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伊奈沢に呆れる教師
授業を終えた担任の冬館めなみが、俺のもとへ駆け寄りからかう伊奈沢に声を掛ける。
「伊奈沢、いちゃつくのは勝手だけどやることはこなしておくの。分かったねー?伊奈沢」
「分かってますよ~めなちゃんせんせぇ~い!」
宙にあげた手を振りながら、返事をする伊奈沢。
「そういった呼び方は改めてって言ってるでしょ!」
案の定、冬館が教卓を叩き、注意をして廊下を歩いていく。
厭きもせず、これで何度目かも分からない会話を繰り広げる冬館と伊奈沢。
俺の前の椅子の背もたれに肘を付きながら、俺の両頬を引っ張り遊んでいる伊奈沢は教師の注意に耳を傾けないでいた。
「厭きないよね、二人って」
呆れながら、これも何度目か分からない感想を口にした俺に、「そう......かな」と気にも止めてないといった感じでふふふ~ん、ふんふんと鼻歌混じりに返された。
「弁当のおかずって何が入ってるの?楽しみだよ~いよちゃん、教えてぇ~」
猫なで声で聞き出した彼女。
「教えないよ。それより、そろそろ離れてよ。暑いんだって」
「つれないこと言わないでよぅぅ~」
彼女を宥めるのが苦労する。