良くも悪くも芯が太い伊奈沢
4限目を終えたチャイムが鳴り出すと同時に過半数のクラスメートが購買か食堂へと走り出した。
俺は、そそくさと昼食を摂り始めた。
「いよちゃん、一緒に食べ......うわわぁぁっ!わた、しのぅ......おかずがぁぁ~」
近付いてきた伊奈沢が大袈裟な叫び声をあげてその場に力が抜けたように座り込んだ。
ああぁぁぁ、と言葉にならないような声で呻き続けた。
「陽葵ぃ~蒼嶺なんかより、一緒にどう?皆で」
伊奈沢に一方的な好意を向ける女子が伊奈沢の背後から肩に手を置いて、昼食に誘う。
「ううぅぅ......え?うーん、遠慮しとくよ。いよちゃんと約束してるから」
「えっ、でも──」
「気分じゃないんだ、ごめんねー」
「ああ、ごめん......陽葵」
悩んだフリをして、即座に誘いを断る伊奈沢に困惑したような表情を浮かべる女子だった。
可哀想だなぁ。
近くに置かれた椅子に腰をおろし、正面で昼食を摂り始めた彼女。
離れていった女子の愚痴を呟いた。
「いよちゃんなんかって、見下したような言われ方されてムカッときた。群れてたいだけなら勝手にしとけばぁーって感じぃ~」
「相当な苛立ちだね、今日は」
苦笑を浮かべ、当たり障りのないように返す俺。
「まあ、そうかも......私のせいで雰囲気、壊してごめん。それでさぁ──」
彼女らしいといえば、らしい対応だな。