう。
その間も離れようとしない伊奈沢を引き剥がそうとするが抵抗され、諦めた。
商店街で揚げたての牛肉コロッケを二つ購入して通りの店を眺めながら歩いていると、背後から声を掛けられ、立ち止まる。
「おーい、あのときの青少年だよね?忘れたの、もしかしてっ!」
「せい......少年?誰です、貴方は?知りませんけど、貴方のことは」
「私にイケメンって呼ばせようとしたこと、覚えてないのっ?蒼嶺くんでしょ、キミ」
とぼけていると思われたようで、呆れたような声音のまま、苗字を言い当てた女子高生。
「なっ......んで、苗字を知っ......もっもしかして!透けたブラウスのっ──いってぇっっ!」
頭に拳骨を食らった俺は思わず呻いて、頭をおさえながら正面に立つ女子高生を確認した。
確かにあのとき出逢った女子だった。
「変な覚え方されてたなんて、ショックだよっ。蒼嶺くんが恋人を連れてデートなんて二重にショックを受けたよ。せっかく再会したのに、こんな思いをさせられるなんて......はぁ」
再会して早々に落胆されるなんておかしいにもほどがあるだろ!
彼女に落胆の色が色濃く感じられる深いため息を吐かれた。
「誰?私に黙って浮気してたの、いよちゃん」
「いやっ、してないしっ!そもそも付き合ったことなんて無いこと知ってるよねっ!付き合ってないのに、浮気にならないよねっ。ややこしく拗れるから、黙っててよ。ねっ、陽葵ぃ!」
「名前を呼び捨てする仲なのに、付き合ってないなんて言えないはずなのにっ!」
「待って待って!貴方まで話を拗らせようとしないでくれませんか、周りに注目されてますからぁぁ~!」