恥ずかしいんだよ……
私は頬を紅潮させながら、留めていたブラウスのボタンを外していって、彼のベッドの上に載っている青色のチャイナドレスに視線を移したまま、ふぅーと吐息を漏らした。
彼の喜ぶ顔を見たいとは思う。
けど、幾ら彼の頼みだとしても、ショーツが見えるような腰辺りまでスリットがはいったチャイナドレスは恥ずかしい……
よりにもよって、ショーツが見えるような深いスリットがはいったチャイナドレスを着た私を見たいと懇願されるだなんて。
確かに、彼にリクエストされた衣装を着てあげるとは応じた。けど……羞恥心を感じないわけではない。
私は既に彼に裸を晒しているとはいえ、違った恥ずかしさを感じるものだ。
脱ぎ捨て畳んでいるプリーツスカートの上に脱いだブラウスを落とし、チャイナドレスを手に取り、着始める。
うぅぅ……安請け負いするんじゃなかった。
私は、胸中でそんな後悔に陥っていた。
「ミチルせんぱぁ〜い、もう終わりましたか〜?」
「まだだから、待って。そんな急かさないで、司ぁ」
着替えが終わるまで部屋の前で待機するように言いつけられた加地司が、待ちきれなくなったように呼びかけてきた。
10分が経過して、意を決した私は部屋の前でいる加地に着替えが済んだことを告げた。
「司、着替え終わったからいいよ」
「うんー。もう待ちくたびれ……わぁ、ミチル先輩、可愛すぎるぅ〜!やっぱり間違ってなかった〜ぁぁ!!」
加地が扉を開け、私の姿を見て感嘆の声を上げながら横に両腕を目一杯広げ、歩み寄ってきた。
私は羞恥心を感じながら両膝を合わせ内股になりながら、膨らんだ胸を両腕で隠すように組んで俯きがちに、彼を迎え入れた。
「うぅぅっ……恥ずかしいよぉぅぅ、ねぇもういいでしょ?制服に着替えたい……司ぁ、もう満足——」
「えぇ〜っ!もう少しだけ、そのままでいてほしい。お願いっ、ミチル先輩っ!ねっお願い!」
彼が両手を合わせ、必死な懇願をされ、私はかなわない。
「うぅぅ、早く済ませてよ〜司ぁぁ……うぅぅ、もううぅ」
私は彼が満足するまでチャイナドレスを着たままで居なければならなかった。
私——江東美智は加地司の自室で放課後デートをした。
夏休みの直前である7月はエアコンの冷房が効いた室内も火照る程に暑かった。




