番外編─浴衣姿の伊奈沢と人生初の夏祭り!?
夏休み、夏祭りの当日の17時。
神社の前で伊奈沢を待っていた。
夏休み前に彼女から夏祭りに行こうと誘われ、現在に至る。
3ヶ月ほどしか関わりのない俺なんかを誘ってきた。
彼女なら友人など選び放題だろうに、何故なんだ。
5分ほど経った頃に小さく手を振りながら現れた彼女。
「ごめんね、いよちゃ~ん。あんな時間がかかるなんて思ってなくて。怒った?」
「良いよ。こんなことで怒ってたら常に怒ってる小さい奴みたいだよ」
「良かった、怒らせてなくて。いこっ、いよちゃん!」
「そうだね、伊奈沢さん」
手を繋いできた彼女に返事をして歩きだそうと足を踏み出した瞬間、いつもの声音より若干低い声が隣から聞こえた。
「陽葵ぃ~っていったじゃん。忘れたの?いよちゃん」
「えっと......なれないよ、女子を名前で呼ぶことに。更に呼び捨てなんていうの」
「私が良いっていってるんだよ。さっさぁ、呼んでよ。いよちゃん」
「うっ......ひ、ひぃー......陽葵。で良いかな?」
急かされ小さく呻き声をあげ、緊張した面持ちで彼女の名前を呼び捨てにした。
「よろしいぃっ!さぁ思う存分楽しもう~いよちゃん!」
満足したようで満面の笑みを浮かべ、返事をした。手を繋いでいないもう片方の手を宙に高くあげながら宣言をした彼女だった。
水色の浴衣で紫陽花が至るところに散りばめられたのを着ている彼女は、いつもの可愛さもあり大人のような妖艶さも感じられた。
焼きそばのにおいにつられ、二人分の焼きそばを購入した俺だった。
出店から離れ、腰をおろせる場所を探し、食事を摂ることにした二人。
「すごいよね、この人だかり。疲れてない?いよちゃん」
「心配する方が心配されるなんて。疲れてないよ、伊奈さっ、陽葵こそ足は大丈夫なの?なれない下駄だから」
「大丈夫大丈夫ぅ~早く食べないと」
焼きそばを食べ終え、金魚すくいや型ぬき、定番の遊びを楽しみ、わたがしを手にしながら夏祭りを満喫した。
伊奈沢に手を出すような輩を気にして、彼女を自宅まで送り届けた。
夏の定番イベントをお楽しみいただけましたか?
彼らが高一の夏休みの話しでした。