人気者な友人
下駄箱でスリッパに替えていると伊奈沢の周りに数人の女子が駆け寄って挨拶を交わしている。
本当に人気者だよなぁ、伊奈沢って。
愛想笑いを浮かべ談笑が盛り上がる伊奈沢らの集団から距離をとりながら、教室へと踏み出した俺。
階段をあがり、二年生のフロアを歩く。
階段を駆け上がってきた足音が聞こえ、隣に並んだ伊奈沢。
「置いていくなんて薄情だよ。いよちゃんは、将来を誓いあった相手を──いたぁっ!」
「まだ将来を誓いあってないから。誤解を生むようなことを口走らないでよ、陽葵ぃ!」
彼女の頭上を軽く小突いて否定した。
「殴らなくたって良いじゃんかぁー!いよちゃん、いやぁ~その口振りは近いうちにってぇことですかぁ?期待して良いってことかなぁ~?どうなのぅ~てばぁ、このこのぅ~」
小突かれた部分を擦り、にまにまと頬と口もとをゆるませた表情になった彼女に、頬を突っつかれ続けた。
「返しを間違っただけだよぅぅー!」
うりゃうりゃ~と謎の声を発しながら頬を突っついている彼女。
伊奈沢からすれば、俺はからかう対象であり、好意を抱いている?異性なのか......未だに読めない女子だ。
教室で授業が始まるまでの休憩時間は、彼女とくだらない世間話やテレビ番組などの話題で盛り上がる。